江頭さん:『はこちゃん』では、小学1年生くらいの女の子ってどんなだろう?と思い、当時からよくテレビで見ていた人気子役の芦田愛菜ちゃんを参考にしたりしました。その割にあまり似ていないのですが()



  表紙画像

 (『はこちゃん』(かんのゆうこ文/江頭路子/絵 2013年講談社)

 


東條:『はこちゃん』については、会場に文章を担当された作家のかんのゆうこさんがお見えになっています。作家さんと絵描きさんに、そろってお出でいただきました。ありがとうございます。


(会場 拍手)


(写真左:かんのゆうこさん 右:江頭路子さんと娘さん)


東條:こちらの共作について、後ほどゆっくりとお話を伺わせてください。

 

まず『あめふりさんぽ』(2014年5月)が出版されるまでのお話を、聞かせていただけますか。



江頭さん:きっかけは、昨年『はこちゃん』(2014年4月)の絵を描かせてもらったことでした。
その後、この時の編集担当の方から「お話も書いてみませんか?」と言われて・・・


最初は「お話なんてムリムリ!」と思っていたのですが、
私が昔描いたカタツムリに傘をさし出している女の子の絵を持ってきてくださり、「この絵からお話をひろげていくのはどうですか?」と提案があって(※㊦画像)・・・3ヶ月後にはラフを書いて見てもらっていました。

そこからいろいろと(描くシーンに)変更があったり加えたりという作業を経て、この5月に無事『あめふりさんぽ』を出版することができました。



(自作絵本のうまれるきっかけとなったという、かつて描いた「カタツムリに傘をさし出している女の子」の絵)



(絵本『あめふりさんぽ』のワンシーン)




東條:この『あめふりさんぽ』も『はこちゃん』も、江頭さんの描く作品からは、水彩絵の具のよさをたっぷりと感じられます。
やさしさと透明感にあふれた世界、それが文章と共に、読む者の心にすうっと優しくしみこんできます。

 

木々、葉っぱ、あじさいの花、雨、空、光・・・自然のモチーフが本当に美しく描かれいてますが、江頭さんご自身は九州の、自然の中でお育ちになったのでしょうか?

 

 

江頭さん:そうでもないです。どちらかというと街場の子、といったかんじでした。でもそういう風に思っていただけるのは嬉しいです。



(『あめふりさんぽ』と『はこちゃん』)



(会場では、参加者の皆さんが、江頭さんの「制作ノート」や「ラフ画」と実際の絵本を手にとって見比べながらインタビューに耳を傾けていらっしゃいました。)




東條:江頭さんのお仕事では、絵本やそれ以外のイラストレーションのお仕事の場面でも、水彩絵具を多用されているようにお見受けします。画材についてのこだわりはありますか?

 

 

江頭さん:画材は特にこれ!と決めていたわけではなく、よいと思ったら取り入れるようにしていますが、結局水彩絵具を使っていますね。

 

 

東條:先ほど(昔は)webデザイナーに憧れていたというお話がありましたが、そういったデジタル的なものと対極にあるような画材、水彩絵具に至ったのはどうしてかなと思いまして。

 

 

江頭さん:やはり水彩は、小学生の頃から馴染みがあって使い慣れている画材だから、ということだと思います。油絵具にも挑戦したことはありますが、私の場合、絵具を水で薄め過ぎてしまう悪いクセがあってダメです()

・・・そういえば、実家には昔からいわさきちひろさんの絵が飾ってあるんです。

だから、「絵といえばこういうもの(=水彩絵具で描かれたもの)」という風に思っていたところがあります。
かなり影響を受けているような気がしますね。


画材については、具体的には主にホルベイン(水彩絵具)を用いています。シュミンケ(水彩絵具)を使うこともあります。

 

 

東條:絵について。

絵本・児童書・各種本の装画のどれを見ても、誰もが胸に抱く〝なつかしさ“と〝今っぽさ”が同居している印象を抱きます。

どの絵を見ても不思議とすごくなつかしいのだけれど、そこには確実に「現代・・人」が描かれているんですね。

2012年に「いつか みた けしき」と題した個展を行われていますが、当時からなにか意識していることはおありですか?


(個展「いつかみたけしき」(@ ギャラリーハウスMAYA)の際に描かれた絵)

 

 

江頭さん:個展「いつか みた けしき」では、書籍や雑誌などのために描いた作品を展示しました。女子高生の頃などを思い出しながら描いた絵が多かったかな。

〝なつかしい感じ“というのはよく言ってもらえます。理由はよくわからないけれど・・・。

もともとは文芸誌の装画家に憧れていて、それをやるとしたらかつての自分・・・女子高生の世界を描くような「青春もの」が向いていると思ったんです。

 

 

東條:なるほど。〝なつかしさと今っぽさの同居、その魅力“などというのは観る者が勝手に思うことなのかもしれません。
私にとってはそこが、江頭作品の魅力のひとつです。


(③へ続く)