〈 でも あるひ あなたは とびたってゆく
そうして なりたいあなたになって もどってくるでしょう
そのときは わたしも かわっているかもしれない 〉
――『わたしたち』(パロマ・バルディビア 作/星野由美 訳 岩崎書店)より
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"無償の愛"を描くチリ発の絵本。
泣くまいと心を引き締めるも…こみ上げてくる涙を抑えることができませんでした。
愛おしい我が子。
けれど、親子の関係が時々で変わってゆくことはこの身をもって知っております。
あんなに可愛かったのに...
私のことが大好きだったのに...
腕の中の甘酸っぱい匂い。
あたたかな季節もあれば、やがて寒々とした季節に身を置くこともあるでしょう。
この絵本をめくる時間は、苦しい寂しい季節にいる親と子を、どちらも救ってくれるんじゃないかなと思います。
もう一方でこの作品は、"巡る命"をうたう絵本でもあります。
姿かたちを変えて私たちの命は継がれ、生き続ける……そんなイメージがシンプルかつ豊かに描き出されます。
読む人によって、読むときによって、
違った思いがわきあがる作品。
名作ですね。
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パロマ・バルディア(チリ)、すばらしい絵本作家です。
デフォルメの表現で描かれたすべてのもの……人も動物も草木も花もみな息づいています。
(デフォルメされた絵が、絵本において時に無機質すぎたりキャラクター化し過ぎでは?と感じさせる作品も多い中で、バルディビアの絵には体温を感じます。)
全体の色味もシックで落ち着いており、すっかりこの作家のファンになってしまいました。
また、絵本では(詩のように)言葉がわずかであるほど、抒情性はそのままに別の言語に変える…翻訳作業の困難を思わずにいられないのですが、
落ち着いた心地よいリズム
胸を揺さぶる間合い
やわらかな語りの口調
......
気がつけばどっぷりと作品の世界に浸りきっていました。
絵本が「絵」と「言葉」との相互作用の芸術であることを忘れない
翻訳家 星野由美による名人芸。
さらに、
"作品のこころ"を、目に見える形・手に取れる最高の形に……デザインを手掛けたのは椎名麻美。
『わたしたち』は、名人たちに手掛けられた幸福の翻訳絵本。ですね。
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久しぶりにべた褒めしてしまいました。
ぜひ多くの方に手に取っていただき、感じていただければ。
〈 いつだって あなたは わたしのこども 〉
……
あなたの思いを
好きなようにのせて。
絵本コーディネーター東條知美