社会人として働きながら簿記一級の資格取得を目指す場合、
まず気をつけなければならないのは基本習得と応用演習のバランスです。
基本習得に時間と労力をかけすぎてもいけない、
応用演習に時間と労力をかけすぎてもいけない、
絶妙なバランス感覚が必要とされます。
具体的に説明していきましょう。
まず、社会人受験生の99%が犯すミスが
「簿記一級の難しい内容に関して考えこみ時間をロスする」
というものです。
このミスを犯すと、
ただでさえ時間が足りない社会人受験生は“瞬殺”されます。
基本が120%定着していない限り理解できない内容をウンウンと考えこむのは時間の無駄。
それなのに、考えこむことが学習だと勘違いしている…
無駄に時間を消費し、気がつくと基本を徹底する暇がない…
基本を徹底していないから難しい内容をいつまでも理解できない…
この悪循環におちいるため、大半の社会人受験生は永遠に合格できません。
これは、基本習得に対する時間と労力の投資が不足しているケースです。
はやる気持ちをおさえ、冷静に基本の徹底をすれば済む話なのですが、社会人受験生はもともとの時間が不足していることに焦り、無理をして難しい内容を理解しようとするんですね。(←無駄な努力)
これが、基本習得時のトラップです。
このトラップをよく理解している専門学校の講師や先輩受験生は、基本の徹底を強調します。
簿記は反復だ!訓練だ!習うより慣れろ!体で覚えろ!…そんなふうに指導します。
ここで素直な簿記受験生(有望な受験生)は、
講師や先輩のアドバイスにしたがい、基本の徹底を始めます。
基本的な問題を繰り返し繰り返し反復して解き、解き方を体にしみこませていくんですね。
それは悪いことではありません。むしろ、正しい。
そうして基本の徹底をしない限り、簿記一級に合格することはありえませんから。
ただ、何事も過ぎたるはなお及ばざるが如し。
基本の徹底が行き過ぎると、かえって簿記一級不合格回数を増やしてしまうんですね。
どういうことか?
具体的に説明しましょう。
まず、はっきり言っておきます。
簿記一級は、簿記三級や二級と違い、基本の徹底だけでは合格できません。
本試験を受けたことがある方ならお分かりだと思いますが、
簿記一級の本試験では「なんじゃ、こりゃあーー!!」と思うような問題が出題されます。
「おいおい、こんなの習ってないぞ」
そう思わせる、驚異的な応用問題が出題されるんです。
もちろん、そういう問題ばかりではありません。
基本的な知識・技術で解ける問題も出題されます。
ただ、簿記一級では必ずと言っていいほど、
一部、「なんじゃ、こりゃあーー!!」と思わせる問題が出るんです。
冷静になって、ちょっと頭をひねれば、意外と簡単に解けたりするのですが、基本の徹底で脳内が“マシーン化”してしまっている受験生には、その頭のひねりができません。
こうして、「永遠に不合格を繰り返す簿記一級受験生」が誕生してしまうのです。
基本習得に時間をかけすぎている簿記受験生は、このことに気づいていません。
基本習得のやりすぎで自分の脳がマシーン化し、それが原因で不合格を繰り返しているのに、
その自覚がないため、いつまでたっても救われないのです。
基本の徹底が行き過ぎると、かえって簿記一級不合格回数を増やしてしまう理由。
お分かりいただけたでしょうか?
基本習得は「考えずに解けるようになった段階」でやめるべきです。
基本的な問題なら何も考えなくてもスラスラ解けてしまう。
そんな状態になったら、応用演習(頭をひねる訓練)に移らなければなりません。
社会人受験生は、仕事で疲れているぶん、ラクな基本習得に時間をかけがちです。
基本の徹底が大事という講師や先輩のアドバイスを都合よく利用して、
ラクな学習をつづけています。
これが、社会人受験生が簿記一級に合格しづらい原因の1つです。
こんな話をすると、
社会人は簿記受験で不利だと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
社会人には社会人の強みがあります。
その強みは…
仕事で鍛えられている応用力。
そう、実は、社会人受験生は学生や受験専念組と違い、日頃の仕事でさまざまなことに対応し、
頭が柔軟になっているので、その強みを活かせば、実は合格しやすいんですね。
仕事で想定外のアクシデントが起きたときに、とっさの判断で乗り切る。その力を簿記一級本試験の「なんじゃ、こりゃあーー!!」と思わせる問題を解く力として使えれば、かなり有利に合格に近づきます。
仕事での応用力を簿記本試験の応用力として使えるようにするために、基本習得が「考えずに解けるようになった段階」に達したら、さまざまな応用問題を解いていきましょう。
その際のポイントは「使う脳を変える」という点。
基本問題を解くときにはまるで機械のように、考えずに体で解いている感覚だと思いますが、
応用問題を解くときにはそれをまるっきり変えます。
極めて人間的に、柔軟に、真剣に、さまざまな角度から考えるんです。
それは、仕事で想定外のアクシデントが起きたときや、
未経験の仕事になんとかして取り組むときと同じ頭の使い方です。
今までの知識にとらわれず、推測力を働かせ、なんとかして乗り越えていく(解いていく)。
そんな感覚で応用演習を積み重ねていきましょう。
ただ、ここでもバランスに気をつけてください。
応用演習が楽しくなってくると、
そればかりにのめりこみ、習得したはずの基本が薄れてくることがあります。
あまりに応用演習ばかりやっていて、考えずにスピーディーに解く感覚を忘れてしまい、
基本的な問題も考えて(時間をかけて)解くようになってしまった…
それで本試験で時間不足になり不合格…
そういう失敗談を話してくれる受験生は多いものです。
ここでも、過ぎたるはなお及ばざるが如し。やり過ぎないように注意しましょう。
以上、基本習得と応用演習のバランスという観点から、
簿記一級に社会人として働きながら短期合格する勉強方法をお伝えしました。
みなさんの合格を祈っています!
by 簿記短期合格勉強方法+α(ILB)開発者 SAI・HAYATO