【震災から5年】


5年前のあのとき。

激しく揺れる会議室で、頼りない長机の足を掴みながら、建て替えが予定されていた息子の小学校が倒壊しませんように・・・ただそれだけを祈っていた。


繋がらない。
けど知っている限りの同級生のお母さんやご近所に送った「息子は無事?」「私は~に居ます」。


パソコン越しの黒い濁流、流される家、車・・・・・・



「無事。ご心配なく!うちで一晩預かるね」の着信が届いたのは夜に差しかかる頃。


どれだけニュースを見ても「全然理解できない」と感じた。

そして



東北?


ライフライン壊滅で 義父母が避難?


放射能?


外出、だめ?


スーパーで食品不足?


買い溜める必要?





5年前のあの日以来、わたしはいつも「不安」を携えるようになった。


たぶん、それ以前の多くのわたし(たち)が持っていたのは「自力で備えれば」「拭うことのできる 不安」だったけど、今度のは全然違う。


力持ちの肝っ玉母ちゃんでも、楽観主義者でも、計画的でミスのないママでも、きっちり完全に拭うことができない
圧倒的な「不安」。


* * * * *


2014年の10月に出版された絵本『あかちゃんがわらうから』(おーなり由子/著 ブロンズ新社)を手にしたとき、あの日以来の「不安」を掬い上げ、解放し、形にしてくれたものがここにあると思った。



かなしいニュースを見るたびに

世界は どしゃぶりのように感じられ

未来は どこまでも

はいいろの雲で いっぱいで ─ 

どこまでも どこまでも どこまでも どこまでも ─ 





でも、

あかちゃんが教えてくれる。

おかあさんを、みんなを強くしてくれる。




うれしいこと あるよ 




不安はいまも手元にあるけれど、そんな時には この優しく淡い水彩絵具で描かれた絵本をひらく。

重い雲を吹き飛ばし、光の中をズンズン進む子どもたちの力強い足音が 私に希望を信じさせてくれる。




☆ 『あかちゃんがわらうから』(おーなり由子/著 2014年10月 ブロンズ新社)