こちらの記事の続きです。
(7days bookcover challenge)
絵本「じゃない本」から、わたしの愛読書をご紹介します♫
④
🌟『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』(鴨志田穣 著/講談社文庫)
映画『毎日かあさん』を観た9年前の日、泣きすぎてパンフレットを買いそびれてしまい、代わりにこれを買って帰りました。
ジャーナリストとして数々の賞を受賞しながら、
「自分にはこの仕事向いてないな」…元戦場カメラマンのおとうちゃんが背負ってしまったもの、
アルコール病棟への繰り返し入院、
いつしかボロボロになってしまった体、
家族への思い…。
映画では「かあちゃん」の視線で描かれていたおとうちゃんの独白と懺悔が、ここにあります。
笑って泣いて、また笑って、最後には涙が止まらなくなってしまうのだけれど、いつもかすかな希望を感じさせてくれる私小説です。
(映画を観ていなくても大丈夫です)
☆☆☆☆☆☆
⑤
🌟『私の嫌いな10の人びと』(中島義道 著/新潮社)
これをここで取り上げることで、紹介者自身が疑われかねない案件。ううっ。
麻木久仁子さんも後書きで、
「もう何を言っても自分の「善人ぶり」に気づいてしまう」
「こんな自分を抱えて生きていこうと思います……。」
呻いてヨロヨロされています。
目次を読み上げますね。
プリーズ・キープ・スマイル♡
*目次
1.笑顔の絶えない人
2.常に感謝の気持ちを忘れない人
3.みんなの喜ぶ顔が見たい人
4.いつも前向きに生きている人
5.自分の仕事に「誇り」をもっている人
6.「けじめ」を大切にする人
7.喧嘩が起こるとすぐ止めようとする人
8.物事をはっきり言わない人
9.「おれ、バカだから」と言う人
10.「わが人生に悔いはない」と思っている人
……
不愉快になる前に。
哲学者の著者が嫌っているのは、「多数派の価値観を振りかざし、少数派の感受性を踏みにじる鈍感さ」。
おおいに笑い、時に膝を打ち、自分の中のエゴイズムに真正面から向き合い自嘲し、「うんにゃそれでも私は!」と奮起するための本でもあります。
(ヒヤヒヤ)
☆☆☆☆☆☆
⑥
🌟『虫眼とアニ眼』(養老孟司、宮崎駿 著/新潮社)
好物のひとつに、"専門家同士の対談"があります。
長年好きなことで生きている匠の喋り言葉には自由な響きがあり、触れる心地よさがあります。
この著名な解剖学者と世界的アニメーターによる対談も、何度読み返しても面白いです。
1997年〜2001年までに行われたものが一冊にまとめられています。
*****
養老
「ぼくは、"この世界はものすごくディテールに溢れているんだよ"という意味の象徴として、あの『トトロ』の女の子の目つきが好きなんですね。
「ぼくは、"この世界はものすごくディテールに溢れているんだよ"という意味の象徴として、あの『トトロ』の女の子の目つきが好きなんですね。
こうやってものごとを見てみりゃ、少しは見えるんだけどなあって。」
…
宮崎
「子どもの本質は悲劇性にあると思っています。つまらない大人になるために、あんなに誰もが持っていた素晴らしい可能性を失っていかざるをえない存在なんです。
「子どもの本質は悲劇性にあると思っています。つまらない大人になるために、あんなに誰もが持っていた素晴らしい可能性を失っていかざるをえない存在なんです。
それでも、子どもたちがつらさや苦しみと面と向かって生きているなら、自分たちの根も葉もない仕事も存在する理由を見出せると思うんです。」
☆☆☆☆☆☆
⑦
🌟『チャリング・クロス街84番地:書物を愛する人のための本』(へレーン・ハンフ 編著/江藤淳 訳 中央公論新社)
この度久しぶりに読み返し、人っていいな、本っていいなとしみじみ胸に抱えました。
ニューヨークに住む本好きの女性と、ロンドンのチャリング・クロス街84番地にある古書店マーク社の人々との、手紙による20年にわたる交流。
物語は戦後間もない1949年、女性の書いた一通の手紙(依頼書)から始まります。
大西洋を隔て、2つの国の時代性も色濃く映し出されるのが興味深い。
最初はごく形式的に、そのうちユーモアとウィットに富む、親愛の情にあふれた往復書簡へ……
「いまこの世でわたしのことを理解してくれるのはあなただけよ。」
便利さとひきかえに失われるもの、失いたくないものを思いながら。
書物と本屋を愛するすべてのみなさまに、心からおすすめしたい一冊です。
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(絵本コーディネーター東條知美)