7. 社会学と文化人類学/ 日本人は何故「つまらないものですが」というか | Bokensdorfのブログ

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国際結婚から考えた「隠れた構造・隠れた文化」について
加えて「世の中の仕組みは実はこうなっている」について書きます

■ 日本人は何故「つまらないものですが」というか


日本人の行動様式の特色を表わす例としてこれがよく話題にされる。
どうしてこう言うのか。私は言わない。
初めて聞いたころから、この言葉に違和感を持ったからだ。

同様の事を言う人は沢山いる。
古い慣習になりつつあるように思われる。
子孫に伝え残したい美しい習慣であるなどとは全く思わない。


このころ、日本文化について書かれた数多くの本を読んでいたが、
大抵は個人の経験談のレベルで終わっており、
読み物として面白いものもあるが、
そこから更に隠れた構造まで解き明かして述べた本はまったく無かった。
日本人が日本を語るのには限界があるようにさえ思えて来ていた。


そこでたまさか読んだのが「菊と刀」である。


この本について改めて語ることは何もない。
既によく語り尽くされているからだ。
しかし、文化人類学という学問にまったく縁のなかった私が初めて読んでも、
これは素晴らしい本だと分かる。
何よりも、その分析の手法についての自信ある説明に感銘を受ける。


一度も日本を見た事がなくても、文化人類学の専門家の手にかかると、
日本人自身が、私自身が、
知らなかった自分の姿をこんなにもくっきりとあぶり出すことができるものなのか。

そこには、なぜ「つまらないものですが」と言うかのヒントが書いてある。

もともと、恩というのはプレッシャなのだ。
その通りだ。
プレゼントも当然、相手に貸しを与えるというプレッシャと無縁ではいられない。

彼女の分析によれば、
日本人どうしの人間関係は金銭の貸借と置き換えてみると理解しやすい、と言っている。

何か与えると、それはいつか返さなくてはならないものとして、相手の帳簿から消えないのである。
まったくその通りだ、と快哉を叫びたくなった。
「つまならいもの」とわざわざ言うのは、
相手に対しての贈り物という『貸し』の価値を下げて、
相手の『借り』を軽減してやろう、という手段なのである。

この、恩の貸し借りという概念の理解なくして、
プレゼントの価値を貶める言葉(つまらないものです)を
吐く理由を理解することはできないだろう。

半世紀以上も昔【1946年】に書かれた本だが、その価値は今でも輝いている、と思った。

自分がなぜそうするのかという日本人の行動について、
もう亡くなっている外国人に教わる、というのも不思議な話だ。

ルース・ベネディクトの誕生日は家内の生まれた日と同じだということも知った。
何か因縁を感じる。


【続く】



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 都筑区 2011.12.7(水曜日) 紅葉が進みました
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