8/2 【ボローニャ国際絵本原画展】

ボローニャ国際絵本原画展へ。
日本からは、さぶさちえさんの繊細な切り絵、スズキトモコさんのあたたかな色彩、寺澤智恵子さんの猫の銅版画。
他、ファン・リャンシン『海から山へ』(台湾)、ジャンヌ・マケーニュ『ちょっとおでかけ』(フランス)が印象的だった。
ユリア・ツヴェリチナ(ウクライナ)の『戦争日記』には息を呑んだ。


ボローニャ国際絵本原画展は2010年あたりから観に行っている。
今年はアジア勢が目立っていたように思う。中国、台湾、韓国……画材や手法も多様化し(デジタルが増えた印象)、表現の幅が広がっており素晴らしかった。
私の中のイメージ、アップデート。

(こちらは今展覧会のビジュアルイメージ。カラーのみしばりかな?作家が変わればイメージもガラリと変わる)


***


8/3

おばあちゃんの暮らし、孫をみつめる眼は、生きることの切実、慈しみと祈りに満ちている。

亡き祖母の姿が重なる。
土間に差す光、厚い掌――

受け取ったものは私の中にある。

そのことがとても愛おしい。


◇『おばあちゃんのにわ』
(ジョーダン・スコット/シドニー・スミス/原田勝/偕成社)

ポーランドからの移民である老婆とカナダで暮らす孫を描く絵本。

記憶を呼び覚ます数々のシーン。
特筆すべきは手の描写。
手が語る。
想いを語る。

今作も詩人による綴り(訳文)、間合いが心地よい。

追われる日々に疲れ、大切なものを見失いそうなあなたに読んでほしい。

子どもと、大人に。


(表紙カバーを除くと、こんな表紙絵)


***


8/3

今は業界から離れているある人がかつて翻訳したという、テーマ性の高い海外絵本のゲラを読ませてもらう機会があった。
すごく、すごくよくて感動したのだけれど、当時タッチの差で?ある有名人(テレビにもよく出る)による日本語版が出されたらしい。
惜しいなあ
人も作品も、よいものは無数に埋もれている。
静かに埋もれている。
だけどちゃんとここにある。


***


8/4

handy (⇠ユニット名)で絵を担当するにしむらゆみこさんは同郷同窓の先輩♪
『パンダのどすん ボクのおきにいり』、なんてかわいい絵本。

文章を手がけた娘のあいさんと3人で、未来屋書店大宮店 さんへ。


つづいて絵本カフェ ルナール (浦和)さんへ伺いました。

想いを作品に、場所に紡ぎ出す人たち。
その仕事、その姿に勇気を得ました。

お話をさせていただいた皆さま、ありがとうございました!
にしむらゆみこさん、ご案内いただきありがとうございました!

絵本、最高だよね👍🏻✨

*

☆『パンダのどすん ボクのおきにいり』
(handy にしむらあい、にしむらゆみこ/みらいパブリッシング)
パンダのどすんが帰宅すると、飼い犬のリンゾウがいません。
甘えん坊のリンゾウ、さびしがりのリンゾウ、どこにいるの……?

たいせつな誰かを想う心、ともに生きる喜びを描きます。


***


8/4【読書会】


夜、本の長屋(高円寺)にて、『フリーダ・カーロの日記』(フリーダ・カーロ 著/堀尾眞紀子 解説/星野由美、細野豊 訳/冨山房インターナショナル)を読む読書会を行いました。

こちらの読書会は、「なんとなく目を逸らされがちな〈ジェンダー〉を読み、語る会」と題し、対話と記録を目指すシリーズとして企画・主宰するものです。
ゆっくり、じっくりと取り組んでまいります。

一冊目の課題本として、今年5月に刊行されたこちらの本を取り上げさせていただきました。

ゲストの星野由美さんが翻訳家として長年(20年以上)取り組んでこられた本書。
メキシコを代表する近代画家フリーダ・カーロ(1907-1954)の生の声、最後の10年、痛みの中で彼女が描いた祈りと叫びの跡がここに印されています。

"人間フリーダ"、"芸術家フリーダ"を読み解くにあたり、星野さんからは数多くのサジェストをいただきました。
また参加者の皆さま――異なる経験と属性をもつ人々の読み、深い考察に触れ、「内側」と「外側」に向かう思考――読書の可能性にあらためて感じ入ったしだいです。

(フリーダ・カーロの人物像、マルクス主義、唯物弁証法、メキシコの政治と芸術、教育、当時の日本、中国やアメリカでの出来事や文化的社会的背景……話題は縦横無尽に拡がりましたが、かみくだいてくれる専門家のおかげで面白かった!)

星野由美さん、皆さま、ありがとうございました。
至らぬ点多々あったかと思われますが、またぜひご一緒いたしましょう。
以降もお世話になります、本の長屋(運営)狩野さんにお礼を申し上げます。



***


8/6

平和への祈り


***


8/7

出漁する船、波打ち際で遊ぶ子ども、散歩する恋人たち……

うみって ほら、ふしぎな であいが あるでしょう?

打ち寄せては離れ、また打ち寄せるあの面影。
海はかわらずいつもそこにあって、
波はあらゆる記憶を抱擁する。

帰る夏
還る夏に


◇『なみのいちにち』
(阿部結/ほるぷ出版)


***


8/8 【詩集をよむ】

先日の読書会ゲスト星野由美さんは、スペイン語圏の本の翻訳を数多く手掛けられています。
こちらの『ホセ・ワタナベ詩集』(細野豊、星野由美 共編訳/2016年 土曜美術社出版販売)もそのひとつ。


「ありえないほど滑稽な結果となった悲劇的な詩」と題されたある家族の夏の詩が好きで、また開く夜。

わたしの家族に医者はいない
司祭もいなければ訪ねてくる者もない
からはじまり、
目立ったこととて何もなく
目立ったこととて何もなく。
で終わる詩。

真夏の眩しすぎる太陽の下、
いつかの記憶のような…儚い気配を纏った詩。家族の詩。


*

8月になると井伏鱒二の詩「魚拓(農家素描)」を思い出す。

明日は五郎作宅では息子の法事
長男戦死 次男戦死 三男戦死
これをまとめて供養する》…

百姓家の仏壇に3人の息子の位牌。
明日は法事。お供えは甘辛く煮た玉蒟蒻、赤い南天。
野良仕事の踵は酷くあかぎれて、それを女房が糸と針で縫い合わす。

枕屛風には、生前の息子たちが釣りで大物を競った魚拓が貼られている――。

戦争は奪い去る。慎ましくささやかな、ばかみたいに小ちゃい幸せもすべて、一分の赦しも与えずに奪い去る。

井伏鱒二作品にみる当事者の体感、記録者としての目。


***


8/10

文字のない〈サイレント絵本〉。
物語はあわや…という場面からはじまる。

登場人物の安堵も渇きも、水中生物の闘いも――大自然を舞台に繰り広げられる生命のドラマだ。

演出は読者の胸に委ねられている。

喧騒と静寂に満ちた

なんて美しい世界。


☆『しま』
(マルク・ヤンセン作/福音館書店)



***


 ハリー・ポッタースタジオ


魔法の世界は楽しい。
映画の裏側にある仕事が解説されているので、もの創りが好きな人はハマると思う。
ホグワーツの教員、という設定で参加してきました。

(馴染んでる)

地球の変化を感じる夏。

水分塩分しっかり摂って、みなさまどうかお気をつけ下さい。


絵本コーディネーター東條知美