去る9月8日、大田区立出雲小学校にゲストティーチャーとしてお招きいただき、

「絵本の絵を読む/文章から絵を想像する」というテーマのもと、1年生の児童のみなさんにお話をさせていただきました。

 

当日の様子は出雲小学校 「令和3年 WEB日誌」9/8の記事をご覧ください。

 

 

 

図工・国語の2科目を横断する研究授業(研究主題:未来を創る力の育成)にあたり、1年生児童に「ものづくりの喜び」を感じてもらい、「物語からイメージしたものを表し伝える力を育むこと」を目標にした取り組みの、前座のような役割を求められてのご依頼です。
 
加えて先生方は、児童のみなさんに、絵本や物語によりいっそう親しんでもらいたいと願っていることを事前に伺いました。
 
そこで、絵本の面白さや魅力をお知らせすると共に、「読む」「イメージする(想像する)」作業の面白さもお伝えできるよう、簡単なプログラムをご用意させていただきました。
 
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□ 世界で最初の絵本
 
せっかく〈絵本コーディネーター〉にお声かけいただいたわけですから、「大人もあまり知らないような、専門の学問の話をいたしましょう!」と、(子どものための初めての「絵本」)『世界図絵』(コメニウス 著/1658年)の話から始めさせていただくことにしました。
 
 
(教育者だった)コメニウス先生が、なぜこの「絵と言葉で編む本」を作ろうと思ったのか?
 
そこにはどのような願いが込められていたのか?etc…
 
小学1年生のみなさんに「絵本学」で学ぶような内容をシェアさせていただきました。
 
 
「363年前って、ぼくらのおばあちゃんは生まれていましたか?」
(いいえ、もっとずっと昔です。)
 
「コメニウスってどこの国の人ですか?」
(現在のチェコ共和国。ヨーロッパにある国です。)
 
児童のみなさんからいくつもの質問が投げかけられました。
好奇心がいっぱいです!
すばらしい学びの姿勢に、私の方がワクワクしてまいりました。
 
ここでは、「絵本」が(基本的には)「絵」と「文章(ことば)」で中身を伝えるものであるということも、あらためて確認しました。
 
 
□ イメージを言葉にしてみる
 
次にしたお話は、「イメージの言語化」について。
…と言っても1年生にわかるように、またその作業を面白いと感じてもらうようにしなければなりません。
 
実際の絵本を何冊か開きながら、わたしたちが普段何気なく行っている「目で見た風景から起きている出来事を想像する」作業、「絵本の絵を読む」作業を、一緒にやってみることにしました。
 
 
 
(学校HPより写真をお借りしました)
 
絵本の絵を読む作業。
 
「登場人物はこの時、どんな気持ちだったのかな?」
 
「おじいさんとおばあさんは、この時、どんな話をしていたと思う?」
 
「どんな匂いがするのかな?熱いかな?冷たいかな?」
 
「この人たちはなぜ怒っているのかな?」
 
 
頭で考え、五感で感じ、「イメージ」を思い浮かべ、それを「言葉であらわしてみる」と、意外なほどにたくさんの情報が絵の中につまっていることがわかります。
 
また、絵をすみずみまで読み解くことで、わたしたちは、文章に書かれていないことも、無意識のうちにたっぷりと「言葉に置き変えて理解している」ことに気がついてもらえました。
 
 
□ 言葉からイメージしてみる
 
 
続いて試みたのは、「言語のイメージ化」です。
 
絵本の文章や物語の流れから、「登場人物の表情」やその変化を、みんなで想像してみました。
 
 
「クマくんがトイレのドアをノックして…使用中だったら、どんな表情になるかな?」
 
「最後に無事トイレを済ますことができたクマくんは、どんな表情をしていると思う?やってみよう!」
児童のみなさん、とてもいいお顔を作って見せてくれましたよ。
 
 
さらにここでは、「昔話の文章を耳で聞いて、その場面の絵を思い浮かべてみる」ワークを試みました。
 
最後に「この絵本作家さんはこう描きましたよ」と見せると……
 
「私の思っていたおじいさんはもっと体の細いおじいさんだった」
 
「(思い浮かべた)顔はこんなに丸くなかった」
 
「もっと真面目な感じのおじいさんの顔を思っていた」
……
 
みなさんそれぞれの頭の中に創り出された、豊かなイメージを教えてもらうことができました。
 
「知っていることがあるから、それを元にイメージ(想像)することができる」というお話も、少しだけさせていただきました。
 
 
□ 一人一人が持つすばらしい力
 
 
最後に、すべてのワークを終えて、私が今日児童のみなさんの中にみつけた「すばらしい力」を発表させていただきました。
 
〜出雲小学校の1年生のみなさんが持っている力〜
☆想像する力
☆形にする力
☆伝える力
 
これらは生きていく中で、何をおこなう上でも役に立つ力です。
 
多くの絵本作家さんは、絵本を創り出し、届けることで、363年前のコメニウス先生の思い(子どもの未来のために…)を今も引き継いでいます。
 
みなさんはこれから、絵本や物語の本、図鑑をたくさん読んだり、たくさん遊んだり、様々な体験をすることで、この力をどんどん大きく育てることができますよ……とお伝えして、授業を終えました。
 
すばらしい可能性を秘めた1年生のみなさんに、私から大きな拍手を贈らせていただきます。✨👏
 
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「外部の様々な専門家の話に触れ多様な刺激を受けることで、児童には、"自分で考え、行動し、創り出す"イメージを今から育んでもらいたい」と、関眞理子校長先生。
 
出雲小学校1年1組・2組・3組のみなさん、担任の先生方、校長先生、小林正明副校長先生、この度はありがとうございました。
お声がけいただいた中谷先生、繋いでくださった読書学習司書の植木さんにも、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
 
 
ゲストティーチャーとして子どもたちの前に立つ体験は、私にとっても学び多いものとなりました。
 
未来を担う児童のみなさんが「ものづくり」の面白さを知り、自由な発想で「自分だけの表現」をどんどん生み出していってくれますように。
 
いつも応援しています!
 
 
絵本コーディネーター東條知美