最近下記の新聞記事を見て、久しぶりの学術界に関する記事を書こうと思いました:
注目論文数イランに抜かれる…
イランですら日本を抜いたということは、もう「科学研究費に対する投資が負けているから科学研究のパフォーマンスも負けている」との理由も通用しなくなると私は思います。
イランの科学研究費投資額は日本に及ぶことはないからです。
日本の研究力の低下は、より根本的な制度面の原因がある可能性が高いです。
私も日本の学術界から離れて 4 年経ちましたが、以前の経験からすると、私が思う日本の学術界制度面の一番の課題は「若い人が独立できない」ことです。
日本の学術界は基本的には教授あるいは准教授から独立して自分の研究室を持つことになりますが、助教クラスとなると基本的には教授の下に研究を進むことになります。
一方、海外では基本的には助教クラスから独立の研究室をもって自分の研究を進むことになります。
しかも日本で助教になれるかは、私は実力よりかは教授先生との関係の方が重要と感じています。
ただ、日本の学術界も以前からこのような制度を取ってきたのに、なぜ 10 年前までは良いパフォーマンスを出せて、この 10 年間ジワリと弱まっているかというと、私は「世の中の科学的進歩がこの 10 年間今までなかったスピードで進化を遂げてきた」からと思います。
例えば最近話題の AI 技術を例として使うと、下記の図の通り、AI 計算に使うリソースが年 2 倍の成長から 2010 年以降一気に年 10 倍の成長になりました:
上記グラフの出所:
視点を変えて、生物医学の分野で例を挙げると、ワクチン開発も以前の 20 ~ 100 年掛かって一つのワクチンを開発する速度から、 1 年ほどでコロナワクチンを開発から実用まで終える速度になりました:
上記グラフの出所:
科学的進歩がここまで早くなると、ベテラン教授を中心とした学術界体制が世の中の変化に追い付かなくなることも想像できると思います。
これから科学研究の進歩速度はもっともっと加速すると思いますので、日本も早めに若い人を独立できる体制に切り替えないと、これから科学研究の水準がまだまだ下げると思います…
ただ、若い人をもっと重役に起用することは日本の学術界よりかは、日本全体の課題かもしれませんね…