9/16


この季節にぴったり!赤とんぼの活躍する昔話絵本があるのをご存知でしょうか?

 

☆『だごだごころころ』(石黒なみ子、梶山敏夫再話/梶山敏夫絵/福音館書店)


団子好きの鬼によって囚われの身となったおばあさん。

助けてくれたのは、あの日助けた赤とんぼでした……。


心地よい文章のリズム、

懐かしさと躍動感、お話をドラマティックに彩る絵、

はらはらドキドキの物語!


川も山も、いわばパターンで描かれているのですが、たゆまない水の流れ、山から風が吹いてくる様子まで感じとることができます。

里山の暮らしがそこにあります。


読み聞かせにぜひどうぞ👍✨



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9/17


ひるねこBOOKS(東京・谷中)で開催、本田亮「ねすがたはいけん原画展」で一目惚れ。


☆『ねすがたはいけん』(本田亮作、絵/私家版)



ひなちゃんが、

ゆたかくんが、

ゆみさんが、

犬が、


それぞれの寝姿で……


〈どんなゆめ みているの?〉


(↑この場面に、それぞれのヒントが隠されています!)


夢みて眠る人はみな、健やかで、愛おしい。


なんだかしみじみといやされる絵本です。



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9/18


最近「電子書籍じゃだめですか?」との質問を受けることが増えました。

都度「何がだめということはありませんが…」と前置いては、紙の本がもたらす様々なよろこびを、ひとつひとつ、確かめるようにお話しします。

たしかに実在する「もの」の意味を。


本を所有することの意味を、本屋でも図書館でも考えずにいられません。


お金の余裕がない、本を置く場所がない、子供はすぐに大きくなる……

これらの切実な理由を乗り越えて尚、「この絵本がほしい」と思わせるものとは何なのか。


この20年間、ずっと考え続けています。



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9/19


生きるというのは、誰かと出逢うことなのかもしれません。


この物語にあるように、橋の上で見知らぬ者と交わした一言二言が、命を繋ぎとめることも……。


静かに、ただ静かに

心を休ませる水辺を、それぞれの胸に。


生きるのがうまくないあなたへ


心に語りかけてくる絵本。



◇『橋の上で』(湯本香樹実 文/酒井駒子 絵/河出書房新社)



両作家による前作『くまとやまねこ』(2008年)では、最愛の友(ことり)を亡くしたくまの深いかなしみ、喪失感、そこから再生にいたるまでの様子が丁寧に紡がれていました。


やまねこと出逢い、再び歩き出すことができたくま。

そのくまが少年に、「きみも きっと 大丈夫だよ」と囁きかけているようです。
(左:『橋の上で』についてくる初回限定カード)



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9/22

夜は真っ暗で静か?

にぎやかでおいしい?
――

ある日出会った猫(ヨル)とネズミが、互いの知らない「夜」を案内しあいます。

パリの街角みたいな風景に、月の光と人の優しさがあたたかく溶けこんだ絵本 。

子猫の愛くるしさが傑出しています!


☆『ヨルとよる』(あさのますみ/よしむらめぐ/教育画劇)


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9/23


問答無用に好きな絵本 ……かなしいかな絶版のことが多いのですが(ショボン)

紹介させて!


☆『もりのドギマギ』(舟橋克彦文/橋本淳子絵/1992年 文溪堂)



この絵本に描かれるのは、お姫さまに一目惚れして、なんとか気をひこうと奮闘する龍の姿。


「ガオオオウ!!」

(シュッとした王子さまの姿に変身して、こんにちは。よいお天気ですね、と言ったつもり)


「うるさい」

(帰ろうとするお姫さま)


「ワオオウ!!」

(慌てて天使に変身。一緒にお散歩しませんか、と言ったつもり)


「やかましい」

(お姫さまはいつも、バッサリとひと言だけ)


😂


あなたにもぜひ見てほしい……この表現の伸びやかさを、お姫さまの反応を。

ふたりの物語を!



