7/12
【怪談絵本】
飼い猫を探す少女。恐ろしい、行ってはならぬと囁かれる「ねこみみやま」の屋敷で出会った老女は警告します。「どうしてここにきてしまったのですか!」……
行灯が照らし出す屋敷の秘密とは?
危機一髪の少女の運命をドラマティックに描く絵本。
継ぎあての服で父親が草鞋を編んでいます。ごろごろ大きな石が目立つやせた土地。育つ食物は限られるでしょう。
アンマサコによる奥行きのある絵が、この世のものではない者たちの気配を色濃く漂わせます。
「耳で聴き絵を読む」怪談絵本の醍醐味がここにあります。
行けばただでは済まない……
ひんやりとした余韻を味わって。
☆『ばけねこ』(杉山亮 作/アンマサコ 絵 ポプラ社)
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7/13
【かみなり🌩】
☆『せんたくかあちゃん』(さとうわきこ 作 福音館書店)
洗濯板に洗い桶。汚れたものはなんでも(犬も猫も子どもたちまで!)ガシガシ洗って干すよ、せんたくかあちゃん。
挙句の果てには空から落ちた雷たちまで、み〜んなまとめて!ガシガシ、ゴシゴシ、ガシゴシゴシ……
この豪快さ、雨上がりのさっぱり感よ✨
1982年刊のロングセラー絵本です。
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7/14
【7月はかみなりのおつきさま】
轟く雷音、光る稲妻……
いま時分の月を「かみなりのおつきさま」と訳した美しい詩の絵本を。
〈ごろごろ ごろごろ
からだを ふるわせ
くろぐろとした そらに
おつきさまは きえる〉…
☆『ながいよるのおつきさま』(シンシア・ライラント作/マーク・シーゲル絵/渡辺葉訳 講談社)
墨で描き出される静かな月夜。
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7/15
【愛おしく、かなしい】
無人の屋敷から聞こえる箒の音
十人で遊んでいたはずが、何度数えても十一人
渡し守が見た不思議な少年
……
その静かな瞳は
気の遠くなるような長い歳月を、誰かをみつめているようで。
〈光と影の名手〉岡田千晶さんが描く宮沢賢治。
中でもこの『ざしき童子のはなし』に描かれる東北の里山、北上川の夜、童子の表情はいつも私の心を震わせます。
北上川を渡る童子と渡し守がぽつりぽつりと言葉を交わします。空には月……この物悲しさと情緒を
ぜひ開いて味わってくださいね。
童子(ぼっこ)。
愛おしくて、かなしい
◇『ざしき童子のはなし』(宮沢賢治作/岡田千晶絵 三起商行)
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7/16
【だれかと】
子どもがまだ2つやそこらの頃、行き先もなく亀の歩みで近所をぶらついていたある日、
猫がいました。
猫はずっと前からそこにいたよと、その細い路地でお婆さんが教えてくれました。
猫もお婆さんも毎日そこにいて、私たちを見ていたそうです。
『ぼくはいしころ』(坂本千明 作 岩崎書店)を読んで、その記憶が蘇りました。
〈ポツンとひとり〉
と感じてさみしかったあの頃も今も、
声に出して話して、聞いてもらえる……誰かを心の奥で欲している自分に気づかされます。
夜のねこも朝のねこも、水たまりに映るねこも
みんなすばらしくて
ものすごくかわいい。
「今日こそは『ぼくはいしころ』を買う」と決めてでかけたウレシカで、ちょうど!絵本にサイン(&イラスト)を入れておられる作者の坂本千明さんにお会いすることができました。こんなことってあるかしら…✨
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7/17
【思わず跳んじゃう】
☆『なわとびょ〜ん』(シゲリカツヒコ 作 KADOKAWA)
なわとびが苦手なケンタは、大縄跳び大会に向けた放課後の特訓をサボって逃げ出そうとします。
するとそこに、謎の(カエル頭巾の)男たちが現れて……?
