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木村勝則の独学簿記三級講座「簿記講師百合枝19歳」 

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クリスマスソングが流れている。

12月24日、23時55分 クリスマスイブ。

村木 春(仮名)31歳

大学を卒業後、専門学校講師をへて、

滋賀県彦根市で、

(彦根市は新幹線や高速道路がとおる

近畿・北陸・東海の交通の要衝である。

黒壁で有名な城下町、長浜も近くにある。)

念願の村木簿記教室を開く。

その簿記教室の窓の向こうには国宝彦根城が見える。

国宝彦根城にしんしんと雪が降る。

村木は眼を潤ませながら、ノートパソコンに右手だけで、一字一字丁寧に、

「黒板の前でチョーク ばさみ(講師がチョークをはさむための道具)

を握り締めながら、あんな前向きでがむしゃらで、

一生懸命、生きている人には一生会えないと・・・・・」

パソコンに入力していた。

31歳だというのに、

教室の傍らには大きな靴下を用意をしてあった。

そのまま、机にもたれて、寝てしまった。



村木は深い眠りにはいる。



「朝ですよ、起きてください、朝ですよ。」と

携帯電話が鳴る。便利な世の中になった。

携帯電話が目覚まし代わりだ。

百合枝は眠たい目を擦りながら、起きた。

昨日の試験合格発表のお祝いで、

びわこ大学(架空)のみんなと一緒に飲んでいたからだ。

この試験における合格では最年少だ。すごいことだ。

地元のびわこ新聞(架空)の地域版に写真入りで載っていた。

百合枝は4月2日に生まれた19歳でびわこ大学の1年生になっていた。

今は親元を離れ、びわこ大学の琵琶湖湖畔の木村寮にいる。

昔は男子寮であったが最近立て替えられ、

女子の入学者の増加で女子寮になった。

寮は綺麗で住み心地がよく、

あわせガラスのため、

夏は冷房がよく効き、冬は暖かい。

しかも、かなり家賃も安い。

百合枝が中学生1年のときだった。

百合枝の父は20年間勤めた会社を辞め、

自分で会社を起こした。

父の経営に対する思いは、なみなみならぬものであった。

父は家族のために朝も夜も働いた。

しかし、バブル崩壊後の日本経済は、

景気低迷のなか最初から苦労の連続だった。

父は歯をくいしばった。

毎日、がんばった。

母もパートに出て一生懸命働いていた。

百合枝は家族旅行も行けなかったが、

一生懸命がんばる両親が好きだった。

お金はなかったが、

父の背中にいろんなことを教えてもらった。

百合枝は幸せだった。

百合枝は父の言葉を思い出す。

「起業家はチャレンジや。」

「何もないところからあたらし息吹をおこさな~あかん。」

「少しぐらい失敗しても、明日を信じるんや。」

「俺は活き生きと仕事してるで~。百合枝。」

「みとけや。」

「百合枝、起業家は一生、チャレンジや。」

父の言葉が百合枝の心に残っていた。

そんな両親を見て育った百合枝は、

手に職をつけたくて

ちょうど英語検定の勉強をしていたときにアドバイスをもらった


高校の森元広 太郎先生に相談した。

森元広 太郎先生は大学時代に京都の大学で

アメリカンフットボールをしていて、

背も高く、がっしりしていた。

百合枝は他の先生と違って

歳の離れていない森元広 太郎先生に兄のような

気持ちで接していた。

森元広 太郎先生は、

百合枝の通う高校横に併設された

二階建ての職員寮に住んでいた。

