去る11/28(金)東京都荒川区立第一日暮里小学校で行われた、
「自らの考えを深め、確かで豊かに表現できる児童の育成~学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を通して~」
を研究主題とした授業研究発表会にお招きいただきました。
公開授業後の研究発表会では来賓として、児童の皆さんによる詩の群唱や校歌斉唱もきかせていただきました。
先輩である詩人・高村光太郎の詩を、大勢が声をあわせて元気に詠う姿はとても誇らしげで生命力にあふれていていました。
詩の素晴らしさと、一所懸命な子どもたち。
思わずグッとこみ上げてくるものがありました。
さてこちらの研究会のトリとして
絵本作家のなかえよしをさんと共に、講演の場を務めさせていただきました。
(今回の私の役割は主として進行&聞き手)
小中学校の先生、教育委員会のみなさま、学校図書館学会関係者、学校司書さん、図書館ボランティアの保護者のみなさま、大学生のみなさまなど総勢300名の方々。
共通するのは、「子どもたちのために」というキーワード。
授業で活用することも多く、児童に近しい、けれども多くの大人にはどこか遠い存在の読み物である「絵本」のお話を・・・とのことで、
講演タイトルは『絵本のちから』とさせていただきました。
(体育館には「なかえよしをさん作品コーナーが。ありがとうございます!)
こうした講演会はこれまでに何度も務めてこられたなかえよしをさんですが、(壇上から)スーツでいらしている多くの方々を見渡し、最初にその印象をひとこと。
「黒い、ですねえ・・・まっくろ」。
会場を和ませました。(*^_^*)
最初に私の方から、会場の皆さまへ質問を投げさせていただきました。
「(今日を除く)この一週間以内に、〈絵本〉を手にとって読んだ・見たという方は、どのくらいいらっしゃいますか?」
すると約7~8割の来場者の手が挙がりました。
ホッとしながら、絵本のお話を進めさせていただきました。
「なかえ先生は、40年という長きに渡り〈絵本の作り手〉として第一線でお仕事をされてこられました。
先生の作品の他にも、毎年本当に数多くの絵本が新刊として出版されます。
現在は、その性質も様々。ジャンルも多岐に渡ります。
その中でなかえ作品からは、いつもなにかしらの〈テーマ〉をとらえることができます。
子どもたちにとって、絵本にとって、〈テーマ〉というのは必要なものなのでしょうか?」(東條)
なかえよしをさんは、
「人が生きていく上で必要なことを、毎回のテーマとして作品の中にこめて作っている」とされた上で『星の王子さま』(サン=テグジュペリ 著)を引き合いにされ、物語のいくつかの場面を取り上げながらこんなお話をしてくださいました。
(以下概略となります)
(なかえ氏)「『星の王子さま』の作者サン=テグジュペリ。
重要な〈テーマ〉そのものをここまで直接的に、繰り返し書かれている作品は多くない。
大人というものを信用しない人物だったように思える。
物語の前書きにはこう書かれている・・・
☆「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)」
(王子さまが「うわばみに呑みこまれたゾウ」の絵をえらい大人たちに見せた時のシーン、また「ヒツジの絵」をねだる王子さまに「ぼく」が四角い箱の絵を描いてやったシーンを取り上げて)
☆「多くの大人は、目で見えるものでしか判断しなくなってしまう。(こんな風に)目で見えないものは、見ようとしなくなってしまう。」
☆「子どものころに見えた世界が、大人になると失われてしまう。」
☆「(しかし)ほんとうに大切なものは、目には見えない。大切なものは心で見なければならない。」
☆「絵本では、登場人物の気持ちを全て説明したり書いたりしない。
そこにある心を、(絵や文章から)想像するための力が必要となる。
想像力が重要。」
☆「想像力は、思いやりの心となる」
また、「『星とたんぽぽ』(金子みすゞ(詩)矢崎節夫(選)上野紀子(絵)なかえよしを(デザイン) 1985年 JULA出版局)から
「見えないものを見ていた」みすゞの世界…童謡をひとつご紹介くださいました。
「大漁」
朝焼小焼だ
大漁だ
大羽鰮(いわし)の
大漁だ。
浜はまつりの
ようだけど
海のなかでは
何萬(まん)の
鰮のとむらい
するだろう。
(金子みすゞ)
・・・・・・・
約300名の大人の皆さまに向け、
〈目に見えない大切なもの(心)〉を語られたなかえよしをさん。
約30分という短時間ではお話し足りないことはたくさんあったと思われますが、
「絵本の持つちから」について、その思いは、皆さまの胸にあたたかく刻まれたのではないでしょうか。
なかえよしをさん、ありがとうございました。
・・・・・・(つづく)