西野:僕はお笑い芸人をやってるんですけど、タモリさん・ ・「笑っていいとも!」のタモリさんと一緒に飲んでてですね、「最近の絵本は全然面白くないね」みたいなことになったんですよ。まさに(タモリさんも)こういうことをおっしゃっていて。


東條:それは何年くらい前のお話ですか?


西野:えーっと、僕が1冊目の絵本Dr.インクの星空キネマ』(※5. を出したのが何年だったでしょうか・・・そこからさらに4年くらい前のことになってくると思います。その時にタモリさんが同じような感じのことを仰っていて。「なんか、面白くない感じの絵本が増えたね」と。これは、どっかで誰かが「違うぞ」って言わないとだめなんじゃないかなって。二人でさんざん悪口言うてたんですよ、絵本の。

(※5.)
『僕らの絵本』


東條:どんな悪口ですか?


なかえ:そういうのは、あんまり公で言うのはマズイでしょう。


『僕らの絵本』

西野:いやもう、(なかえ先生は)さんざん言いましたよね!うそでしょう?僕、いま先生に便乗して乗っかってるんですよ。()


『僕らの絵本』

(会場 笑)


西野:どんな悪口っていうかね、なんか・・・


東條:たとえば、その当時に本屋さんで平積みされていたような絵本をご覧になって、とか?


西野:あの・・・「ホワンと柔らかい可愛い感じのが多いなあ」って。でも子どもってそんなバカじゃないっていうか。自分が子供の頃のこと考えたときに、うちは4人兄弟やったし、ちょっと貧しめの方だったからここで我儘言えないなあとか。親の財布のこと、けっこう考えてたりしたんですよ、幼稚園の頃にもう。で、聞いてみたら(周りの)みなさんも結構同じで。それで、ナントカでちゅよ~とか話しかけてくる大人がホント嫌いで。でもなんかそういうとこ、勘違いをしてないか?・・・ってタモさんが言うてはったんですよ。子どもって姿形はそれこそ子供ですけど、中身はけっこう大人っていう子を見てきてもいるし(話にも)聞いてもいるし。コレでは騙せないぞ、みたいな。で、大人がけっこうソレ(可愛いだけのもの)を与えてるけれども、これ、退屈してるチビッコもいるんじゃないかなあって。「じゃあ、もう、僕が書きましょうか」って。


なかえ:必ず何人か、たまにいるんです、そういう子。そういう子はでも、西野さんの(作品)みたいな細かい絵に出会わないとそのことに気がつかない。変だとは思ってても。


西野:物体として見ないと・・・?


なかえ:だって、みんなが(可愛いだけのものを)「いい」って言うわけだから、そういう作品に走っちゃうわけですよ。


西野:はい、はい。


なかえ:みんな、「キティちゃん」がいいわけですよ・・・みんな、ディズニーランドがいいっていう。

(会場 笑)


西浦:(西野さんを指さす。)ええっと・・・ウォルト・ディズニーが・・・()


西野:日本のウォルト・ディズニー。() でも、おっしゃっていることはすごくわかります。99分はそっちに流れますから。


なかえ:でもそれは、自分で決めるわけじゃないんです、子どもだって。朝から(テレビでも)ディズニーランドから中継してるわけですから。わるいだなんて思わない。それを「わるい」と思うような子どもはね、それはもう立派なもんですよ。


西野・西浦:はい。


なかえ:ちょっと気持ちわるいシュールなもので育っていてくれれば、「あんな可愛らしい世界は異常だな」と思えるようになる。そういう子に育てるためには、気持ち悪いようなものも・・・


西野:そういう選択肢がないと、ですね。


なかえ:(他の表現方法で描かれたものなどの)情報を流しておいてあげると、子どもはディズニーランドの絵を見たら、「これは異常だ」って思うかもしれない。「異常なもの」を見て育ってね、今売れているものを見たら、「なんでコレは売れるんだろう?」と感じる。その方が正常だ、と・・・異常な僕は思う。


西野・西浦:ああ、よくわかります。


西野:先生は「ゆるキャラ」とかめっちゃ嫌いでしょう?ああいうのダメなんですよ、僕。


なかえ:・・・いや、そういうことは言わないな。

(会場 笑)


『僕らの絵本』

西野:僕、先生に乗っかったんです。()乗っかったら突き落とす、ってそれ!


西浦:さっきからこう・・・キャッチボール捕っては捨てられ、みたいなかんじですね。()


西野:先生に乗っかった瞬間に落とされる、っていう。()

(会場 笑)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(④へ続く。)