10/1
季節の移り変わりを豊かに描き出す、ジョン・バーニンガムの詩画集のような絵本です。
〈 あきに なったら
とびちる はっぱ
えさを あつめる りす
はたけを たがやす トラクター
たきびの けむり
そらたかく とぶ かり
ながい ながい よる 〉
――ジョン・バーニンガム作/岸田衿子訳『はる なつ あき ふゆ』(ほるぷ出版)より
大判の絵本ですが、さらに中には、広げるとこの4倍もの大きさになる(折りたたみ)ページ有り。
(春夏秋冬、4枚分)
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10/1
「よい読者」であり「思考する人」を、じっくりと(計画的に)育んできた、有史以来すべての学校司書たち、もっと敬意を払われてよいと思うのですが。
我々が「学校図書館でたまたま出会った本」は、たまたま置かれていたわけでなく、確実になんらかの意図を持って、そこに・その時、人の手を介し配架されたものです。
有史、と書いたついでにお知らせしますと、学校図書館は、1902(明治35)年、京都市の尋常高等小学校に寄付金で設置された児童文庫が始まりとされています。
120年分の歴史と思い。
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10/2
☆『ロージーのおさんぽ』(パット・ハッチンス作/渡辺茂男訳 偕成社)
めくる手がドラマを動かす、アニメーションのような(感覚を呼び起こす)絵本。
悠然と歩く雌鳥ロージーと、彼女を虎視眈々と狙う狐……
ただそれだけ。なのに、なぜこんなにもドラマティックなのでしょう。
この作品は、はじめから終わりまで、張りつめた〈緊張〉と〈ユーモア〉に貫かれています。
読者の目と心は、ずっと彼らに釘付けです。
そして、最後に待ち受けている鮮やかなオチ!
何よりこの芸術性!
ロングセラーにはわけがあります。
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10/3
トークイベント「イザベル・シムレール 夢みる絵本の生まれるところ」
(質疑タイムに)なんとか滑り込み参加。
『あおのじかん』(岩波書店)等を通して、"美"を絵本という形で送り届けてくれた作家イザベル・シムレール。
知的でエネルギッシュ、いつも「自分が描くべきこと」を意識し、実践している…そんな印象を受けしました。
「小さな子どもには(本質的に)絵本が必要」との力強い言葉。
同時代に出会えた喜びに震えました。
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10/4
ユカワアツコ『草木鳥鳥文様』展(銀座教文館)へ。
古い抽斗に描かれた野の鳥たちはみな、今にも羽ばたいて何処かへ飛んでいってしまいそう。
おどかさないように、そろりそろりと歩きます。
展示されていた梨木香歩さんの文章を読んで、サンコウチョウという鳥を、知らないのに、私はもう愛し始めています。
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10/4
◇『かなしみのぼうけん』(近藤薫美子 作絵 ポプラ社)
限定公開の動画・作者のメッセージより一部をご紹介します。
〈死をむりに乗り越えなくてよい〉
〈どんな哀しみも苦しみも胸に刻んで、共に生きていきたいと思う〉
……
死を描きながら、同時に力強い生が映し出されます。
三輪車の軋む音はレクイエム。
すごい。
読み終えた後に上下をひっくり返すと、見えなかったものが見えてきます。
作者の近藤薫美子さんはこのトリックアート(仕掛け)について、「少しでも明るい気持ちになってもらえたら」と語っています。
木炭の黒が、まっさらな白の中に溶けていきます。
手にとって隅々まで味わいたい[レクイエム絵本]。
私事ですが、今日は祖母の命日なのです。それで、あらためてこの絵本を読み返していました。
思い出がつぎつぎと蘇り、なんだか祖母がすぐ近くにいるように感じられ……
作品はペットの死をテーマにしたものですが、故郷の墓参りも叶わない今、心の中でよい供養ができました。
わすれないよ、ずっと。
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10/6
(テレビで、ベテラン漫才師の仲たがいを描くドキュメンタリー企画を観た。意地っ張りがそろうと大変だなあ)
ムカムカ…やつあたりの連鎖。
無邪気なワンちゃんがみんなに「ごめんね」のきっかけを与えます。
〈あやまると いいきもちに なりました。〉
☆『なかなおり』(シャーロット・ゾロトウ文/アーノルド・ローベル絵/みらいなな訳 童話屋)
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10/10
☆『だごだごころころ』(石黒みな子、梶山俊夫 再話/梶山俊夫 絵 福音館書店)
おばあさんがこしらえただご(だんご)が転がって穴に落ちてしまいます。
ところがその穴、鬼たちの棲家だったのです…!
懐かしく味わい深い表現で描かれる昔話絵本。
副題をつけるなら「赤とんぼの○○返し」?
子どもの目が(大人の目も)キラキラと輝く痛快なお話です。
心地よい語りのリズムと懐かしさを感じさせる梶山俊夫の絵が、遥か昔、民話の世界へと誘います。
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〜雑記〜
年がら年中読書推進しているので忘れがちですが、〈読書の秋〉ですね。
いろいろ落ち着いたら、角川武蔵野ミュージアムで一日中本を読んで過ごしたいです。
こちらでは本がテーマで並んでいるのですが、「ちょうどいい」感じなのです。
しゃれすぎず、軽すぎず、重すぎず、専門により過ぎもせず…かといって専門書もさりげなく置かれていて、サブカルもあり、本との出会いにワクワクできる場所といった雰囲気。
大人のツボを押さえた角川武蔵野ミュージアム。
「本棚劇場」のスペースが有名ですが、その手前にあるこのラインナップが(以前来館した際は)休日の私にちょうどよかったのです。
好奇心的にも体力的にも。
読書するのに
体力って大事ですよね〜
(本の量が多すぎても怯むもの)
絵本コーディネーター東條知美