11/28、東京都荒川区立第一日暮里小学校で行われた研究発表会にお招きいただきました。

 

 

 

 


こちらの小学校は、日本学校図書館学会の研究推進校。
平成18年度より「学校図書館の利活用」「言語活動の充実」をキーワードに、学校を挙げて研究に取り組んでいらっしゃいます。
〈調べ学習〉は、なんと1年生時から行われています。

(★以前の訪問レポートはこちら

この取り組みを始めた初年度の児童一人当たりの年間貸し出し数は約26冊。

それが現在は、一人あたり約137冊(年間)とのことです。


【学校全体が図書館】というなんとも素敵なコンセプトのもと、子どもの読書欲をかきたてるような仕掛けが校舎中に張りめぐらされています。

 

 

 


 

 ゲストの絵本作家なかえよしを氏にちなんで、この図書展示コーナーには『ねずみくんのチョッキ』シリーズが紹介されていました。

各フロアで廊下のちょっとしたスペースが、普段からワクワクする本のコーナーになっています。

 

 

 

各教室の入り口には、そのときの学習単元にちなんだ図書館関連本が置かれています。(写真は6月訪問時)

 

 

 

玄関を入ってすぐのスペースは〈すわの小径〉と名付けられています。

先生たちのお薦め本を、先生ご自身によるポップと共に展示。

ボランティアさんによる手作り神話紙芝居なども。


この日配られた「平成26年度 学校図書館概要」にある全体計画、

 

空間・人的環境に関する取り組みが、

 

 


先生・司書・保護者・事務職員という学校に関わるすべての大人たちが、ねらいを共有のもとに成し遂げていることを、各所で実感することができます。


さて、研究授業はすべての学年で行われました。

私は今回
『先輩 高村光太郎に学ぶ』と題した6年生の総合学習の授業と、

 

 

(毎年この学校で6年生は「高村光太郎」を徹底的に調べレポートにまとめます。
第一日暮里小学校は詩人 高村光太郎の母校。
光太郎の「正直 親切」という言葉が校訓となっていて、尊敬の対象となっています。)


『新美南吉の世界へ』をテーマとした4年生の国語の授業を見学させていただきました。

 

 

この授業では、『ごんぎつね』、『手袋を買いに』から、「場面による登場人物の心情の変化」を読み発表し合うという(子どもたちによる班ごとの)読書会が行われました。


「帽子屋に出会って、こぎつねからは、不安が消えたと思う」

「人間のお母さんが歌うのを聞いて、こわくないと思ったはず」



人間はほんとうにいいものかしら?というお母さんぎつねの言葉に)
「親ぎつねと子ぎつねは経験が違うから・・・お母さんは、前にすごく苦い経験をしているから。」

「人間はこのままでいいのかな?と(僕も)思った。」

「私は「いい人」になりたい。」


(『てぶくろを買いに』を読んで、子どもたちの感想)


図書館資料として複数の「絵本」を副教材に用いて表現の違いを紹介する場面、
担当教諭による絵本画家・黒井健氏への質問と、それに対する黒井氏からの回答を読み上げる場面もあり、子どもたちの目がいっそう輝く姿を見ることができました。

 

 

 

『ごんぎつね』で、黒井健氏が「兵十」(登場人物)の顔を描かなかった理由は・・・

「読み手の皆さんに想像してほしかったから」。
理由をズバリ当ててしまうお子さんもいました。

すごい!

児童のみなさんにとっては、読解力の向上に加え、
「表現」、「作家(画家)という職業」、「創作」という未知の世界に触れる貴重な体験となり得たのではないでしょうか。
独創性にあふれた素晴らしい授業でたいへん面白く感じました。

学校図書館の資料としての「絵本」の可能性を感じることができた一幕でした。

 

(続く)