◇『いつもふたりで』(ジュディス・カー作/亀井よし子訳 ブロンズ新社)
この絵本に描かれているのは、年老いた女性と(天国にいる)夫の束の間のランデブー。
〈まいにち 4じから 7じのあいだ〉二人は空で、海で、山で、仲睦まじく……人魚やユニコーンとあそんだり、エベレストに登ったり、毎日途方もない冒険を繰り広げているのです。
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作者のジュディス・カーは2019年、イギリスで95年の生涯を閉じました。波乱に満ちた運命を生きた人でした。
長年連れ添った夫(ニール)には2006年に先立たれています。
その5年後、2011年発のこの作品は、なんと!カー88歳の時の作品です。
眩いファンタジーで彩られたこの物語には、彼女自身の愛や夢が投影されていたのかもしれません。
〈でもね たまには ヘンリーと ふたりっきりで
こことは べつの せかいに いって
あの しあわせだった ひびを
いきなおしたいと おもうこともあるわ。〉……
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今や高齢者(65歳以上)が全体の29%を占める日本。
夫婦で過ごす時間、のこりの時間をひとりで過ごす時間は、昔に比べると圧倒的に長くなっています。
誰にとっても、(もちろん私にとっても)他人事ではありません。
「いい夫婦の日」(11月22日)の今日、どの絵本を紹介しようかなと思った時に真っ先に思い浮かんだのが、この『いつもふたりで』でした。
施設で、公園で、ご家庭で…「おばあちゃんったら、またぼんやりしている」と言われているあの人も、もしかしたら今頃、愛おしい人の傍らでスフィンクスと宴会をしているのかもしれませんよ。
「いい夫婦の日」(11/22)に。
絵本コーディネーター東條知美