秋の夜長。たまにはゆっくりと、古典を味わうのもよいものです。
さて今回ご案内いたしますのは、ヨーロッパ発の古典、グリム童話とアンデルセン童話。
みなさんは、いくつくらいのお話を知っていますか?
ほぼ同時代を生きたグリム兄弟(ドイツ)とアンデルセン(デンマーク)。
「シンデレラ(灰かぶり)」、「白雪姫」、「ブレーメンの音楽隊」等はグリム兄弟(ドイツ出身)が蒐集した昔話で
「親指姫」、「人魚姫」「みにくいあひるの子」等はアンデルセン(デンマーク出身)による創作童話ですが…
日本では子供向けにかなりの部分を焼き直されたり、内容を省略した本が多いため、本当のお話を知らないまま大人になっている人や、
グリムの蒐集した昔話と、アンデルセンの創作童話をごちゃ混ぜにしてしまっている方も多いのではないでしょうか。
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ここに大きな全集が2冊あります。
いつもの「絵本」とは異なり、かなりボリュームのある全集です。
全編オールカラーの素晴らしい挿絵つき。
大人がひとりきりでゆっくりと時間(日数)をかけて読むもよし、
ちょっと大きくなってきたお子さんに、
「ほんとうのシンデレラのお話はね…」と、一夜に一話 読み聞かせてあげるもよし。
ご案内します。
☆『グリム童話全集~子どもと家庭のむかし話』
(シャルロット・デマトーン/絵、橋本孝、天沼春樹/訳 2013年8月 西村書店刊 3780円)
☆『アンデルセン童話全集Ⅰ』
(ハンス・クリスチャン・アンデルセン/作、ドゥシャン・カーライ、カミラ・シュタンツロヴァー/絵、天沼春樹/訳 2011年8月 西村書店刊 3990円)
グリム童話全集は628ページ、アンデルセン童話全集(全3巻ですが、写真は1巻)の方は576ページ。
なんと、ともに2キロ近くあります。
これはホント、長く手元に置いてゆっくりと楽しみたい「愛蔵版」であると納得。
「完訳」とは、いったいどういった意味をもつものなのでしょうか。
読んでみてはじめてわかりましたが、これまでの多くの童話全集のように「子どもにこびる表現」はキッチリと拒否しているのが今作の特徴。
【グリム童話全集】
「こわがることを習いに出かけた男の話」では、男の狂人ぶりに眩暈が。畏れを知らない人間の怖さを思い知りました。
今作は、当時(200年前の欧羅巴)における庶民の信仰や生活習慣についても、日本人向けにとへんに焼き直すことなく(こちらに寄せた風習等に置き替えたりはせず)ありのままに、かつ躍動感をもって翻訳されています。
丁寧な仕事に触れ、約200年前にグリム兄弟がこれらのお話を蒐集した本来の目的…
人々の精神面から祖国ドイツの由来を探求しようとしたこと、
祖国の文化の復活を求めていたこと、
グリム兄弟の強い愛国心が、
はじめて
「なるほどそういうことか」と腹に落ちたように思います。
これだけ(グリムの210話)ドンと見せられますと、その土地の空気まで匂ってくるようです。
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【アンデルセン童話全集】
全作品にふれた後では、アンデルセン作品における詩情や作者自身の想いについて、より理解に近づけたような気がいたします。
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訳者及び画家、編集者が4~5年にわたり真剣な思いをもって取り組んだことが端々から伝わってまいります『グリム童話全集~子どもと家庭のむかし話』と『アンデルセン童話全集』Ⅰ~Ⅲ。
「内容と分量からするとこの価格(グリム3780円、アンデルセン3990円)は、むしろ安すぎるくらいなのでは?」と、
あるとき版元の西村書店代表 西村正徳氏に投げかけてみました。(図々しく すみません)
「そう!でもね、これらの完訳全集はなんとしても出しておかないといけないと思っていたから」(西村氏)
矜持…!
西村書店さんでは、ロベルト・インノチェンティやバーナデット等、すばらしい描き手である作家の作品を日本で展開されています。
2013.8.4 の【産経ニュース】には、今回の大仕事を終えられた訳者である天沼春樹氏のことばが掲載されています。
「ここ5年ばかり、毎日がアンデルセン童話とグリムの童話の翻訳作業の日々だった。
いろいろな仕事や役職をことわって、ひたすらひきこもる。
アンデルセンが生涯をかけて書いた156編の童話と、グリム兄弟が最後まで手をいれて改版した『子どもと家庭のメルヒェン』7版、210編。
思えば長い旅のはじまりだった。」
「全集を訳すという仕事は、一匹の大魚を切り身でなく、まるごと食すに等しい。
それだけに、たっぷり栄養をもらうのは翻訳者のほうであったような気がしている。」
*天沼春樹氏×北見葉胡氏 対談イベント「僕らの絵本~グリム童話200年のひみつ」(B&B下北沢)の記録もあわせてどうぞ。
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「完訳」から、古典を再発見する秋の夜長。
オール完訳・愛蔵版のグリム童話全集とアンデルセン童話全集を、まるごと味わってみませんか。