今、思い返してみると、この状況の兆候は5年前から始まっていました。
6年前に、現在の大統領(当時は新大統領)が誕生し、その就任演説で
この国の最低賃金を上げることを高々に宣言していました。
ただ、そのときは、先々のその重要性と影響度の大きさを認識することは
できていませんでした。
これまでの最低賃金の上昇率は3~10%で推移しており、それにより
毎年のコストは上昇する傾向ではありましたが、効率化の努力、
人の新陳代謝、現状のコストに応じた価格設定の新製品の受注により、
利益は出ていました。
いよいよ新しい最低賃金が正式に決まったとき、その上昇率は20%で、
これまでにない高い上昇率でしたが、まだ、その時はその賃金額を下まわ
る給与設定の従業員はおらず、給与改定はこれまでより少し高い上昇率で
調整し、利益を圧迫するものの会社として続けることは難しくない状況でした。
この時に将来の危機を抱かなかったことが、失敗でした。
私も、現地の幹部も、本国の私の上司も、だれも気づきませんでした。
大統領の就任期間は6年あり、まさかこの上昇率が毎年続いた場合、
その積重ねの影響がどれくらいあるのか、その影響に対し、どうするべき
なのか誰も考えるとこができませんでした。
もしくは、だれも考えたくなかったのかもしれません、目先のことしか、
考えたくなかったのかもしれません。
例えば、時給が1000円だった場合、このようになります。
1000円×20%(1年目)=1200円
1200円×20%(2年目)=1440円
1440円×20%(3年目)=1728円
1728円×20%(4年目)=2073円
2073円×20%(5年目)=2488円
2488円×20%(6年目)=2986円(約3倍)
これが現実に起きました。
これに対する対策ができていませんでした。
これに対する対応は、上昇率より高い無理な生産性改善目標を掲げるだけで、
実際の生産性は以前と変わらず、その結果に対し溜息をつき、毎月と年間の
業績検討会議で本国からの叱咤罵倒に耐えることが精一杯でした。
そもそも、毎年、生産性を20%効率化させることは不可能です。
10時間かかっていた仕事を8時間にし、その効率化を続け、6年目には
同じ仕事を3時間で終えないと、この上昇率には耐えることができません。
それをやろうとしたことが、間違いでした。
でも、それが方針でした。それが正しいと考えていました。
そんななか、この国の物価は上昇し続けました。
給与が上がっているので当然です。
つまり、他の会社はこの給与上昇を価格に転嫁し続けていました。
しかし、私の会社は、それをしませんでした、それができませんでした。
それが、間違いでした。
今日は、ここまで。