東條:・・さあ、そういったお話なども伺っているうちに、終了のお時間がせまってまいりました。



西野:もうそんな時間ですか?早っ!



西浦:早かったですねぇ。



東條:これからは、ご来場のみなさまから出演の方々への質問タイムとさせていただきます。何かご質問のある方は、手を挙げてください。



西野:勇気いりますよねぇ。


『僕らの絵本』



(会場から手が挙がる。)




※以下、質問内容を要約し掲載させていただきます。



20代女性Kさん:なかえ先生に質問です。私は大学でシュールリアリスムを研究論文のテーマにしてきた者です。震災後の20112012年は、シュールレアリスムをテーマにした展覧会が増えたような気がしています。個人的には、社会的な不安があるので「印象派」と呼ばれるような明るくてきれいなものよりも、悲しみに寄り沿うようなシュールレアリスムがうけたのかなと思うのですが・・これについて先生はどう感じていらっしゃいますか?先生の見解を伺わせてください。



西野:僕は・・9割以上は(Aさんが)何を言ってるのかわからなかったです。アタマが悪いから、ムツカシイ言葉が入ってくるとすぐ逃げちゃうんで。



(会場 笑)



なかえ:いま、震災の影響で(シュールレアリスムをテーマにした展覧会が)多いんですか?よくわかんないし、考えたことがなかった。



東條:私もその辺りのことはあまりチェックしていなかったので・・・ただ、上野紀子先生が絵をつけられた詩の絵本 (※25.)の中にも出てくる、金子みすゞの詩があるんです。「見えぬものでも あるんだよ」っていう、いわば・・シュールレアリスムのひとつのテーマにもなっているもの。これが(3.11の)震災の後、テレビCMで何度も何度も流れていたことというのは、その頃に求められていたメッセージだったのかなという気はしています。

(※25.)
『僕らの絵本』



なかえ:あんまり考えたことなかったけど・・震災で何かが変わったじゃないですか。今まで信じていたものを信じられなくなるような。すると(逆に)、今まで信じられなかったような世界である「シュールレアリスム」の世界のほうが本当なんじゃないか。そういう風にもなりますね。

いま「見える世界」を信じられないわけですから。シュールレアリスムはどっちかっていうと、「見えない世界」を描いている。これが見えるっていうことは、想像力があるということ。想像力の無い人間が政治を牛耳っているので・・困っちゃうんですけど。想像力がどんなに大切かということが、いま見直されている。シュールレアリスムの良さは、そういうところじゃないかと思います。

 

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(ご来場者いただいたクリエイターの方々からも、ご質問をいただきました。)



アーティスト(ミュージシャン)のフレネシさん :先ほど絶版のお話がありましたが、なかえ先生が、絶版になった(ご自身の)本の中から1冊だけ復刊するとしたら、どの本を選ばれますか?

(※フレネシさんは以前より なかえ先生・上野先生の作品のファンでいらっしゃるそうです。ご自身のブログにもその思いを綴られています。http://www.otomesha.com/frenesi/677



なかえ:『宇宙遊星間旅行 』(※26.)というのがあるんですよ。すごくいいですよ!・・と言いたいんですけど、絶版でね。インターネットで見たりすると、(作品を)知っている人が「早く復刻しろ」と書き込んでくれています。あのテのものは今、なかなか出してもらえないんです。

(※26.)
『僕らの絵本』

今日、会場で販売していただいている『扉の国のチコ 』はポプラ社さんから出してもらっているものです。普通はなかなか出してもらえないようなものなんですが、ポプラ社さんの方で懐の大きいところを見せてくれた。

だから、そういうチャンス(時)のために作品というのは作っておかないと、「出すよ」と言ってもらった時に「これから作ります」では遅い。



西野:すぐにきれるカードを、持っとかないと。



なかえ:いつでも出せるように準備しておかないとダメなんだよな・・と。だから、これから作る作品はそういう(シュールな)ものを作りたいですね。



東條:『宇宙遊星間旅行』はわたしも大好きです。読むときによって様々な読後感があります。(現在出版はされていませんが)図書館などに行けば出会えるかもしれませんね。



西野:それは読んでみたいです。



なかえ:絶版になるとわかっていれば、自分で買いだめしておくんだけど・・最初は「(重刷は)保留です」とか言われて。保留だから「いつかは」と思って待っていると「いつか」がなくなってしまう。(出版社の)社長が代わってしまったり・・。だから、チャンスなんて一瞬しかないと思っていた方がいいです。



西野・西浦:はい。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(記録⑮へ続く。)