5/3

***実家に帰省しております。この文章は絵本の紹介でもなんでもなくただの回想。***



37年前、まだ昭和だった。

12歳だった。


小学校の卒業式を1週間後に控えたある日、先生が「最後の学級活動はグラウンドで遊ぼう」と言ってくれた。


豪雪の年だったのか?果てしなく広いグラウンドにはまだ雪がどっさりと積もっていた。

グラウンドを見下ろす...…ほど高くはないけど、その日の「希望の丘」は格好のゲレンデだった。


雪合戦をする男子たち、巨大雪だるまを作る一団を横目に、私たちは交代で赤いソリにギュウギュウ乗り込み、「希望の丘」のツルツルの斜面をすごいスピードで滑り降りた。


一度に3人も乗るから最後にはバランスを崩す。ひっくり返ってはゲラゲラと笑った。


何回目かの滑走の時。

(あ!!)

...思ったと同時に激突した。

私たちの赤いソリがヨーコちゃんを轢いた。


転んで起き上がって見ると、ヨーコちゃんが、痛い痛い痛い痛い痛い!と泣いていた。

ヨーコちゃんの顔は真っ青だった。

ヨーコちゃんは普段まことにクールな女の子で、大声を出したりうろたえたり泣いたりする姿なんか見たことなかったそのヨーコちゃんが。


グラウンドの真ん中辺りから、先生が雪に足をとられながら走ってきた。

先生におんぶされてヨーコちゃんは足が痛い痛い痛いと泣き叫んだ。

赤いソリに乗っていたお友だちは皆ワーンと泣いた。


私はヨーコちゃんの怪我は私のせいだと思った。はしゃぎすぎた私のせいだ。私がソリの先頭にいたから私のせいだ。ヨーコちゃんの足が動かなくなったら、私は一生ヨーコちゃんの世話をして生きるしかない。ヨーコちゃんはそんなに仲良しってわけじゃないから、許してくれないかもしれない。ヨーコちゃんのお母さんに一生恨まれるかもしれない。けど、とにかくあんな痛い思いをさせた私はヨーコちゃんの召使いになるしかないんだ・・・


37年前、12歳の私は「希望の丘」で悲壮な覚悟をきめたのだった。



フクザツコッセツのため卒業式に出席できないヨーコちゃんの卒業証書授与を、式の前日に入院先でやるから「一緒に行くかい?」と先生に聞かれ、私たちは黙ってうなずいた。


病室に入るとヨーコちゃんがいた。


ヨーコちゃんを見て、私は「ごめんなさい」と言って初めてワーンと泣いた。

みんなもワーンワーンと泣いた。

ヨーコちゃんはクールなヨーコちゃんに戻っていて、無表情のままひと言「いいよ」と言った。


"心に太陽を、くちびるに歌を持て"がモットーの優しい校長先生が、ベッドで足を吊られたヨーコちゃんの卒業証書を読み上げた。

ベソベソ泣く私とお友だちに、ヨーコちゃんのお母さんは「足は治るから大丈夫。皆さんありがとう」と笑った。


私はヨーコちゃんの足と神さまに感謝した。

ヨーコちゃんの足よ、神さまよ、私は召使いにならなくてもよいのですね。



ここがその「希望の丘」です。


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5/4


目に見えない頭巾を纏い、透明な犬を飼うあたいは「赤ずきん」。


夜のお店に出てるけど「お酒とか飲めないカーラー、」

リンゴジュースをちびちび飲みながら、マグロ船で出てったジローをずっと待ってる。


これは……


"大人のためのおとぎ話"。

なんか他人事じゃなく感じチャッテー、理由もなくマグロ船のジローを一緒に待ってるみたいナー…

◆『赤ずきん』(いしいしんじ文/ほしよりこ絵 フェリシモ) 

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5/5

世界中のこどもたちが幸せでありますように。
どうか どうか

#こどもの日 
#NoWar 

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5/6

北の山奥で生まれた小さな川が、自分はどこへ進むべきなのか?尋ねながら旅をします。

喜びに弾んだり、叱られてシュンとしたり、時にふてくされながら……
行くべき場所を探し求めた川が、最後に知ったこととは?

☆『川はながれる』(アン・ランド文/ロジャンコフスキー絵/掛川恭子訳 岩波書店) 

迷いながら進むちいさな川の姿は、自分はどこから来てどこへ行くのか?といった問いを潜在的に抱える、多くの子どもの共感を呼ぶことでしょう。

ラストは哲学的にも感じられる文章で締められています。

〈たびしてきたところ どこにでも、じぶんがいる〉……

ぜひ、親子でお話ししてみてください。

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5/8

仕事に嫌気がさした男が、ある日失踪…⁉

いえいえ、GW明けの皆さまを煽るつもりはございません。

すこし離れてみることで初めてわかる幸せもある。
こちらは、そんな一人の男の「休暇」を描いた共感の一冊です。


◇『ゆくえふめいのミルクやさん』(ロジャー・デュボアザン 作/山下明夫 訳 童話館出版) 
原題は「THE MISSING MILKMAN」(1967 アメリカ)

スイスからアメリカに渡り、テキスタイルデザイナーのキャリアも持つ(作者)ロジャー・デュボアザン。

絵はご覧の通り(最高)。
所々に差し込まれた「歌」が重さを解き放ち、ミルクやさんの心情をつぶさに映した台詞や情景描写には、品のよいユーモアが散りばめられています。 

〈鳥がとびまわる みずうみのそばの ひるごはんは、なんとも さいこうでした。
「ねえ、シルビア。ここは まるきり、ダックスフントとミルクやがおさめる 小さな王国みたいだね」〉……

(さあ、明日はとうとう月曜日。さようなら連休!)

