〈シモ月二十日のウシミツにゃあァ、モチモチの木に ひがともる。
おきてて 見てみろ、そりゃァ キレイだ〉……
☆ 『モチモチの木』(斎藤隆介 作/滝平二郎 絵 岩崎書店)
爺さまと二人で暮らす豆太は臆病であまえん坊ですが、ある晩倒れた爺さまを助けるため、ふもとの医者まで走ります。
闇の怖さ、足の傷みにも負けないで...…。
光と影の切り絵で描き出される、豆太と爺さま里山の暮らし。
山には、街の者の知らないほんとうの夜の闇があります。
大人になった私には、物語の少し先にあるふたりの別れがそう遠くないことを、どうしても思わずにいられません。
だから余計にこの夜の美しさが、ささやかな幸福が、胸にしみるのでした。
霜月二十日(11月20日)に。
絵本コーディネーター東條知美