簿記講師百合枝19歳随筆中です。


 上記「木村勝則の独学簿記3級講座 簿記講師百合枝19歳」

この簿記小説を平成16年(2004年)から毎月、随筆しています。

木村勝則が、簿記をわかりやすく解説します。人生をかけて熱く語りかけます。

小説風にしていますので読みやすくしています。この機会に登録ください。

この小説は

「簿記講師百合枝19歳」という小説(フィクション)です。

登場人物や団体名称はすべて架空です。そこで登場する百合枝19歳

びわこ大学(仮名)1年生が

ひょんなことから駅前にある簿記教室で

簿記を社会人に教えることとなります。

地域の人々に助けられながら自分らしく、

前向きに一生懸命生きる百合枝の姿を描きたいと思っています。

また、百合枝と一緒に簿記のすばらしさをご自身で

体験していただきたいと思っています

簿記小説の部数が増えるに従って、

百合枝は温かい人との出会いにより成長し

滋賀県の町並みも変化していきます。

(滋賀県はこれから十数年間、人口が増加する県です。)

小説を読まれる方は美しい琵琶湖のある

滋賀県の風景も想像しながらご覧下さい。

楽しみにしていてください。

できるならば、百合枝になったつもりで滋賀県に

観光にきていただければと思います。

諸事情で購読できない高校生・中学生・小学生諸君に下記で、

公開しています。




日本の明日を担う

高校生・中学生・小学生諸君は下記をご覧下さい。

(高校生・中学生・小学生諸君限定)

では、簿記講師百合枝の簿記3級講座が始まります。

2004年吉日 木村勝則http://katsunori.jp/

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木村勝則の独学簿記三級講座「簿記講師百合枝19歳」 

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クリスマスソングが流れている。

12月24日、23時55分 クリスマスイブ。

村木 春(仮名)31歳

大学を卒業後、専門学校講師をへて、

滋賀県彦根市で、

(彦根市は新幹線や高速道路がとおる

近畿・北陸・東海の交通の要衝である。

黒壁で有名な城下町、長浜も近くにある。)

念願の村木簿記教室を開く。

その簿記教室の窓の向こうには国宝彦根城が見える。

国宝彦根城にしんしんと雪が降る。

村木は眼を潤ませながら、ノートパソコンに右手だけで、一字一字丁寧に、

「黒板の前でチョーク ばさみ(講師がチョークをはさむための道具)