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5/9

内田×枡野作品にはいつもノスタルジーや優しさや「もどかしさ」が滲み合う。 

この絵本のラストは、見開きいっぱいの夕暮れのシーン。

給水塔、お父さん、健気なシロ……と、犬を飼ったことのない私でも懐かしい。

ずるい。

シロは人の言葉を話せないけど、いつも家族の役に立ちたいと思っている。

うまく伝えられなくて、うまく立ち回れなくて、だけどだけど……
というシロに、我が身を重ねてちょっと泣く。

ずるい。

枡野さんと内田さん、このお二方にしか作れないであろう作品
◇『シロのきもち』(内田かずひろ作、絵/枡野浩一文 あかね書房) 

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5/10

あかちゃんって本当に可愛い。
ただそこにいるだけで、その姿を見ているだけで、幸せをもらえますよね。

だけど子育ては本当に本当に本当に!たいへん……
だから
みんなで育てましょう😊

私たちみんなが応援団です。
☆『あかちゃんですよ はいどうぞ』(うしろよしあき 文/鈴木智子 絵 アリス館)

……という話を、先日の終活セミナー(「命と人生をみつめる絵本」)でさせていただきました。
その際にちらっとご紹介した絵本。

おんぶして、抱っこして、みんな満面の笑顔に。
最後はちゃんと親御さんの元へかえされるあかちゃん。

幸福と安心に包まれた世界(社会)を🍀

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5/11

ブックハウスカフェ(神保町)で絵本『あなたがうまれたとき』原画展。

作者のくさかみなこさん㊨、横須賀香さん㊥とお会いしました。

『あなたがうまれたとき』(小学館)は、世代を超えて多くの人々の心を揺さぶる作品です。

読者各々が「私だけの記憶」を重ね、紡ぎ出す世界。

それを可能にする言葉の余白、色の情感……作品のもつ力ににあらためて感じ入ったひと時。


両作家到着前の会場では、80歳を超えているという女性が原画をしげしげと眺めていました。

「絵、いいわね」
「子育て、もっと余裕をもってやればよかったわ」
「昔、こどもに一冊だけ、寝る前によく読んであげたの。福音館書店の……なんだったかしら」
「息子は50をとうに過ぎているけれど、あの絵本だけは好きだった。ずっと忘れてたけど今思い出したの」

たまたま居合わせた私に……というより、
ご自身の遠い日の記憶を手繰り寄せるように、静かに呟いていらっしゃいました。

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5/12

くまさぶろうは、泥棒です。

最初はこどものコロッケや、しゃれた紳士の傘なんかを盗んだりするだけでした。

それからいろいろありまして……

名人級のくまさぶろうは、人の悲しみや痛みを、盗むようになりました。

静かに誰にも気づかれず、
そーっと、密やかに……
 
「いててて、ててて」

 
あの子の痛みをわが痛みに変えて、そっと微笑むくまさぶろう。
 
明日はどこ行く くまさぶろう。

◇『くまさぶろう』(もりひさし、ユノセイイチ 著 こぐま社)

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5/13

【掲載】
雑誌「Mart」のマガジンに掲載されました。
時には肩の力を抜いて、絵本の世界へレッツゴー!
お疲れ気味の皆さまへ💐


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5/14

一匹のノラネコが「うちのねこ」になるまでの、気まずくて壮絶で、少しずつ穏やかにほどけていく日々。ふたりの関係。

人と人も、人と猫も、寄り添って生きるのはそれほど容易なことじゃないけれど……

愛があればだいじょうぶ、と信じてみたくなります。


◇『うちのねこ』(高橋和枝 作 アリス館) 

🔔「うちのねこ」のその後を描いた作品も展示された原画展がウレシカ(西荻窪)で開催中。
絵をやる方には、絵本作家の中ではめずらしく岩絵の具(日本画の画材)を用いて描く作者・高橋和枝さんにお会いできるチャンス。5/23まで。


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5/15

🌷柊有花個展「あなたに咲く庭」(5/12-24 於:吉祥寺 にじ画廊)


そこにいるだけで浄化されていくような空間。

柊有花作品に在る物語は、誰にも何も強いることがない。だから安心してそばにいたいと思えるんです……と、とりとめのない私の呟きに、「そうありたいと思っているからかもしれません」と柊さん。 


お会いできてとても嬉しかったです。



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5/16 【旅の日】

『旅の絵本Ⅱ』(安野光雅/福音館書店)は、イタリアの田園や名所を俯瞰で眺めながら、旅人の動きを目で追う「サイレント絵本」。
(田園風景に癒やされたり、蚤の市の賑やかさやローマの名所に心ときめかせたり。旅はいいなあ)

三匹のこぶたやラプンツェル、不思議の国のアリス、禁じられた遊び、最後の晩餐などなど、ジャンルや国を超えたネタが散りばめられています。
子どもたちと一緒に読んでいると、何かを見つけるたびに歓声が上がります。 

1978の初版は、「それ以降の同シリーズとは印刷・製版方法が違っていたため、色の鮮やさにやや欠ける」との理由で改定。
初版

現在流通しているものは、(先に出ている)表紙にイタリア国旗が描かれた版となります。 

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絵本コーディネーター東條知美