以下は、『読書からはじまる』(長田弘/著 2001年 日本放送出版協会)より抜粋。

 

 

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 2000年、3000年と続いてきた本の文化の中で、あるいは本を友人とする人間の生活の中で人間が本の中に見てきたものは、21世紀の初めに立っているわたしたちが本に求めているようなものだけでは、必ずしもなかったはずです。

 

 本を通して、本に書かれていないものを想像するちから、あるいはその本によって表されているものではないものを考えるちからを、わたしたちは長い間、本から得てきたのだったからです。

 

 本という文化が長年かかって培ってきたものは、本に書かれているものを通して、そこに書かれていないものを想像させるちからです。今日、わたしたちの社会がぶつかっている問題は、書かれていないものを必要とする考え方をなくしてしまったことに起因している、そのためにとどまっているように思われるのです。

 

 

 (略)

 

 

 子どもの本の考え方を変えたいのです。

 子どもの本という概念を成立させているものが何かを突きつめて考えて、子どもの本についての、これまでのような「子どもだけが読むべき本」とするような考え方の縛りになっている先入観を崩してゆく。そうすることで、子どもの本の世界を、子どもたちと大人たちとが一緒にそこにいる想像力の場にしてゆかないと、子どもたちの世界からも、大人たちの世界からも、何か大切なものがこぼれていってしまうのではないかと怖れます。

 

 

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本を読もう。

大人も 読もう。

 

(絵本コーディネーター東條知美)