を握り締めながら、あんな前向きでがむしゃらで、

一生懸命、生きている人には一生会えないと・・・・・」

パソコンに入力していた。

31歳だというのに、

教室の傍らには大きな靴下を用意をしてあった。

そのまま、机にもたれて、寝てしまった。



村木は深い眠りにはいる。



「朝ですよ、起きてください、朝ですよ。」と

携帯電話が鳴る。便利な世の中になった。

携帯電話が目覚まし代わりだ。

百合枝は眠たい目を擦りながら、起きた。

昨日の試験合格発表のお祝いで、

びわこ大学(架空)のみんなと一緒に飲んでいたからだ。

この試験における合格では最年少だ。すごいことだ。

地元のびわこ新聞(架空)の地域版に写真入りで載っていた。

百合枝は4月2日に生まれた19歳でびわこ大学の1年生になっていた。

今は親元を離れ、びわこ大学の琵琶湖湖畔の木村寮にいる。

昔は男子寮であったが最近立て替えられ、

女子の入学者の増加で女子寮になった。

寮は綺麗で住み心地がよく、

あわせガラスのため、

夏は冷房がよく効き、冬は暖かい。

しかも、かなり家賃も安い。

百合枝が中学生1年のときだった。

百合枝の父は20年間勤めた会社を辞め、

自分で会社を起こした。

父の経営に対する思いは、なみなみならぬものであった。

父は家族のために朝も夜も働いた。

しかし、バブル崩壊後の日本経済は、

景気低迷のなか最初から苦労の連続だった。

父は歯をくいしばった。

毎日、がんばった。

母もパートに出て一生懸命働いていた。

百合枝は家族旅行も行けなかったが、

一生懸命がんばる両親が好きだった。

お金はなかったが、

父の背中にいろんなことを教えてもらった。

百合枝は幸せだった。

百合枝は父の言葉を思い出す。

「起業家はチャレンジや。」

「何もないところからあたらし息吹をおこさな~あかん。」

「少しぐらい失敗しても、明日を信じるんや。」

「俺は活き生きと仕事してるで~。百合枝。」

「みとけや。」

「百合枝、起業家は一生、チャレンジや。」

父の言葉が百合枝の心に残っていた。

そんな両親を見て育った百合枝は、

手に職をつけたくて

ちょうど英語検定の勉強をしていたときにアドバイスをもらった


高校の森元広 太郎先生に相談した。

森元広 太郎先生は大学時代に京都の大学で

アメリカンフットボールをしていて、

背も高く、がっしりしていた。

百合枝は他の先生と違って

歳の離れていない森元広 太郎先生に兄のような

気持ちで接していた。

森元広 太郎先生は、

百合枝の通う高校横に併設された

二階建ての職員寮に住んでいた。

山が校舎の後ろに立ち並ぶ、

のどかな風景がそこにはあった。

百合枝の通う高校の横には運動場に面して

二つの大きな池のある。

一つの池はゴルフ場打ちっぱなしに

あるぐらい大きな池だった。

森元広 太郎先生は、家庭的な事情等で

大学受験ができない学生を呼んでは、

廃材で机を作り、勉強を教えていた。

それを百合枝は知っていたので、

森元広 太郎先生を信頼していた。

高校の森元広 太郎先生から紹介してもらった

「木村勝則の独学簿記3級講座」

というメールマガジンを購読していた。

このメールマガジンを読み、独学で簿記を勉強していた。

このおかげで簿記のセンスを養っていった。

将来は父親のような起業家になりたいという思いからだ。

大学に入学後、百合枝はすぐに国家試験に合格できた。

いうまでもないが大学の授業のおかげでもある。

幸運なことに名前はわからないが、

卒業した先輩方が同窓会を通じてびわこ大学の図書館に

多くの最新の受験書を寄贈していただいたお蔭でもある。

百合枝は高校時代、

多くの起業家を輩出しているびわこ大学に憧れていた。

びわこ大学は、入試も簿記で受験ができた。

実業界の第一線で活躍している先輩を排出している伝統のある大学だ。

びわこ大学卒業生は、滋賀県内で起業し、

活躍していた先輩が多くいた。

現代版の近江商人だ。

びわこ大学に入学できて本当に良かったと思っている。

大学が人生のひとつの起点になったと思っている。

親に無理を言って進学して本当に良かった。

自分も将来は父のような起業家になりたいと考えていた。

びわこ大学は彦根駅から駅前の大どおりを琵琶湖に向かって歩く。

小高い山の上に勇壮な城、国宝彦根城が見えてくる。

城下町ならではの茶店が並び、

石垣の堀の淵には、均等に桜の木が植えられている。

門をくぐり、国宝彦根城の堀を通って、

びわこ大学に向かう。

入学式には堀の通りに桜が咲き乱れ、

これでもかといわんばかりに桜たちが百合枝の心に

「おめでとう。」

「おめでとう。」

「おめでとう。」

「おめでとう。」

「おめでとう。」

と声を掛けて祝福してくれる。

彦根城の堀に沿って、

歩く。

石垣を、

くぐりぬけると、

びわこ大学の正門がある。

門が学風をかもし出す。

講堂が、見える。

百合枝は

この講堂が、大好きだ。

素敵な、しゃれた雰囲気をかもし出している。

ここで、卒業式が行われると聞いている。

楽しみだ。

正門を過ぎ、

まっすぐ、いくと

右手側に蔵、土蔵を三つ重ねた

江戸時代の建物のような

雰囲気をかもし出す

近江商人博物館が見えてくる。

そして、

正面には

地域、滋賀県内の

企業と連携し、

新しい産業を創造する

びわこ大学産業創造チャレンジセンターと

びわこ大学の同窓会館があらわれてくる。

この建物も明治時代にオランダから

きた有名な建築家によって立てられた

国宝級の文化財だ。

この建物は、

同窓会のために宿泊施設も備えている。

右に曲がると、

すぐに左手に図書館がある。

2階には、最新の資格受験雑誌がたくさんある。

図書館を過ぎると、

校舎が立ち並ぶ、

ケヤキ並木をくぐりぬけると、

体育館がある。

体育館の横には、食堂、学食である。

食堂の窓から彦根城が見れる。

食堂の横の体育館の裏には、

プール。

そして、

広大な運動場がある。

運動場は彦根城内へとつながり。

琵琶湖の湖畔へとつながる。

ボート部の練習場がある。

これがびわこ大学だ。

木村寮(架空施設)