山が校舎の後ろに立ち並ぶ、

のどかな風景がそこにはあった。

百合枝の通う高校の横には運動場に面して

二つの大きな池のある。

一つの池はゴルフ場打ちっぱなしに

あるぐらい大きな池だった。

森元広 太郎先生は、家庭的な事情等で

大学受験ができない学生を呼んでは、

廃材で机を作り、勉強を教えていた。

それを百合枝は知っていたので、

森元広 太郎先生を信頼していた。

高校の森元広 太郎先生から紹介してもらった

「木村勝則の独学簿記3級講座」

というメールマガジンを購読していた。

このメールマガジンを読み、独学で簿記を勉強していた。

このおかげで簿記のセンスを養っていった。

将来は父親のような起業家になりたいという思いからだ。

大学に入学後、百合枝はすぐに国家試験に合格できた。

いうまでもないが大学の授業のおかげでもある。

幸運なことに名前はわからないが、

卒業した先輩方が同窓会を通じてびわこ大学の図書館に

多くの最新の受験書を寄贈していただいたお蔭でもある。

百合枝は高校時代、

多くの起業家を輩出しているびわこ大学に憧れていた。

びわこ大学は、入試も簿記で受験ができた。

実業界の第一線で活躍している先輩を排出している伝統のある大学だ。

びわこ大学卒業生は、滋賀県内で起業し、

活躍していた先輩が多くいた。

現代版の近江商人だ。

びわこ大学に入学できて本当に良かったと思っている。

大学が人生のひとつの起点になったと思っている。

親に無理を言って進学して本当に良かった。

自分も将来は父のような起業家になりたいと考えていた。

びわこ大学は彦根駅から駅前の大どおりを琵琶湖に向かって歩く。

小高い山の上に勇壮な城、国宝彦根城が見えてくる。

城下町ならではの茶店が並び、

石垣の堀の淵には、均等に桜の木が植えられている。

門をくぐり、国宝彦根城の堀を通って、

びわこ大学に向かう。

入学式には堀の通りに桜が咲き乱れ、

これでもかといわんばかりに桜たちが百合枝の心に

「おめでとう。」

「おめでとう。」

「おめでとう。」

「おめでとう。」

「おめでとう。」

と声を掛けて祝福してくれる。

彦根城の堀に沿って、

歩く。

石垣を、

くぐりぬけると、

びわこ大学の正門がある。

門が学風をかもし出す。

講堂が、見える。

百合枝は

この講堂が、大好きだ。

素敵な、しゃれた雰囲気をかもし出している。

ここで、卒業式が行われると聞いている。

楽しみだ。

正門を過ぎ、

まっすぐ、いくと

右手側に蔵、土蔵を三つ重ねた

江戸時代の建物のような

雰囲気をかもし出す

近江商人博物館が見えてくる。

そして、

正面には

地域、滋賀県内の

企業と連携し、

新しい産業を創造する

びわこ大学産業創造チャレンジセンターと

びわこ大学の同窓会館があらわれてくる。

この建物も明治時代にオランダから

きた有名な建築家によって立てられた

国宝級の文化財だ。

この建物は、

同窓会のために宿泊施設も備えている。

右に曲がると、

すぐに左手に図書館がある。

2階には、最新の資格受験雑誌がたくさんある。

図書館を過ぎると、

校舎が立ち並ぶ、

ケヤキ並木をくぐりぬけると、

体育館がある。

体育館の横には、食堂、学食である。

食堂の窓から彦根城が見れる。

食堂の横の体育館の裏には、

プール。

そして、

広大な運動場がある。

運動場は彦根城内へとつながり。

琵琶湖の湖畔へとつながる。

ボート部の練習場がある。

これがびわこ大学だ。

木村寮(架空施設)

