東條:ではこのあたりで、会場の皆さんからも「江頭さんにぜひ聞いてみたい」ということがありましたら、ぜひどうぞ。
せっかくの機会ですので。

 

 

参加者Aさん:絵のことを伺います。

江頭さんの絵はとても鮮やかで明るい色調ですが、パレットにはどんな色を出して描かれるんですか?

 

 

江頭さん:色、明るいですか?本人はそこまで意識していないのですが・・・派手好きなのかもしれませんね()

色の組み合わせには三原色を使う傾向があります。それが「児童書っぽい色づかいだ」とよく言われます。明るい色調ということですよね。

以前は文芸誌の仕事をやりたいとばかり思っていたのですが、子どもを産むという経験や子育ての中で、子どもの本に関する興味も大きくなっていきました。

無いものねだりをするよりも、「望まれる仕事をしよう」「向いている仕事をしよう」と思うようになりました。

 

 (㊤これまでに江頭さんが装画・挿絵を担当した児童文学作品(一部))





東條:世の中に「絵本作家になりたい」という人はたくさんいると思うのですが、その人たちはまず何をしたらよいのか。
江頭さんの思うことをお話しいただけますか?

 

 


江頭さん:いろんなジャンルに触れることが大切だと思います。

私は以前、好きな酒井駒子さんの作品(絵本)ばかり手に取っていましたが、娘が生まれてからはいろいろな作家のいろいろな作品を買うようになりました。

好みに偏らず、いろんなジャンルのものに触れて、読んで・・・というのが良いような気がします。

 

 


東條:2歳の娘さんは、ママの絵本が大好きですか?

ほかの絵本も含め、(お母さんの立場での)読み聞かせはまめにされていますか?

 

 


江頭さん:ラフを描いているときからずっと傍らに居るので、「ママの仕事に関係している」と感じる作品は「もう嫌~!」と思ってしまうかもしれませんね()

『はこちゃん』については、今日初めて(娘の前で)読んでもらいました。内容はまだピンとこないかもしれませんが、じっと見て聞いていましたね。

 


 

参加者Bさん:長年、製本所を営む立場の者からの質問です。

『あめふりさんぽ』の絵本のサイズはどうやって決めたのですか?

 

 




江頭さん:まず、この絵本を使う人はどんな人かなあと考えました。

小さなお子さんが多いと思ったので、1歳半くらいの子どもが自分でもパラパラとめくれる福音館書店の幼児絵本シリーズの大きさがちょうどいいと思い、「そのくらいのサイズで」とリクエストしました。


(※『あめふりさんぽ』のサイズは21㎝×21㎝。)

 

 



参加者Bさん:そのサイズだと、実は製本の現場でも作りやすいので助かります。

作る際に手間がかかってしまうのは、「横本」と呼んでいる横長のサイズの本です。

これに比べると「縦本」、つまり縦長の方が断然に製本しやすいんです。正方形も大丈夫です。

作品のサイズは作家さんが決められることが多いので、どうやって決めたのかな?と気になりました。

 

 



東條:私からも質問です。

絵の見開き2ページ分を描くのに、だいたいどのくらいのお時間がかかりますか?

また、今後やってみたいお仕事はありますか?

 

 


江頭さん:私の場合、前段階であるラフやダミー制作のほうにかなりの時間をかけます。

ラフがきちんとできていればですが、見開きを…2時間くらいあれば描けることが多いです。

今後はそうですね、『あめふりさんぽ』の続編を作ることができたら嬉しいです。

 

   

(㊤今回江頭さんに見せていただいた貴重な制作ノート。写真だとわかりにくいのですが、各シーンのディテールが実に詳しく説明されています。)




 

東條:江頭さん、今日は貴重なお話をたくさんお聞かせくださいまして、ありがとうございます!

途中お話を伺わせていただきましたかんのゆうこさん、ご参加くださいました皆さま、本当にありがとうございました。


〈月夜の絵本会〉ということで、今回は江頭路子さんの絵本の仕事のお話を中心に伺わせていただきました。

最後に、江頭さんが手掛けられたもう一冊の絵本『おかぁさん』(もっち/文 江頭路子/絵 2011年 ナツメ社)を、私の方で読ませていただきます。

 

(東條による、絵本『おかぁさん』の朗読)







『おかぁさん』 内容紹介(※ナツメ社HPより)

抱っこをしてもおっぱいをあげても泣きやまない赤ちゃん、慣れない育児に新米お母さんは途方にくれてしまいます。そんなお母さんを元気づけ、赤ちゃんへの愛情を再認識できる詩を、絵本仕立てにした一冊です。」



(会場 拍手)

 


公開インタビュー終了。
この後は和やかな雰囲気のまま、懇親会へと移らせていただきました。

この日ゲストの江頭路子さんから、特製ピンバッヂとポストカードのお土産をいただきました。
(皆さん大感激!ありがとうございます。)




さらに参加者のお一人である多田製本の多田社長からは、特製ノートセットのプレゼントをいただきました。
(「可愛いすぎて使えない!」の声があがりました。ありがとうございます。)


ROCKET CAFÉ
さんの美味しいお料理に心も会話もはずむひととき。
店主の岸山さん、ありがとうございました!





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〈あとがき〉

初めて江頭路子さんとお会いしたのはこの春、東京の青山で催されたある絵本作家さんの個展会場でのことでした。

会場に入ってこられた江頭さんは、この時も可愛らしい娘さんと一緒でした。この娘さんを一目見た私は、「どこかで見たことのある女の子だ」と、以前作家のかんのゆうこさんのインタビューの中で取り上げさせていただいた絵本『はこちゃん』をふいに思い出したのです。

思いきってお声かけしてみたところ、はたして画家の江頭さんでした。

聞けば江頭さんも、わたしのブログをご覧になってくださったと知り・・・嬉しくなってしまった私は思わず「ぜひ今度インタビューさせてください!」と即効アタック。

この度の〈月夜の絵本会〉へゲスト出演していただける運びとなりました。

 

作品に感じていたやわらかさ、透明感あふれる雰囲気は、画家である江頭さん自身からにじみ出てくるものであるということが、この場にいたるまでの様々なやり取り、そして当日のお話の中から実感することができました。

やはり、「作品は体を現す」ですね。

子どもたちも私も、〝なつかしくて新しい“江頭さんの絵が好きです。

観ていると、ふわっとあたたかい日差しに包まれたような気持ちになれる江頭路子さんの絵本。

これからもご活躍を楽しみにしております。

そしてまたご一緒できる日を願っております。

心より感謝をこめて。

 ㊤イベント開始前。人みしりだというお嬢さんの気を惹こうと(東條が)持参した妖怪しかけ絵本に、「ギョッ!」と反応の一幕。。。(ゴメンナサイ)



絵本コーディネーター 東條知美