はそんなびわこ大学から少し南に面し、

美しい琵琶湖の湖畔にある。

湖畔から見る景色は爽快である。

すがすがしい朝だ。

その日は1時限目から大学で会計学の授業だ。

愛車の自転車に乗り、大学に向かう。

しかし、私の後ろをだれかが、

大声で何かをいいながら自転車で追いかけてくる。

「中年のオッサン。」

と思わずいってしまう。

百合枝は怖くなって猛スピードで大学にいく。

しかし、後方の自転車が横転するのが見えた。

思わず、百合枝は、苦笑いしてしまう。

そのままにして、大学に向かう。

大学の西門にたどり着いた。

1時間目は、木村田先生の会計学の授業だ。

百合枝が教室に行くと、明子と口田竹さんがいた。

明子は百合枝と中学、高校からの同級生だ。

明子の横に座ると、明子が言った。

「昨日、お疲れ。」

百合枝

「お祝いしてくれてありがとう。」

口田竹

「百合枝、先週のノート見せて」

百合枝

「いいよ」

口田竹は三浪して、びわこ大学に入学をした。

口田竹は調子のいいところがある。

会計学の授業担当の木村田先生が教室に入ってくる。

携帯をマナーモードにしょうとする。

口田竹がしゃべりかけてくる。

気をとられる。

木村田先生の会計学の授業が始まる。

胸騒ぎがする。

何か聞こえる。

授業中に携帯にメールが鳴った。

木村田先生が黙ったままで百合枝を見る。

授業を受けている全員がこちらを向く。

百合枝はすぐに携帯を取り出した。

「先生、すみません。」

携帯がマナーモードになっていなかったのだろうか。

百合枝は木村田先生にいう。

「携帯マナーモードにしときます。」

携帯を確かめるために、

カバンに手を入れる。

携帯をかばんから取り出そうとする。

嫌な予感がした。

体と手が震えた。

携帯が右手からすり落ちる。

スローモーションのように携帯が落ちてゆく。

机の下のコンクリートの角に携帯があたる。

リチウムイオン電池が携帯から飛び出る。

百合枝は、

携帯と電池を拾い上げて、

電池を直ぐに取り付ける。

落ちた携帯の画面をみると、

携帯をマナーモードのままだ。

携帯をみる。

携帯の画面に「着信あり」とある。

母からだ。

嫌な予感がした。

また、体が震えた。

なにか押しつぶされそうな感じがする。

メールも届いている。

机の下で木村田先生に見えないように、

おそるおそる見る。

携帯がおかしくなっている。

メールの文字も壊れている。

携帯を見る。

「会社倒産、父・・・・連絡・・。」

とメールのタイトルにある。それも母からである。

母に連絡を取りたかった。

百合枝はいてもたってもいられず。

たまらず教室を走りながら出る。

明子が叫ぶ。

「百合枝」

明子の声が響く。

百合枝は振り向かずに走った。

ドアを開けた。

教室を出た。

左手に携帯を持ち

右手で携帯をかける。

「かからへん。」

「かからへん。」

「あ~・・・・・・」

いらだつ。

長く感じる。

「壊れてる」とつぶやく。

百合枝は

落ち着け、

落ち着け、

落ち着け、

と繰り返しながら自分に言い聞かす。

しかし、携帯は落としたので壊れている。

かからない。

どうにもならない。

食堂の前に電話機があるのを思い出す。

百合枝は教室の前の食堂まで走る。

勢いあまって人に当たる。

こけてしまう。

百合枝

