わが家一番の新参者はホタルブクロ


山梨に自生するクマガイソウを見に行ったとき道の駅で売っていたホタルブクロ 


実家の庭に咲くちょっと薄汚れた素朴なホタルブクロとキキョウが好きでした 

実家の庭は椿や果樹の下に山野草がいっぱい植えられていました

椿や薔薇や紫陽花や百合や彼岸花などを育てるうちに この美しい花はどこから来たのか調べるようになり 

江戸時代に江戸で作られた花は江戸に 山や川や森に咲いている花は山や川や森に見に行くようになりました 

ホタルブクロはどこに咲いているのか?地元に咲いていたのか?ネットで調べていると

児童文学の傑作「大きい1年生小さな2年生」古田足日(1927生)に行き着きました 

お話の舞台は私のほぼ地元で

子供たちがホタルブクロの原っぱを探す旅に出るお話でした

70年代に出版された児童書ですが立派な社会派小説でした 

作者は自然が失われ行く環境に疑問と怒りと絶望を感じながらも

社会に柔軟に順応し逞しく成長していく子供たちを描いています 

1960年代東京郊外では山を削り谷を埋め平らな土地を作り

蒲鉾を並べたような人間的ではない大規模団地ニュータウンがたくさん作られました 

私の地元にはその大規模団地がたくさんありましたから

数年前 ホタルブクロを探し回りました

お話に出て来るような団地と小川のそばの畑で作業する農家のおじいさんに尋ねると

「知らないなぁここはね昔みんな山林だったんだよ」と教えてくれました  

お話しでは小川のほとりが一面ホタルブクロの原っぱでした

怖い森を頑張って通り抜けると一面ホタルブクロの原っぱ

そしてホタルブクロの原っぱは大規模団地建設予定地でした

私が探した辺りは小川と大団地とゴミ処理施設と老人施設と小さく残った畑

大団地には高校の友達がたくさん住んでいました

小川は私が高校生の頃はコンクリート護岸のどぶ川でした

今は改修され自然護岸が復活し子供たちが遊んでいます

一度コンクリートを被された土地に在来植物が戻るのか疑問でしたが

目を皿のようにして探すと数本のホタルブクロが対岸の岸に見えました

ゴミ処理施設の敷地の柵の中ものぞきに行きました

敷地には雑木林(雑木林)がそのまま残され小川側の柵にホタルブクロが咲いていました 

雑木林は公害防止のための緩衝 環境緩和のために残された山林=インフラですがそこホタルブクロは咲いていました 

地元の自然保護グループに保護され紐で囲まれていました 

東京ではこうした工場緑地も「自然」とされ生物多様性という価値観から期待されつつあります 

緑の向こうに「土木」「工場」が見える自然なんて自然じゃないと思ってきましたが 

コゲラもスズメバチもそこでちゃんと暮らしていました 

これも自然植生ふるさとの森なのでしょう 

私の身近には物心ついたときから工場や団地や住宅や病院が透けて見える緑しかありませんでした 

私世代でもこんな自然で楽しみを見つけるしかなかったのです

古田足日さんはこんな環境で育つ子の原風景はどうなるのか

団地のモザイクタイルになるのだろうかと憂えていましたが

私の原風景はコンクリート護岸のどぶ川と川向こうの大団地と

ブロック塀に囲まれた四角い空き地の原っぱ

春紫苑と姫女苑とオオイヌノフグリを摘んで西洋タンポポの綿毛を飛ばした空き地

スミレもレンゲもホタルブクロもありませんでしたが

ブロック塀から顔を出す美しいブルーのヒメアシサイや

黄色い山吹の花やレンギョウもみんな脳裏に焼き付いています

ホタルブクロを探し本当はもっともっと走り回ったのですが灯台もと暗し

わが家の道を挟んだ1974年頃に建てられたお宅のお庭にはホタルブクロがたくさん咲いていて

まるでホタルブクロの原っぱのように濃紫~紫~薄紫~ピンク~様々な花が咲くのですが

先日はじめてホタルブクロについて尋ねると「植えた覚えはない勝手に生えてきた」とのことで

わが家の周りもホタルブクロが咲いていたということが分かりました