☆『はりねずみのルーチカ』(かんのゆうこ文/北見葉胡絵/2013年講談社)

http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1957430


☆『はりねずみのルーチカ~カギのおとしもの~』(かんのゆうこ文/北見葉胡絵/2013年講談社)

http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1957473


可愛らしくてちょっと不思議な「フェリエの国」。

「そこは、フェリエの国があることをしんじるひとにだけみえる、ひみつの場所なのです。⋯そこにはたくさんのふしぎないきものたちがすんでいます。」
(『はりねずみのルーチカ』まえがきより)

 

(※今回「すべての見開き場面に装画を描いてくれた」画家の北見葉胡さんから贈られた原画の一枚。緻密に描きこまれた鉛筆画が、物語のやさしい世界観を感じさせます。)



【作品のモチーフを傍らに制作】

かんのさん:もともとぬいぐるみを集めて眺めるのが好きで、これはドイツのシュタイフ社製のアンティークものですが・・・ほら、こういうのとか、こういうの。

(※籠に入った人形たちの中から、ハリネズミのぬいぐるみを見せてくださるかんのさん。)

(写真/かんのゆうこさん公式ブログより)

東條:画家の北見葉胡さんhttp://www.asahi-net.or.jp/~bg4t-ktm/index.html)の描かれた『はりねずみのルーチカ』に出てくる仲間たちにそっくりですね。わあ、全部可愛い!

 

かんのさん:こういったものを傍らに置きながら書くのが好きなんです。

モチーフになるものが傍にあると、すごく創作意欲が湧いてきます。心の中でストーリーを温めている期間がすごく長いのですが、書くときは(絵本に関しては)一気に書きます。

 

東條:登場するキャラクターたちがみんなとても個性的で、やさしくて。

私はリクガメのテールじいさんのこの台詞を読んだとき、作家であるかんのさんの想いをすごく感じました。

「顔もかたちもみんなちがうが、息をすったりはいたりしながらこの世界に生きている、という意味では、たいしたちがいなどありません。それに、自分のいのちがいったいどこからやってきて、どこへいこうとしているのかさえ、わかっているものなどおらんのに、どこのだれかなんてことは、とるにたらないささいなことじゃよ。」

(※『はりねずみのルーチカ』より。ある日フェリエの国に現れた見知らぬ少年トゥーリの素性をみんなが尋ねる場面で、リクガメのテールじいさんが語る台詞。)

 

かんのさん:多様性を受け入れるということ、ですね。

 

 

NEWS
『はりねずみのルーチカ』は、2014年、第3弾『はりねずみのルーチカ~ふしぎなトラム』と第4弾(タイトル未定)が出版の予定。

そしてこれまでに画家の北見葉胡さんが描いた何点かの挿画を生で見られるチャンス!

『はりねずみのルーチカ』原画展は、現在(2/21まで)丸善丸の内本店で開催中。

皆さまもぜひどうぞ~♪

【丸善 丸の内本店】
東京都千代田区丸の内1-6-4
丸の内オアゾショップ 3F中央エレベーター前


開催日時:20140201日~0221

詳しくは
http://www.junkudo.co.jp/mj/store/store_detail.php?store_id=3

 

 


 



☆『とびらの向こうに』(かんのゆうこ作/みやこしあきこ絵/2011年岩崎書店)

http://www.iwasakishoten.co.jp/products/4-265-05783-7.html

大好きだったピアノをやめたくなった彰、気持ちが男の子であることに苦しむ美月、宇宙飛行士を夢みる算数が苦手な潤など、6年生たちがふとした不思議に出会いながら成長していく姿を描いた短編集。性同一障害といった性の問題や、子ども自身の抱える重い病、自殺といった内容にも切り込んでいる。(不思議なはりねずみ「ルーチカ」の、初登場シーンはこの作品。)

挿絵の画家はみやこしあきこさんhttp://miyakoshiakiko.com/)。

 

 

 

 

【“性同一性障害”というテーマ】

かんのさん:これを書くにあたってはもちろん、性同一性障害の子どもたちが実際に書いた日記や体験談などをたくさん読みました。

勉強もしてその上で書いたものですが、「本人たちがいったいどう思うのかな?」というのはやはり気になっていました。

そんなときに読者の方から手紙が届きました。

手紙には「最初に読んだとき、自分のことが書いてあるのですごく驚いた」「すごく励まされた」と書かれていて。ああ、よかったなあと思いました。

もちろんレビューなどには、様々な価値観を持った方々による「なぜわざわざこういったテーマを書くのか」という厳しいご意見もありました。

文学を書いていくときには、やっぱりこういった部分での覚悟は必要ですね。

 

性同一性障害といったテーマを、特に女の子を主人公にして書くというのはたいへんな作業でした。

女の子(心は男性)の場合、生理があって悩んだり、周囲に受け入れてもらいにくいことが多いという理由もあり、悲しいことに自殺が多いんです。ですから日記や手記もあまり多くない。

でもちょうどこれを書いているときに、公立小学校でこういった子どもたちの受け入れ態勢を強化する学校が日本でも出てきたというのをニュースで見て、未来に少し明るいものを感じました。

今は当時よりまた数校増えているはずです。

 

こういった子どもたちを小さいころから育んでいけるような土壌や制度が、さらに多くの場で当り前のように根付いていくことを願っています。





(かんのゆうこさんインタビュー④へ続く)