第二次世界大戦後の1949年、スイスで出版...その50年後に出された日本語版です。

 

🌟『動物会議』

(エーリヒ・ケストナー作 ヴァルター・トリアー絵 池田香代子訳 1999年 岩波書店 )

 

性懲りもなく戦争へと向かおうとする人間。
それを見ている(世界中の)動物たちは、人間社会のことと言えども、放っておけません。


「かわいそうなのは、子どもたちだよ」

 

動物たちは、<子どもたちのために!>とスローガンを掲げ、一歩も引かぬ構えで奮闘します。

 

決裂する交渉。


動物たちが人間にかけた圧力、最後の手段とは、いったい......?

 

 

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第二次世界大戦からたったの4年後、平和と共生をテーマにしたこちらの作品。

作者はドイツの作家で詩人・エーリヒ・ケストナー(1899-1974)

 

 

『エミールと探偵たち』『点子ちゃんとアントン』『飛ぶ教室』『ふたりのロッテ』などの代表作は、世界中で愛され、いずれも映像化されたりミュージカルで演じられたりしています。

 

 

       

 

 

痛烈な社会批判を、ユーモアたっぷりに、ペンで行ったケストナー。

1933年 ナチスにより執筆を禁じられます。

多くの作家が亡命する中で、2度ゲシュタボに逮捕されながらも彼はベルリンにとどまりました。

 

ナチス時代にいくつかの小説をスイスの出版社から発表しますが、1942年には出版自体を完全に禁止されてしまいます。

 

当時の政局から“好ましくない作家”とされたケストナーですが、

彼の作品には、いつも大らかなユーモアが煌めいているのが特徴です。

 

だから

読み手は(子どもも大人も)安心して、登場人物の置かれた状況に自らを重ね、笑い飛ばしながら...物語の世界を思いきり楽しむことができるのでしょう。

 

 

 

『動物会議』の中心となるのは、ライオンのアロイース、象のオスカル、キリンのレオポルトです。(途中、ミッキーマウスも登場して驚かされます!)


最後に動物の彼らが、人間に契約させたというその条約は...

 


1.国境をなくす、

2.軍隊・武器をすべてなくす(もはや戦争は存在しない)、

3.人殺しのための科学は研究しない、

4.役所と役人は最小限に減らす、

5.子どもを真の大人に育てるというのは、もっとも崇高で困難な勤務。
今後もっとも高い給料を受ける者は教師とする

 

(以上要約)

 

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ナチス支配下のドイツを生き抜いた作家の文章。

約70年を経た今、なぜかフィクションとは思えないほど.リアルに感じられてしまうのでした。

 

 

 

「会議はつかれるね」


象のオスカルは200キロもやせてしまったそうですよ。

おつかれさまでした。。。

 

 

 

絵本コーディネーター東條知美