はそんなびわこ大学から少し南に面し、

美しい琵琶湖の湖畔にある。

湖畔から見る景色は爽快である。

すがすがしい朝だ。

その日は1時限目から大学で会計学の授業だ。

愛車の自転車に乗り、大学に向かう。

しかし、私の後ろをだれかが、

大声で何かをいいながら自転車で追いかけてくる。

「中年のオッサン。」

と思わずいってしまう。

百合枝は怖くなって猛スピードで大学にいく。

しかし、後方の自転車が横転するのが見えた。

思わず、百合枝は、苦笑いしてしまう。

そのままにして、大学に向かう。

大学の西門にたどり着いた。

1時間目は、木村田先生の会計学の授業だ。

百合枝が教室に行くと、明子と口田竹さんがいた。

明子は百合枝と中学、高校からの同級生だ。

明子の横に座ると、明子が言った。

「昨日、お疲れ。」

百合枝

「お祝いしてくれてありがとう。」

口田竹

「百合枝、先週のノート見せて」

百合枝

「いいよ」

口田竹は三浪して、びわこ大学に入学をした。

口田竹は調子のいいところがある。

会計学の授業担当の木村田先生が教室に入ってくる。

携帯をマナーモードにしょうとする。

口田竹がしゃべりかけてくる。

気をとられる。

木村田先生の会計学の授業が始まる。

胸騒ぎがする。

何か聞こえる。

授業中に携帯にメールが鳴った。

木村田先生が黙ったままで百合枝を見る。

授業を受けている全員がこちらを向く。

百合枝はすぐに携帯を取り出した。

「先生、すみません。」

携帯がマナーモードになっていなかったのだろうか。

百合枝は木村田先生にいう。

「携帯マナーモードにしときます。」

携帯を確かめるために、

カバンに手を入れる。

携帯をかばんから取り出そうとする。

嫌な予感がした。

体と手が震えた。

携帯が右手からすり落ちる。

スローモーションのように携帯が落ちてゆく。

机の下のコンクリートの角に携帯があたる。

リチウムイオン電池が携帯から飛び出る。

百合枝は、

携帯と電池を拾い上げて、

電池を直ぐに取り付ける。

落ちた携帯の画面をみると、

携帯をマナーモードのままだ。

携帯をみる。

携帯の画面に「着信あり」とある。

母からだ。

嫌な予感がした。

また、体が震えた。

なにか押しつぶされそうな感じがする。

メールも届いている。

机の下で木村田先生に見えないように、

おそるおそる見る。

携帯がおかしくなっている。

メールの文字も壊れている。

携帯を見る。

「会社倒産、父・・・・連絡・・。」

とメールのタイトルにある。それも母からである。

母に連絡を取りたかった。

百合枝はいてもたってもいられず。

たまらず教室を走りながら出る。

明子が叫ぶ。

「百合枝」

明子の声が響く。

百合枝は振り向かずに走った。

ドアを開けた。

教室を出た。

左手に携帯を持ち

右手で携帯をかける。

「かからへん。」

「かからへん。」

「あ~・・・・・・」

いらだつ。

長く感じる。

「壊れてる」とつぶやく。

百合枝は

落ち着け、

落ち着け、

落ち着け、

と繰り返しながら自分に言い聞かす。

しかし、携帯は落としたので壊れている。

かからない。

どうにもならない。

食堂の前に電話機があるのを思い出す。

百合枝は教室の前の食堂まで走る。

勢いあまって人に当たる。

こけてしまう。

百合枝

小さな声で下を向きながら、

「すみません。」

という。

百合枝は顔を上げる。

そこで朝会った人に出会う。

「あ、・・・・・・・。」

と思わずささやいてしまう。

その男は右手にびわこ新聞の朝刊を持っていた。

新聞には笑顔の百合枝が、写っていた。

左手には包帯巻いていた。

さっきの自転車で転んだ怪我・・・・・?

なにか不思議な感じの人だと百合枝は思った。

気にはなった。

直ぐに新聞をカバンに入れ。

村木は右手を百合枝に差し出した。

「村木 春と申します。」

そこで村木に出会う。

ゆっくりと丁寧に百合枝を右手で引き上げてくれた。

「中年のオッサンとはひどいな、これでもまだ30代ですよ。」

言いながら。

百合枝

「シマッタ」聞こえていた。

「授業いいの?」

百合枝それどこではない。

こんなオッサンにかまっていられない。

百合枝は村木を無視する。

食堂の前の電話機から、

母に電話をかける。

村木はそばにいて、受話器から泣き声が聞こえる。

百合枝

「お父さんが・・・・・」

村木は絶句する。

百合枝の時間が止まった。

頭が真っ白になる。

波音が聞こえる。

潮の香りがする。

カモメが鳴いている。

海のようだ。

幼いときにお父さんと一緒にいった海だ。

小さな子供が、

砂浜で遊んでいる。

お父さんが笑っている。

子供を抱えあげた。

百合絵は叫ぶ。

「あ~私だ。」

時が流れた。

夕日が沈む。

お父さんと一緒に砂浜を走る。

私はこけた。

お父さんの手が離れる。

いつもだったら、すぐに起こしてくれる。

のに・・・・

何もしてくれない。

お父さんは笑顔だ。

私は、

お父さんに右手を差し出す。

お父さんは私を起こしてくれない。

お父さんは手を振りながら、

遠くへいってしまう。

百合枝は

「お・・・・・」

「お・・・・・」

百合枝は

言葉にならなかった。

スローモーションのように右手に持っている受話器が落ちてゆく。

百合枝の頬に、

涙が流れ落ちる。

村木はそんな表情の百合枝を見て、

「どうしたの?」

と問いかける。百合枝は、

われに返る。

「わ~」と泣き叫ぶ。

村木も絶句してしまう。



時が流れる。



村木は自分の涙をこらえるのが、

精一杯だった。





(わが国の起業の成功率は低い。

10年後でも残っている企業は10社にに1社である。

毎年、自殺者は、約30,000人を超える。

その半数が自営業者で交通事故の死亡者を上回る。

自営業者はがんばりすぎず、

自営業者には適度のストレス解消は必要不可欠だ。

ためないことである。どうにかなる。

あなたのことをかけがえのない人と

思っている人はあなたが思っている人

以上にたくさんいる。

「生きててなんぼだ!!ファイト!!!」

事業に失敗をしても、立ち直る制度や

暖かい目で見てあげる社会的な支援は、

必要不可欠である。

しかし、しっかりと戦略をたて、

成功している

若い起業家も、多く接して来た。

失敗を肥やしに力強く、前向きな、

滋賀県でも起業家は多く生まれている。

今の日本には、

必要不可欠な人(人的資源)である。

一度しかない人生で、

自分の人生を活き活きと生きるために、

起業することも、

大切なことだ。

学生時代から人生の

生き方を学び、

生きがいと仕事を一緒に考える

ことも大切だ。)





数ヶ月後。


百合枝は自分の人生のために


立ち上がり、


動き始める。


「ファイト」