「ありがとう。」

という言葉が嬉しく、やりがいを感じていた。

大吉にとっては何よりの報酬であった。

「市場の限界利益は大幅に改善され、その恩恵は従業員のみならず、

お客様である彦根で商売をする果物屋、八百屋の店にも、

安くて新鮮な果物が入るようになった。」

ここで百合枝が割って入って無理やり解説した。

「限界利益とは企業活動によって入ってくるお金、売上等の収益から売上に伴って

増減する材料費等の変動費を控除したものです。この限界利益から

売上に関係なく経常的に掛かってくる費用、具体的には人件費等を固定費といいます。

固定費は企業活動を視野に入れて戦略的に使うことができます。

この固定費を限界利益から控除したものが、経常利益になります。」

「ちなみに、損益分岐点は限界利益が変動費と固定費の合計と一致している

状態です。限界利益を見ることは変動損益計算書などで簡単に把握できます。

企業経営にとって限界利益の把握は最も大切な経営指標のひとつになってきています。

最近では、コンピュータ会計でも簡単に把握できるようになりました。」

「話がそれました。続けてください。登米大吉さん。」

大吉が再び回想を始めた。

「彦根中にネットワークを張り巡らさせる方法を考えていた。」

「この時、びわこ大学の恩師でもある山耳谷教授にも相談をし、

びわこ大学産業共同センターの協力によって

携帯電話を利用した学習型市場システムを導入した。

売り手市場から買い手市場重視に移行した。

買い手が市場に物を申すという能動型、

市場システムである。

それを彦根の果物屋の店主である大吉たち店主が拾い上げていくという

携帯電話をリーダー、動画、音声入力により読み込み装置として使う

画期的なシステムである。

さらに山耳谷教授はユビキタス学習指向観光システム計画していた。

彦根の観光スタイルを物見志向から学習指向と変えようとしていた。

びわこ大学のサーバーですべて管理し、厳重に管理してもらった。

そして、びわこ大学の英知でそれらをあらゆる方向から解析し、

彦根の経営者たちに携帯電話という誰でも持っている端末に送信した。

携帯電話により彦根で商売をする果物屋、八百屋の店が、

ひとつに繋がり、情報を共有化でき、お客さんの動画、声を携帯電話

で聞き。拾い上げ、動画、音声入力により瞬時に電子化し、

お客様によりよいサービスを提供できるようになった。」

これにより、大吉も従来より安く商品を手に入れることができ、

売れ筋が把握できるようになり、

売れ残って腐らせることが極端に少なくなった。

廃棄も大幅に減った。環境にもやさしくなったと

こころから喜んだ。

携帯電話で繋がれた大吉の店はコンビニのPOSシステムのような

受注発注システムが可能となり、死に筋、売れ筋、商品の把握も

自前の携帯電話で瞬時に把握できるようになった。

「受注発注も店頭での店主の携帯電話からの動画、音声入力により自動化ができ、

ムダ、ムリ、ムラが省け、能率が飛躍的にあがり、

店をしながら私はITコーディネータの仕事も兼任できるようになった。

これにより一流企業との価格競争に巻き込まれずに、日々の利益率を

考えながら利益率の高い、滋賀県のおいしいメロンをインターネットで

世界中に売ることができるようになった。」

「以前と比べて利益は倍になった。

もちろん、小さな子供から高齢者の好きなバナナもパセリも

何百年も変わらぬ味で、

店の店頭に目だま商品として山盛りに並べられている。

利益はもちろん度外視している。

経営の最適値も大切だと気づいたから・・・・・

老舗の伝統を守りながら、ジリ貧の売上から

市場、地元の商店、大学を巻き込み、

情報技術を駆使し、

経営と地域社会の最適値を目指した近江商人ITコーディネータとして。」

大吉の初めての人生を掛けた

チャレンジであった。

考えぶかけに振り返っていた。

百合枝が我に返る。

「あ・・・・・・9時」

と百合枝が声を放つ。

大吉のやさしく、熱く語る言葉に

教室の受講生は陶酔していた。

時間の経つのを忘れていた。

百合枝の声で催眠術が解けたかのように

教室に風景が変わる。

教室の窓から見える

彦根城のかかる満月がまぶしい。

大吉の亡くなったお父ちゃん、お母ちゃんが自分の息子の

成長を誇らしく満面の笑みで見ているようだった。

加古伊優作は、泣きつかれ

うなだれながら大吉の言葉をかみ締めながら

聞き入っていた。

そして、加古伊優作は、初めて人の痛みが分かり。

利益を出すことがすべてでなく。

自社の利益より大切なものを自己の体験から気づいた。

サラーリマンのままでは、気づきにくかったであろう。

仕方がない。

そんな優作を百合枝は心配そうに見つめていた。

そして、百合枝自身も

村木春の

「利益より大切なもの。」

はなんですかいう質問を思い返していた。

静まり返った教室で

百合枝が拍手すると、

全員で拍手をして、大吉と優作にエールを送っていた。

村木春と勝は、そんな百合枝の心の動きを見ていた。

そして、村木春は、教室をでて、

事務所の自分の机の上に置いてある腕白な子供たちの

横でしゃきっと直立不動の

大吉と奥さんの満面の笑顔で

店の奥の二階の階段の横に取り付けられた

大吉ITコーディネータ事務所の看板が輝いていた。

額に入った写真を眺めながら

村木春は考え深げに

「能ある鷹は爪隠す。」

と思わずつぶやいた。



つづく


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