12/3


寒い冬。ひろこさんは、森で遊んだ友だち(リス、トカゲ、小鳥、野うさぎ)それぞれに宛てた手紙を書いて、もみの木につり下げます。


〈てがみを まもって くれて ありがとう〉

最後に、もみの木にもしたためます。


春が来て、ひろこさんが受け取ったお返事とは……?


☆『もりのてがみ』(片山令子作/片山健絵/福音館書店)


静かにたたずむもみの木に、スポットライトを当てた物語。

便箋にも封筒にも、ひろこさんは、楽しかった思い出をいっぱいに描いています!

その手紙たちが、雪の中のもみの木に吊り下げられる様子はまるで……華やかに飾られたクリスマスツリー🎄✨

めぐる季節、子どもと自然の交流を瑞々しく描く絵本です。

(片山健の描く、前髪ぱっつん・やたら笑ったりなどしない子どもが……だいすき!)


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12/5

「イスさん よろしくね」

鶏に卵を任された椅子が、そこいら辺を散歩するお話。
ナンセンス。
これぞ井上洋介ワールド!……ですが、今朝の私には、
「キミねえ、この世界に止まっているものなどなにもないのだよ」と聞こえてきたような気がして。

読む度に新鮮な発見。

☆『タマゴイスにのり』(井上洋介作、絵/鈴木出版) 


今日感じるものは、昨日見たものと地続きだ。

「絵本」を読む時、つかっているのは自分の心。だから当たり前。

出会うすべてがわたしの読みに影響をあたえる。
見方が変わったり、増えたり……そういう変化こそ面白いと感じる。

止まっているように見えても、常に動き続け変化しているのだ。
周りも自分も

その事実は、いつもわたしを励まし勇気づけてくれる。




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12/6

ひとつ事を究めんと戦うアスリートの姿は、我々を元気づけますね!
(ただ今、サッカーワールドカップの真っ只中⚽)

さて、こちら絵本に描かれるのは、打って打って打ち続け、いつしかすべてを破壊するようになってしまった一人のボクサーのお話。

何のために……?

強さとは……?

問いかけてくる物語。


◇『ボクサー』(ハサン・ムーサヴィー作/愛甲恵子訳/トップスタジオHR)

サッカーW杯が開催されているカタール。
ペルシャ湾を挟んで向こうにあるのがイラン。
イランは「詩の国」と呼ばれ、古典詩が日常会話に用いられることもあるのだとか。

60年代以降、絵本制作も盛んに行われてきました。

戦争の歴史に長く名を刻む国で生まれた、強さと破壊の意味を問う、イラン発の傑作絵本です。


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12/11

絵本じゃなくてごめんねごめんね~…ですが、
詩人で絵詞(えことば)作家の内田麟太郎さんの『詩 303P 内田麟太郎』(303BOOKS刊)を。


5つの子どもと12歳の少年、大人とおじいさんをみ~んな閉じこめて、開かれたページからひとり、またひとり、ひらひらと羽ばたいていく姿が見える……
そんな詩集です。

この世のあらゆるものを絵で見えるように紡いだ言葉。
詩。


「ものがたり」という詩が、わたしはとても好きでした。(255p-257p)
内田麟太郎さんの作品は時々すごくトリッキーだから、この装幀もしっくり。おそれいりました。




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12/13

読み聞かせがあの子にもこの子にも、楽しみな時間でありますように。




12/13

「令和4年版自殺対策白書」(厚生労働省)より




コロナ禍で、若年層・女性の自殺の増加が目立ちます。

生きにくい世の中を、少しは変えていけるだろうか。

「絵本」を手がかりに何かできたらと、ずっと考え続けている。


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12/14

〈自分を信じて、つよく、しっかりと〉
……

「男と女のまんなかにいる」ホオナニが、不安を乗り越え、自分の居場所をみつけていく物語。

ありのままに
生きたいと願うすべての人へ。

☆『ホオナニ、フラおどります』(ヘザー・ゲイル文/ミカ・ソング絵/クウレイナニ橋本訳/さ・え・ら書房)


両性を自認する12歳のホオナニ。
姉(※世の中の偏見をひとりで体現しています)の無理解に苦しみますが、両親の理解、さらに、トランスジェンダーの先生のもとで学べたことで、ホオナニは堂々と「自分」を表現することができました。

さて、私たちは……?


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12/15

凍てつく夜、路上で寝るオルガン弾きを見たフランシスは、その悲しげな瞳が忘れられません。

〈よろこびを おとどけします〉
……

クリスマスのお芝居の台詞を、想いを込めて彼に届けます。

☆『ゆきのまちかどに』(ケイト・ディカミロ作/バグラム・イバトーリーン絵/森山京子訳/ポプラ社)


クリスマス前の街で、持つ者と持たざる者の姿を描きながら、同時に、困窮する者を「見ないふりをする大人」と「救いの手を差し伸べたいと願う子ども」の姿を対照的に描き出します。

強く説くやり方でなく、あくまであたたかく……
クリスマスの意味、人のあり方を問う物語です。

(『ゆきのまちかどに』日本語版は、2008年に発行されています。当時、仕事と子育てで疲れ果てていた私に、家族が「きれいな絵本をみつけたよ」と贈ってくれたもの。嬉しかったなあ)


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12/15

140もの絵で構成された、美しい文字なし絵本。

サンタさんが、どの子の家にも間違えずたどり着くためには、裏方のサポートが不可欠なのです!

子どもがふいに目覚めてしまう……あの瞬間の緊迫感を、ぜひあなたにも味わってほしい。


☆『天使のクリスマス』(ピーター・コリントン作/ほるぷ出版)


気がつけば60冊も!書棚にそろっていた「クリスマス絵本」。

子育て期にくり返し読んだ絵本、技巧の施された芸術的な仕掛け絵本……

いろいろなクリスマス絵本の中で、この『天使のクリスマス』(ほるぷ出版)は、かつて勤めた専門学校の学生さんたちと笑いながら、絵を称えながら囲んだ思い出の一冊です。

ピーター・コリントンの絵本、せめてこれだけは絶版にならずのこってほしい。がんばれ、ほるぷ出版


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また冬がやってきました。


リースの松ぼっくり取れちゃうのが止まらない冬が。


めげずにがんばろうね。


絵本コーディネーター東條知美