こみねゆらさんインタビュー①

 

【プロフィール】

 

こみねゆら

 

熊本県生まれ。東京芸術大学絵画科、同大学院で油画を専攻。

1985年にフランス政府留学生として渡仏、パリボザールに通う。

1992年、初めての絵本「Les deux Soeurs」を出版。1994年に帰国後、

絵本、挿し絵、人形等の制作を続けている。「さくら子のたんじょう日」で第10回、

「ともだちできたよ」で第18回日本絵本賞受賞。主な絵本に「しらゆきひめ」

「トリッポンとおばけ」「しいちゃんふうちゃんほしのよる」「にんぎょうげきだん」

「ミシンのうた」など多数。


☆こみねゆら 公式ブログ


 

 

2014221日~226日 東京・吉祥寺のトムズボックス+ギャラリーにて、こみねゆらさんの最新作『ミシンのうた』(20132月 講談社刊)原画展が行われました。

 

普段熊本にお住まいになりながら創作活動をされるこみねゆらさん。

以前からこみねさんの作品に惹かれていた私は、直接お話を伺えるチャンス!とばかり、インタビューのお願いをさせていただきました。

会期中は展示会場となるトムズボックスさんに在廊とのことでしたので、在廊前の時間を少し頂戴し、駅近くの喫茶店でお話を伺いました。

改まってお話を伺うのはこの日が初めてということで、まずは自己紹介から始めさせていただきました。
(東條が)大正期の児童文学作家・小川未明
と同郷の出身であり、未明は高校の先輩にあたるという話から・・・

 

 

◆いま読んでいるのは、小川未明

こみねさん:いまちょうど、小川未明作品を電子書籍で読んでいます。

これまであまり読むことがなかったのですが、読んでみたらすごく好きで。

朽木祥さんからプレゼントしていただいたキンドルで。

先日までフランスに旅行していたのですが、毎晩ひとつ読み終えると次、また次の作品といったふうに…とにかく小川未明のお話をどんどん読みたくなってしまって。

昔から児童文学作品を読むことは好きですが、イギリス児童文学から入ったので、実は日本の作品はあまり知らなかったんです。

フランスでの留学期間を終えて日本に帰ってきてからようやく少しずつ読み始めたくらいなので、(日本の児童文学を読み始めたのは)遅いんですよ、私()

 

 

東條:私は「哀しくも美しい」という(小川未明の)独特な世界観に昔から惹かれるところがありまして。

以前からこみねさんの作品にも感じていた部分ではあるのですが、今回の新作『ミシンのうた』(2013年2月講談社刊)には特にそれを感じました。



それで、こみねさんの過去のインタビュー記事を読み返し、どこかで未明について語っているのでは?と探してみたりしたのですが、どこにも無くて…。

 

 

こみねゆらさん:だって、未明を読み始めたのはここ数週間ですもの!

 

 

東條:(他のインタビューで「好きな作家」として名前の挙がっていた)イギリス児童文学作家のエリナー・ファージョンと共に小川未明も読んでこられたのでは?とか、冷たい土地で哀しみの原体験をお持ちなのかもしれない…とか、勝手に妄想してしまいました()

 

 

こみねゆらさん:小さな頃は『幸せな王子』(ワイルド)や『雪の女王』(アンデルセン)を好んで読みました。

ですからああいう(ちょっとかなしい)お話は昔から好きなんですね、今思うと。

 

 

 

◆『ミシンのうた』のこと

東條:こみねさんの絵本が語られるとき、例えば書店のPOPや若い女性の感想に「可愛い」「優しい」というものが多いという印象があります。

たしかにそれは間違ってはいないのだけれど、私はこみねさんの作品を読み込むうちに、「あれ?それだけじゃないぞ」と思うようになりました。

「優しく可愛らしい」けれども「儚くてこわい」と。

それでですね、「儚くこわい」の方に焦点を合わせた時に、これ(インタビュー)は恐れ多いことかもしれない、作品の奥に何を潜ませているのか計り知れないと思うようになりまして、今たいへん緊張しているわけなんです。

 

 

こみねさん:わあ、嬉しいです。「儚い」ですか?

 

 

東條:『ミシンのうた』では、主人公の女の子が「ここにいるのに、ここにいない」という存在に感じられました。手で触れたら、ふっと消えてしまいそうな儚さ。

 

 

こみねさん:このお話は、

実際に(私が)20世紀初頭のドイツ製ミシンを買って縫い始めていたら、

それが止まらなくなってしまったんですね。

(『ミシンのうた』表紙見返しにある写真は、実際にこみねさんが愛用されているミシン。)

 

それで、当初このお話は「止まらないミシンに出会ってしまった女の子のお話」にしようと思っていたんです。

(洋裁の)お店の奥にずっと籠っていて、差し出される布をパッと取ってはひたすら縫い続ける少女、というイメージ。

 

でも私自身がミシンを回し続けながら、だんだんと「外に出ていけるお洋服を縫う事ができたらなあ」と思うようになって。

だからこのお話の主人公の女の子も、「明るい気持ちで外に飛び出していけるようなお洋服を作る」設定にしようかなと。

 

 

東條:実は私の10歳の息子が『ミシンのうた』を読んで、「このお話はちょっと怖くてでも明るいお話だねえ」と。

そんな風に、ひとことでは片付けられない感じ、様々な印象を与え、感情を揺さぶる点が興味深く感じられました。

 

 (②へ続く)