小さな声で下を向きながら、

「すみません。」

という。

百合枝は顔を上げる。

そこで朝会った人に出会う。

「あ、・・・・・・・。」

と思わずささやいてしまう。

その男は右手にびわこ新聞の朝刊を持っていた。

新聞には笑顔の百合枝が、写っていた。

左手には包帯巻いていた。

さっきの自転車で転んだ怪我・・・・・?

なにか不思議な感じの人だと百合枝は思った。

気にはなった。

直ぐに新聞をカバンに入れ。

村木は右手を百合枝に差し出した。

「村木 春と申します。」

そこで村木に出会う。

ゆっくりと丁寧に百合枝を右手で引き上げてくれた。

「中年のオッサンとはひどいな、これでもまだ30代ですよ。」

言いながら。

百合枝

「シマッタ」聞こえていた。

「授業いいの?」

百合枝それどこではない。

こんなオッサンにかまっていられない。

百合枝は村木を無視する。

食堂の前の電話機から、

母に電話をかける。

村木はそばにいて、受話器から泣き声が聞こえる。

百合枝

「お父さんが・・・・・」

村木は絶句する。

百合枝の時間が止まった。

頭が真っ白になる。

波音が聞こえる。

潮の香りがする。

カモメが鳴いている。

海のようだ。

幼いときにお父さんと一緒にいった海だ。

小さな子供が、

砂浜で遊んでいる。

お父さんが笑っている。

子供を抱えあげた。

百合絵は叫ぶ。

「あ~私だ。」

時が流れた。

夕日が沈む。

お父さんと一緒に砂浜を走る。

私はこけた。

お父さんの手が離れる。

いつもだったら、すぐに起こしてくれる。

のに・・・・

何もしてくれない。

お父さんは笑顔だ。

私は、

お父さんに右手を差し出す。

お父さんは私を起こしてくれない。

お父さんは手を振りながら、

遠くへいってしまう。

百合枝は

「お・・・・・」

「お・・・・・」

百合枝は

言葉にならなかった。

スローモーションのように右手に持っている受話器が落ちてゆく。

百合枝の頬に、

涙が流れ落ちる。

村木はそんな表情の百合枝を見て、

「どうしたの?」

と問いかける。百合枝は、

われに返る。

「わ~」と泣き叫ぶ。

村木も絶句してしまう。



時が流れる。



村木は自分の涙をこらえるのが、

精一杯だった。





(わが国の起業の成功率は低い。

10年後でも残っている企業は10社にに1社である。

毎年、自殺者は、約30,000人を超える。

その半数が自営業者で交通事故の死亡者を上回る。

自営業者はがんばりすぎず、

自営業者には適度のストレス解消は必要不可欠だ。

ためないことである。どうにかなる。

あなたのことをかけがえのない人と

思っている人はあなたが思っている人

以上にたくさんいる。

「生きててなんぼだ!!ファイト!!!」

事業に失敗をしても、立ち直る制度や

暖かい目で見てあげる社会的な支援は、

必要不可欠である。

しかし、しっかりと戦略をたて、

成功している

若い起業家も、多く接して来た。

失敗を肥やしに力強く、前向きな、

滋賀県でも起業家は多く生まれている。

今の日本には、

必要不可欠な人(人的資源)である。

一度しかない人生で、

自分の人生を活き活きと生きるために、

起業することも、

大切なことだ。

学生時代から人生の

生き方を学び、

生きがいと仕事を一緒に考える

ことも大切だ。)





