田中も中田から嫌味を言われるようになる。


神戸で打ち合わせがあり、遅くなったときには、


「おい、サボり魔君」


とか、


「お前、頭おかしいんじゃないのか・・・。今日はセミナーがあるだろ?」


みたいなことをいわれた。


田中はブチ切れて殴ってやろうと思ったが、すんでのところで思いとどまった。



まず授業が大事だろうが、なぜ授業よりもセミナーやねんと思いながら、黙って聞いていた。




そして、同時期からテレアポも始まった。



突然、同じフロアにあるクエスションの事務所で、テレアポをさせられた。



事前の指導は特になく、いきなりクエスションの社員から紙を渡された。



内容は、「基金訓練のお知らせ」であった。


要するに生徒さんが集まらないので、追い込みをかけるために電話でアポを取れというわけである。


電話でアポを取り、授業の説明会に来てもらうようにするわけである。


よっぽど追いつめられたもんだと思いながら果敢にテレアポにチャレンジする田中である。


田中は元営業マンでやってきたので比較的テレアポには自信があり、ひたすら電話を掛けまくり、その日は3時間で150人ぐらいに電話したと思う。


その甲斐があり、1人アポが取れた。


その隣で杉本もテレアポにチャレンジしていた。


杉本も必死にテレアポをしていた。


あと助っ人でクエスションの社員もテレアポに参加していた。


とにかくクエスションの社員も子分であるtodayの窮状を救うためにテレアポをしていたのである。



クエスションは基本的にテレアポ中心であり、扱う商材が多岐にわたっていた。

基本的にソフトバンクの代理店光通信の子会社でソフトバンク商材がメインではあるが、それだけでは食っていけないので、新薬の治験やNTTのフレッツの紹介などもしている。


あとはこれからは保険にも手を出そうとする勢いであった。



そして田中が在籍するパソコン教室のTODAYは、クエスションの運営するパソコン部門という位置づけであった。


パソコン教室で人を集め、そこでセミナーをしてクエスションの販売する商材を紹介することが主目的であるのだ。



だから、TODAY以外の業務で必要とあれば、田中などもクエスションの別部門の仕事を手伝わされることがあった。


人使いがめちゃくちゃだったのだ。


そして、クエスションには全員が嫌がる課長がいた。



倉田である。若干27歳にして課長に上り詰めた凄腕だが、部下に対する暴力や、暴言がものすごい男であった。

眼鏡をかけていて体育会系で、テンションがめちゃくちゃ高い男で、社員が全員嫌っており、恐れていた男であった。


平気で暴力、暴言を吐き、少しへまをするとすぐ手が出てくるような暴君であった。



そして田中は倉田の衝撃的な場面を見ることになる。