◆〈子どもの姿形・子どもの心〉

こみねゆらさん:そういえばかつてフランスに留学した際に、どうしてもファージョンが読みたくなって本屋さんや図書館を探したけれどどこにもみつからなかったんですね。

ある本屋さんに尋ねてみたら「ファージョン?(知らないが)フランスでは翻訳されていないよ」と言われがっかり…その時の気持ちを今、ちょっと思い出しました。

 

それとはちょっと違う話になるのですが、先日のフランス滞在であらためて感じたことがあって。

フランスの小さな子どもたちって、顔がほんとうにびっくりするほど可愛らしいんですよ。まるでジュモーのお人形みたいに。

多くの親たち大人たちが「この一瞬のかわいらしい姿を今のまま永遠に残したい」と強く願ったからフランスで人形の文化が早くから根付いたのかなあと、なんだか納得してしまいました。

イギリスの子どもたちももちろん可愛らしいけれど、イギリスは大人が本気で物語を必要とし、本気で書いている印象があります。

昔からイギリスでは〈子どもの姿形〉より〈子どもの心〉を、断然大切なものと見なしていたのかしら。


 

 (写真:こみねゆらさんによる手作りのお人形たち)





◆「絵本を通して考え、絵本を通して生きる」

東條:私はこれまで様々なモノを読みながら生きてきたし、これからもずっと読みながら生きて行くと思うのですが、こみねさんは創り手として、いかがですか?

 

 

こみねゆらさん:私も同じです。

読みながらそして「今日を(明日を)生きてくために創り続ける」という風に思っています。

 

なにしろひとりきりの作業ですから、その世界に籠る机の前にずっと座っている時間がすごく長い人生なんです。

他者との関わりのから何かを吸収する、ということがよそ様に比べると欠落しているの()

 

絵本を通して考え、絵本を通して生きているだけなんです。

今日を少しでも元気に生きていくために。

 

 

東條:こみねさんの作品が、読み手の頭でなく、直接心に響いてくる理由が少しだけわかったような気がします。理屈で描いていないということですね。

 

 

 

◆他の作家さんとの共作

東條:他の作家さんが(文章を)書かれた作品に絵をつけるお仕事について、伺います。

文章を読んだら、いつもパッと場面が浮かんでくるものですか?

 

 

こみねゆらさん:いつもそうだといいんですけど、実際は場合によります!

すごく好きな文章でも、なかなか絵として浮かんでこない苦しい作業になる時もあれば、それこそパッと浮かんでくる時もある。

いつも(絵の仕事の)お話をいただくと、すごく嬉しくて興奮して「やります!」とやる気満々で答えるのだけれど、作業に取り掛かる度に「無理だったかもしれない」と落ち込んでみたり。

だから、納得いくものが出来上がるとホッとします。


(④へ続く)