☆【月夜の絵本会vol.6】 岡田千晶さん公開インタビュー (※6月某日)



(プロフィール)

岡田 千晶
大阪府生まれ/セツ・モードセミナー卒
「人物・風景・植物など生活の中の身近な場面をモチーフにしています。
特に子供の世界の繊細な表情を大切にしたいと思っています。
小さな仕草やふとした場面をひろい取るような気持ちで描いています。」

公式ホームページ  http://okada-chiaki.com/

 

 

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岡田千晶さんは、いま「絵本業界に必要とされている画家」のひとりです。
それは彼女の描き出す人間、とくに子どもの姿や表情が、多くの読者の支持を集めているからであり、また確かな画力と全体を構成する力が多くの編集者に信頼されているから...と聞いたことがあります。

いまも何本もお仕事を抱えていらっしゃるたいへんお忙しい中、「月夜の絵本」へいらしてくださいました。

岡田さんとは数年前、イラストレーターのお仲間とのグループ展へお伺いしたことがきっかけで知り合いました。
以来、優しく、かつ骨太な彼女の作品のファンです。

6月の夜、念願かなってインタビューさせていただくことになりました。

まずは岡田さんのお仕事の中からこちらでご用意させていただきました7冊の絵本について、出版順にお話を伺わせていただきました。


 

 

    「うさぎくんとはるちゃん」 岡田千晶/作 絵 おかだこう/作(2010.12 岩崎書店)


うさぎくんは、はるちゃんの家に一人で初めてのお泊り。

はるちゃんは色々世話をやきますが…。

二人の交流を描く心温まるお話。(出版社HPより)

 

 

 

(東條)二人の心の交流、そしてうさぎくんの成長を描いた作品。最初の絵本ということで、岡田さんにとってのデビュー作です。どういった経緯で作られたのですか?

 

 

(岡田さん)絵本はずっと作りたいと思っていましたが、なかなかその機会がありませんでした。

ある時青山のギャラリーで企画展に出展することが決まり、当時飼っていたうさぎが動いたりしゃべったりするお話を描きたいなと思って、それを絵に表しました。

「うさぎくんとはるちゃん」の中に、うさぎくんが階段を下りてくるシーンがあります。これはうちの階段です。

ギャラリーで、文字の無い絵だけの展開で何枚か描いたものを展示させていただいたところ、編集者さんの目にとまりました。そして「これに文章をつけてみてください」と言われました。

ところが文章が書けなくて・・・何カ月も悩んでいたところ、夫(おかだこう氏)が「それでは僕が書こう」と言ってくれまして(笑)

 

 

(東條)ご主人も、絵描きさんでいらっしゃるんですよね。

 

 

(岡田さん)はい。普段から職業として、壁に飾るような絵を描いています。文章を書いたのはこれが初めてなんです。あまりにも悩んでいる私を見るに見かねてです。

 

 

(東條)非常に絵本的なことばの選び方をされています。ご主人は文章もお得意でいらっしゃったのですね。

 

 

(岡田さん)そんなことないです。家にあった松井直さんの絵本論の本を読んで、「絵本とは?」というところをかなり勉強してもらいました(笑)

 

 

(東條)絵本の文章というものを相当意識して取り組まれたのですね。納得しました。

この作品の内容は、どういった発想から生まれたものですか?

 

 

(岡田さん)

私自身の子どもの頃の経験がベースになっています。

母が体の弱い方だったので、何度か親戚の家に預けられることがありました。私はすごく○○な子どもで、夜全然眠れないということがありました。そのことを、うさぎくんを主人公にして書きたいと思ったんです。

 

 

(東條)最初の作品は作家さんにとって特別な意味を持つものだと思います。岡田さんの最初の作品には、岡田さん自身の子ども時代が投影されているのですね。

 

 

 

 

 

    「ぽっつんとととはあめのおと」戸田和代/作 岡田千晶/絵(2012.7 PHP研究所)



「ぽっつん ととと……」と、雨が降っています。でも、あーちゃんは雨が大嫌い。

すねていたら、外でへんな声がきこえました。「ぽっつん とととは あめの おと……、けほっ」

(出版社HPより)

 

 

 

(東條)美しい色彩色鉛筆で描かれた、いまの季節にぴったりな絵本ですね。雨の中ぬいぐるみも、飼っている猫ちゃんもしゃべって動き出すファンタジー。

ラスト近くで雨が上がり、光がぱあっと差し込む場面で〈現実〉への転換が行われる予感があります。

「光を描く画家」岡田千晶さんならではの転換場面ですね。

一方で「いま子どもを描かせるなら岡田千晶」との声が出版界でささやかれるほど、岡田さんの描く子どもの姿は表情、動きがたいへん魅力的です。怒ったり、すねたり、不安げだったり、笑ったりこの作品に出てくる女の子も様々な表情で読者を惹きつけます。

 

 

(岡田さん)自分自身の子育ての経験から、次第に「子どもを描きたいな」と思うようになりました。

それまでも人間を描くのは好きだったんですけど、そういうふうに思ったことはなかったですね。

 

 

(東條)実は少し前にこちらの「ぽっつんとととはあめのおと」作者である戸田和代さんにお会いする機会がありました。

岡田さんとのお仕事についてお話を伺ったところ、「かえるの家のパーティーの場面で、自然の中でこんなに楽しそうな、美味しそうな豊かな場面に仕上げていただいたことにビックリした」「作者である自分の想像を超えた絵に、新鮮な驚きがあった」とたいへん喜んでいらっしゃいました。

 

 

(岡田さん)ありがとうございます。実はこの作品を作っている間、戸田和代さんとは一度もお会いしていないんです。編集者さんを通してのやり取りでした。だから今、初めて感想をうかがいました。嬉しいです。

 

 

 

 

    「もうすぐもうすぐ」 岡田千晶+おかだこう(2012.11 教育画劇)



子ウサギ・ブブはこの冬産まれたばかり。「もうすぐごちそうが食べられるよ」「もうすぐあったかくなるよ」って、

一体何がもうすぐなの?

ある朝ブブは家を抜け出して白クマに会いました。もしかしておじさんが?春を待つ動物達の優しいお話。

(出版社HPより)

 

 

 

(東條)春のような優しさと包容力をたずさえた「大きなクマ」と、「きょうだいのなかでいちばんちいさい主人公ブブ」のひとときの交流が描かれています。くる春と、ゆくクマ、というのは物語の季節を象徴する上で面白い対象ですね。

 

 

(岡田さん)もともと絵本にするつもりのないところ(グループ展)で、「白クマと小さい白うさぎが雪の中で向かい合っている」という絵を展示したんです。それを編集者さんが見てくださって「大きさの対比が面白い」と絵本にすることを勧めてくださいました。それからストーリーボードを何度も何度も描いて、ようやく絵本作品になったものです。

 

 

(東條)この「編集者さんの目にとまって」というのは先ほども出てきましたが、展示というのはやはり、絵本作家を目指す人はやっておいた方がいいということでしょうか?

 

 

(岡田さん)出会いの場になると思います。私も絵本を描くようになってからはとくに、一枚絵を描くときにもストーリーを設定し、絵本の創作に繋がるような作品を描くようになりました。

一枚の絵からまずはこの一枚を描いて、そこからどんどんお話を広げていくやりかたで絵本を作っています。

 

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