「結城っ」



すでに、廊下の端まで歩いていた結城を必死な想いで呼び止めて……。
呼び止めて、僕はどうしたかったんだろう。



最初にかけるべき言葉が見つからなくて、何て言っていいのかわからなくて、そもそもなんで本田と喧嘩なんかしてたんだろ。でもそれってストレートに聞いちゃダメだよなって。でも、聞かなきゃ何もわからないし。
あー、やっぱいろいろ考えても意味ないやっ。

「どしたの?」


素直にこう聞けばよかったんだよね。



いろいろ考えるより、俺は結城の友達だ。心配して、話聞いて、何が悪いんだっ。


そうだよね?君ならどうしたかな。
連休が終わって、学校が始まった日、僕は君に会える緊張で部活に行こうか迷うくらいだった。



緊張で震える手で図書館のドアを開けようとした時に、中から大きな声がしたんだ。


「ふざけんなよっ」



僕は突然開いた扉に驚いて、何が起こったのかわからなかったんだ。



「わりぃ」


あぁ結城か。



思った瞬間に追いかけなきゃいけないと思ったんだ。
でも…


人間って咄嗟の行動難しいんだって思ったよ。
その次の日も、その次の日も、僕は電車に乗ったんだ。


君に会いたくて。


君を見たかもしれない、という希望を、君に会えたという嬉しさにかえるために。



緊張の20分。


球場を通りすぎた後は自分がバカらしくなって、思わず笑っちゃったんだ。


何してんだろーって。



もちろん君には会えなくて。


でも、明日は会えるかもしれないって毎日思ってた。


たった5日の連休が僕には我慢できなかったんだ。