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9/26



えほんやるすばんばんするかいしゃ(東京・高円寺)で、きくちちきさんとサイトヲヒデユキさんの展示「一枚の絵本」。


企画した店主荒木さんの、あらゆる思いを取りこぼさないよう注意を払いながら、でもけっして安易な言葉でまとめたりはしない…終わらせない……そういったお話がまた聞けて嬉しかった。


同時代の作家、それをリアルタイムでみつめることのできる幸福。


関わりからうまれた唯一の表現


美しい芸術の「絵本」。



◇きくちちき作/サイトヲヒデユキ装幀、絵本『おひさまわらった』(JULA出版局 ※限定120部 特装版)


白い箱の中に、橙色の布張りの特製絵本と、黒色の『おつきさまささやいた』と題された版画作品(詩が添えられています)入り。
えほんやるすばんばんするかいしゃさんで若干取り扱いがあるようです。(※2022.9.26現在)


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9/27

☆『マスターさんとどうぶつえん』(アーノルド・ローベル作/こみやゆう訳/好学社)は、
☆『どうぶつえんのピクニック』(舟橋克彦訳/岩波書店)の前段話です。

ローベルは線の魔術師


マスターさんが動物園で働くようになった理由が、たのしく描かれています。

〈よるになって、どうぶつえんが しまる、じかんに なると、マスターさんは、かなしいきもちに なりました。どうぶつたちに さようならを いうのが いやだったからです。どうぶつたちも、マスターさんと さようならを するのが いやでした。〉
……

動物たちはみな、誰が彼らをいちばん愛してくれているのか、よーくわかっているのです♪


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9/28

上半期、なにかやり残したことがあるような……
そうだ!
「午前0時の森」出演の際に劇団ひとりさんから伺った絵本を読まなきゃ。


大好きなびりーくんの誕生日。
贈り物に悩み、大遅刻してしまうのんちゃん。
わかる、わかるよ、その気持ち…✨😭

木版画の絵がとてもよい!
これからのふたりのドラマを見守りたくなります。


☆『♪ピンポンパンポンプー』(中居正広、劇団ひとり、古市憲寿 著/小山友子 絵/マガジンハウス)
(タイトルについては最後までイミフ。あたしゃ、なにかヒントがあるんじゃないかと「のんびりーらんど」の端から端まで探してしまったよ笑)


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9/28

NHK「理想的本箱」が面白かった。

贅沢な映像("帯")付きブックトーク。

「将来が見えない時に読む本」……

もし私が、絵本を三冊選ぶなら……


◇『ルピナスさん』(バーバラ・クーニー作/掛川恭子訳/ほるぷ出版)

◇『最初の質問』(長田弘詩/いせひでこ絵/講談社)

◇『あかべこのおはなし』(和田義臣、若山憲著/こぐま社)

世の中をもっと美しくするために……
探し続けた日々の中で、あなたはすでに誰かを幸せにしているのかもしれません。
(『ルピナスさん』)

ページをめくる度に現れる「人生の問い」。
必要なこたえがみつかるかも。
(『最初の質問』)

まず一歩、踏み出してみよう。
(『あかべこのおはなし』)



9月の終わりに


某日

中野ブロードウェイでフィギュアをたくさん見た。

同じ人物(キャラクター)でも造形師によって少しずつ、解釈や、そこからわき出る物語の濃さや広さが違うのが見て取れる。

ゴジラやルフィ、怪獣をたくさん「読んだ」。

あえて解釈の余地を残したのか……といったものも。

それで、「デザインって解釈だよな」とあらためて絵本に目を向けたり、世界をできるだけゆっくりとらえることの大切さを思ったり。

しみじみと面白かった。



某日
「神田松鯉 神田伯山 歌舞伎座特撰講談会」夜の部。97年ぶりの講談師 on 歌舞伎座。
(誘ってくれた友に心から感謝!)
帰宅後、頭の中で堀田安兵衛がまだ生きて動いている。
松鯉伯山の語りには、学ぶところだらけ!
恐れ多いと知りつつも今後の仕事に取り入れてみたい。
(きっとブックトークが100倍面白くなるはず。司書のみんなも一度は講談をみた方がいい)

歌舞伎役者尾上松緑も加えての鼎談は、講談と歌舞伎、今後の新たな可能性を感じさせるものだった。
中でも印象的だった、講談師が講談について語った言葉――
「小さいもの、弱いもの、いたいけなものへ目を向けたい」(松鯉)
「(男の美学、だけでない)人間の美学がある」(伯山)


美しい表現をつきつめた芸術絵本、サブカルチャー、伝統芸能……さまざまな文化に触れた9月。
もう秋ですね。


絵本コーディネーター東條知美