(※対談記録の中では、発言者の氏名を省略させていただきます。[天沼春樹さん⇒天 北見葉胡さん⇒ 東條⇒] またライヴならではの臨場感を生かすため、各発言についてはなるべくそのままの形で掲載させていただきました。ご了承ください。)

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『僕らの絵本』 天沼春樹『飛行船 空飛ぶ夢のカタチ』

記録⑩の続き)・・・・・・・・・・・・・

「北見先生の場合はいかがですか?ふと・・・絵やモチーフが浮かんできたりするのはどんなときなのでしょうか。」


「うーん、それが(シチュエーションのようなものは)まったく無いんです。天沼さんのように夢をみてということでもないですし、「これを描こう」とおもって描き始めることもないですし・・・何でしょうねえ。タブロー画の場合は、ふわっと浮いてきたものが絵になっているような気がします。



「自分の好きなものが絵になっていく」という感じです。昭和初期のレトロな雰囲気とか。鎌倉にある生家が和洋折衷の造りだったのですが、和風の中に4畳半の洋間があるその空間が、小さい子どもながらに好きで好きでたまらなかった覚えがあります。そういった好きなものが、今も(自分の描く)絵の中に出てくるのだということは感じます。」


「たぶんね・・・僕は「言葉を使う者」なんですが、言葉でない表現方法が〈絵〉なのだと思うんです。「絵画言語」みたいなものがあって、〈絵〉が絵描きの表現。それが〈音〉の人もいるし。それ(絵や音を)後から他の人が解釈するだけのことで・・・「言いたいことは描いた」ということなんじゃないかな。」


「文章で書けるなら書きたいですけど、書けないから・・・かもしれないですね。今日言われて初めて気づきました。」


「そういうところが画家のすごいところなんです。描けるところが。「泣かせよう」とか「感動させよう」とか、絵描きさんはそういうことがない場合が多い。〈無意識のたくらみ〉のようなものに動かされているような気がしますね。純粋に自分の中から生み出されるものがあるのでは、と思います。リスペクトしますよ。(私は)描こうとおもっても描けないもの。」



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「話はかわりますが、天沼先生は〈飛行船の研究家〉でもいらっしゃるのですね。」


「僕も昭和初期のものが大好きで・・・飛行船がとにかくナンバーワンですよ!自分の生き方が、飛行船というスタイルにどこかしら共通しているような気がする、だから好きなのだと思います。」


「たしかに飛行船が空に浮かんでいる様を見ると、無視するわけにいかないような魅力を感じますね。」



(飛行船の画像を探し始める天沼先生)

「この間、私が代わりに解説しましょう。飛行船のどこに人が乗っているのか、皆さんご存知ですか?」


「私はわかりません。」


(飛行船の画像を指さしながら)「実はこの、下に飛び出したちっちゃい所に乗っているんですって。私も天沼先生から教わったのですが。」


「何名くらい乗船できるのでしょうか?」


「今は最大で14人です。全長75メートルで14人ですから、ガス袋の大きさにしてみると、乗れる人数は少ないですよね。」


「多くないですよね。」


別の飛行船の画像を指さしながら)「これは全長300メートル近くもある将来の飛行船です。ヘリウムガスで膨らむからガス袋が大きくなるんですよね。

これが2009年まで飛行していた〈ツェッペリン号〉。

これをみつけたときにもやはり、「自分のスタイルだ」と強く思いました。(飛行船については)欧米ではまだ研究が盛んに続いています。今、JAXAで作っている飛行船もありますね。こんなこともあろうかと、こういった画像の準備もしておりましたが、ここで話をするとなると、あと30分は必要かと。」


「では飛行船に関してはまたぜひ別の機会に・・・。飛行船も含め様々なものから刺激を受け、(天沼先生は)創作されていらっしゃるのだとわかりました。」


「今年の11月には、東北の子どもたちに飛行船を飛ばしてみせる活動もしてきました。この画像で、白衣を着ているのが私です。」


「でも、どうして白衣を?白衣は着なくてはいけないんですか?」


「博士だからね、一応。科学の実験のようなこともやりました。青森~仙台~福島・・全部行ってきました。それがために大風邪をひいて、大変なことになりましたが。

(会場 笑)


(続く。)