(これより先は、会場の皆さまからご出演の先生方への質問タイムとさせていただきました。)

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◎絵本作家さん(♂)から北見先生へ。一日にどのくらいお描きになられるのですか?


北見「わたしは油絵で描くのですが、絵本の場合はだいたい32ページくらいだとすると、それを34ヶ月で描き上げられるようなペースで描いております。特に油絵なので、乾かす時間も含め逆算しながら描いているようなところがあります。」


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◎児童書関連出版社役員(♀)から天沼先生へ。『アンデルセン童話全集』 を読みました。訳がたいへん面白いと感じたのですが。



天沼「これまでの、所謂アンデルセン童話調の訳とはあえて違うものにしてみました。旅をしながら子どもたちの前で語り聞かせをしていたアンデルセンを想像しながら。生涯にわたり家を持たず旅に生き、女の子に長い手紙を書いてふられては落ち込んでいた・・・このアンデルセンが、子どもたちの前で話すときにはいったいどんな口調だったのだろうか、と。子どもたちにとっては、割と「おにいちゃん」的なしゃべり方だったのではなかったかな、と考えてみたわけです。ですから(訳が)ずいぶんとくだけた口調になっている部分もあります。」



東條「アンデルセンの日記を読みますと、ずいぶんエモーシャルな青年だったのかなという印象があります。」



天沼「そう。空気の読めない人だったのかもしれない() 宴会に遅れてやってきて、「遅れてごめん、今新しい詩ができたんだけど聞いてくれる?」と言って延々と長い詩を読み始めて場を白けさせちゃったり。相当な変わり者で、旅の宿の枕元には「私は眠っている」と書いたメモが必ず置いてあったようです。「死んでいるのではない」と。」

(会場 笑)





◎児童書関連出版社役員(♀):これまでのアンデルセン童話とは大きく印象が異なる翻訳ですが、評判はいかがでしたか?とても読みやすく、ドゥシャン・カーライの絵とマッチした文章であると思いました。



天沼「僕は〈生きていないもの〉に話しかけるのが好きなんですね。アンデルセンの霊を降ろすこともあります。すると「その翻訳で良いよ」という言葉がね、聞こえてくるんですよ()ここまで膨大な量のアンデルセン童話を読んでいると、もう自分がアンデルセンになったような気分ですから。」


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◎絵本作家志望の学生さん(♀):週に一度天沼先生の講義を受けていますが、こんなに多くの作品に携わっていらっしゃるとは知りませんでした。すごく興味がわいたので、これからはグリム童話などについても、もっとシリーズで集めて行こうと思いました。」



天沼「ちょうど(後期の)成績をつける時期ですからね。もうこれで決まりだね。」

(会場 笑)

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◎絵本編集者(♂)から天沼先生へ。:さきほど「未来に向けて」という言葉がありましたが、お話がメジャーかどうかは別として、グリム童話の中では他にどういったお話がおすすめでしょうか?参考までにお聞かせください。



天沼「グリム童話では、〈兄弟〉や〈女〉、〈怪物〉というテーマで括った本 を出したことがあります。こちらは現代のイラストレーターが、いろいろな表現・解釈でグリムを描いてくれました。これが良いんです。出久根さん、土橋としこさん (※画像16)、それからドゥシャン・カーライのお弟子さんであるペテル・ウフナール (※画像17)さん。日本(の絵本や児童書)ではあまり見ることのない画風ですが、非常に贅沢な作品になったと思います。このテーマ括りの本については、面白いお話ばかりですので参考になるのではと思います。」



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東條「本日は『僕らの絵本~グリム童話200年のひみつ』へお越しいただき、まことにありがとうございました。天沼春樹先生、北見葉胡先生をお迎えして、絵本のこと、初版からちょうど200年目となりますグリム童話についてのお話をじっくりと伺ってまいりました。両先生、今日は本当にありがとうございました。」


(会場 拍手)


(※会場ではこの後、サイン会が行われました。)







~終了~






※画像16
『僕らの絵本』

※画像17
『僕らの絵本』