腰を曲げた年寄りが跳ぶ!
大きなかぶが跳ぶ(抜ける)!
渋滞の車が
忍者が
跳ぶ!!
……
一度この目で見てみたかった!シゲリカツヒコさんの『なわとびょ〜ん』(KADOKAWA)原画展がムッチーズカフェで開催中。
運良く!作者のシゲリカツヒコさんにお会いすることができました。
せっかくですので、少しお話を伺わせていただきました。
「苦手なことができるように…云々以上に。飛ぶ前と飛んだ後で、なんだかよくわからないんだけど世界がガラッと変わっちゃった!というのを描きました」(シゲリカツヒコさん)
た し か に
目の前で突然大縄が回されたら…思わず跳んじゃう!その瞬間は悩みもふっ飛ぶ。忘れちゃう。
"THE 解放感✨" の絵本。
シゲリカツヒコさん、ありがとうございました。
ムッチーズカフェ(西荻窪)のパンケーキ(+アイス)も超美味でございました💗ムッチさん、まどかさん、ありがとう。
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7/20
【「もしも…」に備えた 影の立役者】
1969年7月20日
アポロ11号の月着陸を支えたマーガレット・ハミルトン。
彼女が開発し徹底的にリスクに備えたソフトがその危機を救った…という話を、私はこの絵本を読むまで知りませんでした。
大切な
「なぜ?」
「もし?」
そして
誰もが可能性を秘めていることを感じさせてくれる絵本です。
☆『月とアポロとマーガレット〜月着陸をささえたプログラマー』(ディーン・ロビンズ文/ルーシー・ナイズリー絵/鳥飼玖美子訳 評論社)
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【絵本のよいところ(を)】
人には物語が必要。
読書という行為は(それが物語の場合)
本の中で起こる様々な出来事を通して、生き方・自己と他者・命…といった現実の命題と向き合う作業になりえます。
本を読む中で想像力が育まれ、内省し、傷ついた魂が回復される…といった経験は皆さんにも心当たりがあるのではないでしょうか。
この流れで「絵本」の意味を問われることがあります。
絵本は、
☆文字だけで場面を思い描くことが難しい子ども等にイメージ(想像)の手助けをし、
☆価値観のまだ完全に構築されない子ども〜凝り固まった大人まで、広い世代に対しあたらしい視座・考える手がかり・生きるヒントを与えます。
☆読み聞かせの場でそれを(親子で/仲間と)一緒に体験し分かち合うことができます。
私はずっと物語に、とりわけこの「絵本」というメディアに魅かれているのですが、前述(☆)の視点で「絵本」のすべてを語れるのかというとそんなはずはなく、ほかにも
テーマから離れたアート(表現)としての捉え方、
保育や介護の現場で役立つツールとしての機能等々…
「絵本」には、実に様々な語るべき側面があるということを書き添えておきたいと思います。
日々のSNSでは主に、おすすめの絵本紹介を行っています。
一方で、自治体の講演や講座で講師を務める際にいただく「お題」(テーマ)は、絵本のある一面を深堀りし、テーマを身近なものとして捉えていただくことを目指しています。
(作品の紹介も行います。絵本の様々な変遷を、テーマや表現を、歴史の観点あるいはデータを紐解きながら解説するスタイルです。)
最近の自治体講演の傾向としては、社会課題である「ジェンダー」(男女共同参画)や「多様性の受容」(多文化共生)、「子育て期における絵本の活用」(子育て支援)といった内容で求められることが多くあります。
テーマへの関心を入口に、私の講演を通して一人でも多くの方に「絵本」の魅力と可能性を発見してもらえたら。
書店で絵本を手に取ってもらえたらいいなと思います。
秋には2自治体の講演が予定されております。
(今度こそ)無事開催できますようにと、今は祈るような気持ちで準備を進めております。
ガンバロゥ🎐
絵本コーディネーター東條知美