数ヶ月後。


百合枝は自分の人生のために


立ち上がり、


動き始める。


「ファイト」
村木 春(仮名)31歳

大学を卒業後、専門学校講師を経て、

夢であった。元気の出る簿記教室を立ち上げ、

1年前から経営する。

周りの人から、

「コンピュータ会計の時代に」

といわれながら、

「あえて、簿記のすばらしさを知ってもらうために。」

学生時代に楽しい思い出のある彦根で創業をした。

かけがえない友人と出会い。

一緒に協力し、涙を流した思い出が、

数え切れないほどあるからだ。

大学の学園祭やトンボ人間コンテストに参加。

大学のキャンパスの最上階から見た彦根花火祭り。

土曜の夜の琵琶湖1周、ナイトドライブ。

商店街にあるすし屋の学生バイトで身に着けた経営学。

先輩の下宿でギターを弾いて

一緒に歌った青春の歌。

10年後、

創業している大学時代の友人も多くいた。

親切な先輩も多くいた。

学生時代の思い出のある彦根でしたかった。

村木は彦根が最適だと思った。

しかし、10数年前の彦根とは違い。

南彦根付近では、

大型のショピングセンター等が、立ち並んでいた。

人口も増え、何でも揃う町になっていた。

都会的な住みやすい町になっていた。

滋賀県は近江商人発祥の地でもあり、

滋賀県民が育成する文化があった。

そんな滋賀県には大学が多く、

たくさんの学生を育てる。

まさに、学生と一体感のある町であった。


彦根城の南門には江戸時代の城下町を再現した

お姫様どおり商店街(仮名)がある。

びわこ大学と彦根駅の中間に平行する形で、

お姫様どおり商店街が形成されている。

城下町風の商店街には、情緒があり、

土日になるとお城の見物とお姫様どおり商店街に人が押し寄せる。

その商店街のなかには、

お肉屋さんで美味しい近江肉をレアーで焼いてくれる店もある。

ここで昼のランチで食べるのを、

彦根での創業時は楽しみにしていた。

彦根城の四季の移ろいを

感じながら、お姫様どおり商店街の

和菓子屋で氷の器にのったわらび餅や、

ぜんざいを食べるのも楽しみにしていた。

このお姫様どおり商店街に村木の経営する教室がある。

びわこ大学の木村寮に行った日。

びわこ新聞の記事を見て、百合枝に会いにいく。

先日のびわこ新聞の記事で村木は才能にきづいたからである。

その百合枝の才能をうらやましく思っていた。

村木との出会いで百合枝は、

村木の経営する元気の出る簿記教室で簿記を教えることとなる。

百合枝は今までの受験勉強のなかで

一番熱心に簿記を勉強してきた。

誰にも負けないという自信もあった。

村木に質問された。

「簿記ってなんですか。百合枝さんわかる?」

百合枝ももちろん簿記は帳簿記入の略は知っていた。

百合枝は、自分のなかで簿記を帳簿、

すなわちノート(帳面)に記入することと定義していた。

「あなたのお母さんがつけている家計簿やあなた自身の小遣帳は、」

村木は百合枝に質問する。

「小学校の低学年に書いた絵日記は?」

さらに村木は百合枝に聞く。

「紙ではなく企業の経済活動のデータをパソコンから入力した場合は。」

と聞いてくる。

村木は尋ねる。

「簿記だと思いますか?」

目を白黒させる百合枝であった。

さらに村木は百合枝を試すかのような質問をする。

村木は、

「個人商店が銀行からの預金利息を受取った時は

なんていう勘定科目使いますか?」

と質問を投げかけてくる。

矢継ぎ早な質問に百合枝は戸惑い。

混乱する。

村木は チョーク ばさみ を差し出す。

「模擬授業をして」

百合枝は戸惑いながら、チョーク ばさみ をもち、話し始める。

