9/20は敬老の日。


コロナ禍で、おじいさんやおばあさんとの再会がなかなか叶わない人も多いのではないでしょうか。


会えなくてさみしい…そんな時は、絵本の中の素敵なおじいさん、おばあさんに会いに行ってみませんか。



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【おばあちゃんに会いたい】



☆『あと、いくつ?』(ひろかわさえこ作 アリス館)


カレンダーを眺めながら、おばあちゃんの家を訪ねるその日を心待ちにしている「くるみちゃん」。


おばあちゃんだって、きっとそれ以上に、くるみちゃんに会える日を心待ちにしていますよ。



〈おばあちゃんに あったら、なんていおう?〉



楽しみで、ドキドキしちゃって、心落ち着かない……

すっかり大人になった私にも、そのソワソワした感じには覚えがあります。



待つ時間もまた宝物。 

もうすぐ もうすぐ🍀



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【瑞々しいおばあちゃん】



72歳の誕生日、家族に贈られた故郷の絵は、おばあちゃんの記憶の風景とは違っていて……


そこからスタートする、おばあちゃんの絵描き人生!



自由に穏やかに、こんな風に歳を取っていけたら。



◇『エマおばあちゃん』(ウェンディ・ケッセルマン文/バーバラ・クーニー絵/もきかずこ訳 徳間書店)


ところで
『エマおばあちゃん』には、木に登って降りられなくなった猫をおばあちゃんが助け出す美しいシーンが出てくるのですが、
これ絶対に、『ちいちゃな女の子のうた "わたしは生きてるさくらんぼ"』(デルモア・シュワルツ 文/バーバラ・クーニー 絵/白石かずこ 訳 ほるぷ出版)の少女と対比させてみせましたよね?作者。

(似たような木に登る少女が同ポジションで描かれています。)


人はやがて皆歳をとる。
でも、内側にある瑞々しさまで失われることはないのだ…
高らかに歌い上げる少女の(同時におばあちゃんの)声が、胸に響いてくるようでした。


バーバラ・クーニーの描く女の人生。
いつもぐっときます。


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【人生を楽しむ姿】



お次は

「孫から見た祖父」と「お隣のビジネスマン(ライトさん)」を対比的に描く、ポルトガル発のスタイリッシュな絵本。



◇『ぼくのおじいちゃん』(カタリーナ・ソブラル 作/松浦弥太郎 訳 アノニマ・スタジオ)

(使われる色は赤、緑、茶色だけの版画絵本。シンプルでかっこいい!)



時計職人でもないのにいつも時計を見ては忙しない、お隣りに住むライトさん。

ああ…

思い当たる節、ありますよね〜。


しかし、働かなければならない我々の世代。ある程度のあくせくは仕方なし(…かなあ)。



一方、


〈ぼくの おじいちゃんの いちにちは とっても たのしそうだ。

ぼくは おじいちゃんが だいすき。〉


人生をとことん謳歌するおじいちゃんと、その姿に憧れを抱く小さな子どもの目。


しっかり見ているんですよね。

見られているのですよね……。



手をしっかりと繋いだおじいちゃんを見上げる孫の「目線」。

表紙のアングルがすべてを物語っています。



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【仲睦まじきことは素晴らしきかな】



〈ワニばあちゃんの はなの あなには アリじいちゃんが すんでんのよ〉



☆『ワニばあちゃん』(おくはらゆめ 作 理論社)



おくはらゆめによる、のほほん温かい老夫婦の物語。


…いや、別にふたりを夫婦と限定する必要なんてないのかもしれません。

ともに生きるふたりが夫婦とは限りません。


ともかく

ワニばあちゃんとアリじいちゃんは、いつでもどこでも一緒。


いつも朗らかに笑っています。



〈ときどき かがみを みながら おしゃべりすんのよ〉


このままずーっと仲睦まじく暮らしてほしいな。



ユーモラスな表現(ばあちゃんの鼻毛で遊ぶおじいちゃん等…)にニマニマしつつ、あたたかな想いに満たされていく絵本です。

老老。朗々。



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【言葉はなくても】



マールと大の仲良しのおばあちゃん。

ある日、倒れて言葉を失ってしまいます。

でも、マールにだけはおばあちゃんの心がわかるのでした…。


祖母と孫の心の交流を描く、美しい愛の絵本。



◇『マールとおばあちゃん』(ティーナ・モリティール作/カーティエ・フェルメール絵/江國香織訳 ブロンズ新社) 

カーティエ・ヴェルメールは、ベルギー(フランダース地方)出身の画家。


見返しに至るまで、コラージュを含む様々な画法が用いられた、芸術性の高い作品です。


病院で目を覚ました時には「たくさんのことをわすれて」しまっていたおばあちゃん。
たとえばこの場面を描くページには、点滴の管が、家族の写真を収めた額や(二人の思い出の木に棲む)リスへと繋がり描かれています。
病魔に侵されたおばあちゃんを「繋ぎ止める」ものが、愛する家族であり、思い出であることを暗示しています。

言語外の心象表現がとにかく巧み。 

絵が物語る 美しい絵本です。



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【ありがとう】



おじいちゃんと孫娘の交流をチャーミングに描く『おじいちゃん』(ジョン・バーニンガム作/谷川俊太郎訳 ほるぷ出版)は、10代の私にとって、大好きだった祖母との悲しい別れを初めて乗り越え、楽しかった日々をようやく宝物と思えるようになる…そのきっかけをくれた大切な絵本です。



〈ぬいぐるみのくまが おんなのこだなんて しらんかったよ。〉

一緒におままごとをしたり、人形で遊んだり、釣りを楽しんだり。
ときにはケンカも。
おじいちゃんと孫娘の日々がフラッシュ映画のように次々と映し出されます。


絵と言葉の両方が揃って、はじめて物語が意味を成すジョン・バーニンガムの作品。 


大切なことに気づかせてくれてありがとう💐 



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元気で優しい、思慮深く賢い、あるいは年齢なんて忘れちゃうほどぶっとんでいる……素敵なおじいさんやおばあさんを描く絵本は、ほかにもたくさんあります。


ぜひあなたのお気に入りを探してみてくださいね。


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(追記)

まるで「エマおばあちゃん」みたいな グランマ・モーゼスの展覧会、東京は11/20〜世田谷美術館で開催。(静岡から順に巡回) 


楽しみです。



絵本コーディネーター東條知美