十年くらい前やったかな、目白に住んどった。
駅前には学習院大学なるどえらいたいそうな金持ちが通いそうな大学がある。
そこから目白通りを下りてきて、右側に丸長(まるちょう)とゆうつけそば屋を通り越して、ピーコックやったかな?スーパー過ぎたとこ近くのアパートに住んどった時の話やねん。
女の子と同棲しとったんやけど、家賃が当時あそこらへんで六万何千円とかっやたかな、二階建てのアパート借りとったんやけど、全体で、ま、十世帯くらいの小さなアパート。
自分らの部屋まで行くのに、人ひとり通るんが精一杯の幅とかしかなくて、そんなとこになんや花か木か知らんけど、蛾や蝶のなんやめっちゃきもいのがあって、そのきもい虫やらが大量に発生して、もういつ飛んでくるかどきどきしながら自分らの部屋に入って、それらを殺すのすら怖いからなんしかあんまり気に入らんアパートやったな。
ま、ゆうても家帰らんわけにいかんから、なんとか酒やら買って女と一緒に帰ってた。
一階の奥から二番目の部屋。
ま、蛾や蝶の云々やなくても、だいたい近隣とは挨拶すらせんようなとこやから、周りに誰が住んでるかなんか興味もあれへんし、治安さえあんまりいいとは思えんとこやったわ。
毎朝六時とかにアパート十世帯全員起こされそうなくらいえげつない大爆音の目覚まし時計が鳴るんや。
たぶん住んどる日雇いかなんかの仕事しとるおっさんの部屋から聞こえてくるんやろけど、壁が薄いから会話からなんでもかんでも聞こえてくんねん。
どっかからおっさんらしきいびきやら、喧嘩しとる声やら、鼻をかむ音すら聞こえてくんねん。
ま、そんなとこやからトラブルは嫌やなーと思ってる矢先に次から次へといろいろ起こるもんで、
ある日、朝仕事いこかと思ったら自転車パンクしてんねん。
で、修理して、数日後、またパンクしてんねん。
前輪パンクしてた次の日、後輪みたいな。
女の自転車もや。
ほんで、近くに自転車屋あるから毎回パンク修理もっていって、そこのおばはんも半分笑っとんねん。
なんや、こいつらどんな運転して何回パンクさしとんねん、みたいな。
ま、ゆうても商売やから黙って修理してくれるわな。
で、空気少なめやから、もう少しきつめに空気入れといてってゆうたら、あんまり入れすぎると破裂しますよて言われたけど、ま、わしもおばはんの話きかんと自分で入れて、「パン!」ゆうて破裂して、結局チューブかえなあかんはめなったりで、まー、トラブル続きやった。
で、気づくの遅いやろけど、よー考えたらそないパンクせんやろ思って、これは誰かこのアパートの住人がなんや嫌がらせやっとんねんな、と。
その証拠に、女が干しとったブラジャーやら下着がよく盗まれてたり、郵便受けに、紙切れが入ってて、そこに赤のマジックでこんなこと書いてある。
「てめえらのセックスのうめき声うるせえぞ!気持ちいいこと禁止!」
ま、やったらあかん言われても、やらんわけいかんし、これは完璧な嫌がらせや思って、そこでパンク事件と、盗まれた下着の犯人は同一やなとつながった。
で、まーゆうてもそんな嫌がらせやるやつってよー続いても三か月くらいやと思って結構我慢してたな。
しかし、まったく嫌がらせが減るわけでもなく、むしろ向こうもどんどんエスカレートしてきた感があって、こっちもなんやある度に警戒しとった。
で、、、ある日、
また例のごとく酒買って女とうちに入ろうとしたら、二階におっさんが洗濯もん干しとってん。
そのおっさん洗濯するわりには、なんや雨降る度に洗濯して干しよるから、二階見たら毎回びっしゃびっしゃの洗濯もん干してある。
また、洗濯してパンパンならして皺のばしたりしとんのやけど、どうせまたこいつこれびしゃびしゃにしよんねんやろなー思いながら、ちょっと目合ったりして、挨拶すんのかせえへんのかどちらでもないような、んん、みたいな感じで部屋に入った。
で、うち入ろか思って、靴脱ごうかとした瞬間、なんやろな、
「こいつやっ!!!」
思って、パッと再度玄関の戸開けて、上見たら、おっさんが、そーっと下を覗きみとってん。
で、下の俺と目合ったら、スッと顔引きよったんや!
ほなら、もう完璧や!思って、二階への階段ダダダダっって走って行って、
「こらあ、おっさんおまえやろが!わしらに嫌がらせやとんのは!お前自分がやったこと分かってんねんやろな!下着盗んだら窃盗罪や!自転車パンクさしたら器物損壊や!ほんで、おまえこの紙、郵便受けに入れたやろ!これ、名誉毀損な!!!」
って、法律用語やら適当に並べて一気にまくしたてた。
ほならそのおっさん、
「はぁ?」
みたいな顔しとんねん。
ますます腹たってきて、
「お前わかってるやろな、今からお前の部屋捜索させてもらうど!」
ゆうて、俺も律儀にちゃんと靴脱いで、盗まれた下着の捜索と、
「てめえらのセックスのうめき声うるせえぞ!気持ちいいこと禁止!」
って書きよった、同じ色と太さのマジックの捜索に取り掛かった。
その紙見せて、お前まず先にこれ書いたやろ。
筆跡鑑定するから、これと同じ字書いてみろゆうたら、
なんと、わしが持ってる紙に書いてある、同じ色の同じ太さのマジックがでてきた。
ま、これで、こいつ犯人やと決めつけるのはかわいそうやから(この時点で犯人と決めつけてるようなもんやが)、一応同じ字を書いてもらった。
ほなら、やっぱり筆跡もだいたい似てる。
問い詰めても、
「はぁ?」
みたいな顔しかしよれへんから、なんやこいつちゃうんか?みたいになんやわからんようなってきたけど、怒鳴りこみにいっといて、もう今更引けんわな。
一応、部屋中下着を探し回った。
ベッドの下から、そいつの洗濯もんの塊の中から、ベランダ出て、どうせ雨でびしゃびしゃになる干したての洗濯もんの中。
あと、冷凍庫。
ま、こんだけ探してないから、そいつ犯人て決めつけるんもだんだんかわいそうになってきて、
「とりあえず、今日はこのくらいでええから」
と身勝手な?ことゆうて、これで嫌がらせがなくなったらそれでええか思って、部屋に帰った。
結局それから嫌がらせなくなったからええんやけど、今だにあのおっさんの
「はぁ?」
みたいなとぼけた顔思い出したら、腹たってしゃあない。
僕俺株式会社
僕俺株式会社 【僕】http://www.bokuore.com/
と
入室危険サイト【俺】http://www.eggtimes.com/