2時間後。

村木は、百合枝に

「あんたが2時間で生徒さんからもらうお金はスパイダーマンや

ハリーポッターの映画代より高い。」

百合枝は、「はっと」 気づく。

百合枝からチョーク ばさみ を取り、右手に

チョーク ばさみ を持ち、講義を始める。

百合枝は驚いた。

いままで、冴えなかった中年のオッサンが、

チョーク ばさみ を持った瞬間に変わった。

村木の目が輝いている。

百合枝の支離滅裂な言葉と違い。

活き活きと水を得た魚のように右へ、左へ動く。縦横無尽だ。

体で表現しながら、教室の隅々まで透る声で。

言葉に思いをこめ、百合枝の目を見ながら、百合枝の心を突き刺す。

百合枝は思った。

言葉に魂がこもっている。

父の件で百合枝は心にもやもやがあった。

村木の講義を聞くと、元気がでてくる。

百合枝は、「ファイト」と思わず、言ってしまった。

村木は百合枝に講義で元気を与えたかった。

次の日から村木の特訓が始まる。

言葉の発生練習から。

「あ、い、う、え、お、あ、お。」

「あ、い、う、え、お、あ、お。」

「あ、い、う、え、お、あ、お。」

「あ、い、う、え、お、あ、お。」

「あ、い、う、え、お、あ、お。」

百合枝は大きな口を開けながら、

精一杯、声を出す。

しかし、この研修で村木は百合枝の前で一度も 

チョーク ばさみ で黒板に書くことがなかった。



1ヵ月間の村木の指導後。



会社帰りのサラリーマンと自営業者を

ターゲットに平日の夕方に

簿記3級講座開講が決まる。

村木のOKがでて、百合枝は簿記を教えることになる。

当日、

教えるまでの待っている間、緊張のあまり、手に汗がでる。

思わず、自分自身に。

「ファイト」「ファイト」言ってしまう。

村木が遠くから、百合枝の姿を見ている。

教室には入ると。

全員が、こちらを見る。

緊張が最高潮になり、手、足が震える。

村木の言葉を思い出す。

「こんばんは。」

一番目に座っている人が、

「こんばんは。」

という声を聞き、百合枝は自分でも緊張が引くのがわかった。

1カ月の個別指導で村木が言ったとおり、

大きな声で挨拶をして正解だった。

これは村木のアドバイスが的を得てるのに関心した。

百合枝はチョーク ばさみ を持ち、

颯爽と講義をし始める。

輝いていた。

「簿記とは、」

と黒板に書き込む。

百合枝は、ゆっくりと数十人の受講生を見る。

受講生全員のまなざしがこちらに注がれている。

また、緊張をしてしまいそうになる。

しかし、まなざしが心地よく感じる。

楽しく感じ始める。

百合枝は語り始める。

「一言で言えば帳簿に記入することです。」

「簿記は、帳簿記入、帳簿記録または、帳簿記録保存法の略であるといわれています。」

「単に絵日記のような絵で表現したものではなく、お金によって表現されています。」

「家計簿のように私が毎日、好き勝手に付けている帳簿を単式簿記といいます。」

「皆さんの受験される簿記3級は企業の帳簿記入を対象にしています。」

「企業はお金、もの、人を持っていて、財(形のある商品等)・サービスを

提供する自分で考えて行動する組織のことをいいます。」

「近くにある商店街の魚屋さんや八百屋さんや、

日本で一番稼ぐ、自動車、携帯電話の株式会社も企業です。」

「企業の帳簿は、好き勝手に付けることはできません。」

「そこで、だれが見てもわかるように規則(ルール)があるのです。」

「その規則を私と一緒に勉強しましょう。」

遠くから村木は教室の様子をうかがう。

百合枝の姿を見ながら村木は、

ぼそぼそとつぶやく。

「向いている。天職だ・・・・・」と。