東條:さて、ここで先程からお話の中に何度も出てきている絵本『はこちゃん』の紹介をさせていただきます。

今日、こちらの作品を作者のおふたりとご来場の皆さまの前でお読みいただくのは、都内の小学校図書館で司書を務める相澤さんです。

普段は小学生の子どもたちを前に「読み聞かせ」をされている相澤さん。大人に読むのは初めての経験だそうです。では、よろしくお願いします。


(小学校図書館で司書を務める相澤さんによる、絵本『はこちゃん』の朗読。すばらしかったです!)


 

『はこちゃん』内容紹介(※講談社HPより)

「名前は、わたしだけのたからもの
ひとりひとりの名前には、親が子どもの幸せを願う気持ちが込められています。
名前のゆらいを通して、親子の絆を感じる絵本。

お友達のみくちゃんの「未来」っていう名前は、明るい未来が来るように。かのんちゃんの「花音」は、きれいな音をイメージした名前。わたし、「葉子」は……? 自分の名前を「葉っぱの子」とからかわれたはこちゃんは、一人きりで泣いていましたが……。
だれもが大切に思っている“名前”をテーマに、女の子のゆれる心と、名前に込められた愛情を描いた、みずみずしいお話。名前を通して、親子の絆にあらためて気づかされる、そんな絵本です。」

 


(会場 拍手)

 

 


東條:相澤さん、ありがとうございました。

さて、絵本『はこちゃん』について、作家のかんのゆうこさんにも少しお伺いしたいと思います。

〝女の子の揺れる心“、〝名前にこめられた愛情”、〝親子の絆“が文章と絵でしっかりと表現された、とてもあたたかい作品ですね。

こちらの作品については、ノンフィクション作家の柳田邦男さん近頃では絵本に関する活動と著作でも知られる人物ですが、この方が連載をもつ医療雑誌『看護管理』(20144月号)の[おとなが読む絵本 ケアする人 ケアされる人のために]の中で、「自己否定が自己肯定に変わる瞬間」というタイトルで『はこちゃん』を紹介しています。



(絵本『はこちゃん』より。名前の由来を知り、自分の名前が大好きになった「葉子」の顔がぱっと輝くシーン。)



東條:こんな風に、ご自身の創られた作品が様々なところで様々に解釈されるということ、そしてメディアなどで取り上げられることについては、どうお思いになられますか?

 

 


かんのゆうこさん:柳田邦男さんに取り上げていただけて、本当に光栄に思います。

作品については本当に様々な感想をいただきます。中には、それが作者である自分が意図したこととは違うこともあるのですが、そういったものも含めて意外に思ったり楽しかったり・・・・ありがたいことだなあと思います。

作者として生み出したものではありますが、私は基本的に、いったん自分の手を離れたものについてはどう思われてもよいと考えています。

 

 


東條:『はこちゃん』は、かんのさんが最初に文章を書かれて・・・このとき初めて組まれた画家の江頭路子さんに対して、特別な注文をされたりということはあったのでしょうか?

 

 


かんのゆうこさん:私の場合、作品テーマに合う画家さんを探して、組むことができると決まった時点で、もうその画家さんに「おまかせ」することにしています。

江頭さんもそうですが、画家の皆さんからは、私が当初抱いていたイメージを遥かに超えたものが返ってくるんです。

例えば『はこちゃん』では、この表紙女の子の横顔のアップの絵が採用されましたが、実をいうと絵本・児童書の業界では、ふつう表紙に横向きの顔を使うのは異例のことなんです。

(江頭さんには)正面を向いた女の子の絵も描いてもらいましたが、作中のワンシーンとして描かれたこの横顔があまりにも印象深いので、「これを表紙に使わなくてはもったいない!」ということになりました。


 

(左:『はこちゃん』で実際に表紙に採用された「横顔の女の子」の絵  右:江頭さんが描いたもう一枚。正面を向いた女の子の絵。)



かんのゆうこさん:女の子の横顔、本当にいいですよねえ。

 

 



東條:かんのゆうこさん、貴重なお話をいただきありがとうございました!

 

さて、戻りまして江頭さんに伺います。

子育てしながらのお仕事。たいへんお忙しい毎日かと思われますが、いつもどんな風にお過ごしなのでしょうか?どのような時間帯に描いていらっしゃいますか?

 

 




江頭さん:絵に多くの時間をとれないのが、今の実情です。

仕事が立て込んでしまってあまりにも忙しい時には、実家に行きます。すると最大で5時間くらいは描く時間を確保できます。

でも普段は、娘がお昼寝をしている12時間の間にメール返信、夜寝かしつけた後や、早朝起きてからの12時間程度
だいたい一日3時間程度が絵にかけられる時間となります。

 

 


東條:お子さんのスケッチをしたり、絵日記を書かれたりされますか?同じようなお母さん作家さんたちの中には、絵日記を書いている人がけっこういらっしゃいますね。

 


 

江頭さん:絵日記ですか・・・私もちょっとつけてみようかな。



(④へ続く)