生きた粘菌で動くスマートウォッチ「生体たまごっち」 | bokeneko22のブログ

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  生きた粘菌で動くスマートウォッチ

充電の代わりにお世話をすることで

愛着がわく「生体たまごっち」

 
生きた粘菌で動くたまごっちみたいなスマートウォッチ
 
 
シカゴ大学の研究チームは、すぐに電子機器を捨ててしまう人がいるのは、愛着がないからだと考えた。
 
だったらもっと愛情を注げるデバイスを開発すればいい。

 そこで誕生したのが、
 この「粘菌スマートウォッチ」だ。

 人間は多かれ少なかれ、命に共感する生き物だ。
 
一度愛着がわけば、そう簡単に捨てることはできないはず。

 このスマートウォッチは生きた粘菌たちががんばって動かしてくれているのだ!
 
電池のいらない生きた「たまごっち」のようなものだ。

 実際にこれを使ったユーザーは、
粘菌スマートウォッチのお世話を通じて、
ペットと同じような絆を育むことができたそうだ。
 

使い捨てのライフスタイルを変えるには?

 新しいデバイスが発売されると、
何百万という旧式が捨てられる。

 シカゴ大学の研究チームによれば、2019年の電子廃棄物は
過去最高の5360万トンで、わずか5年間で21%も増加したのだそうだ。

 こうした状況を憂いて、さまざまな識者や為政者たちが、
使い捨てのライフスタイルを変えて、今までとは違うデバイスとの関係を築かねばならないと主張している。

 だが具体的にどうすればいいのだろうか?
 
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photo by iStock
 

餌やりを通じて絆を育む、

生きた粘菌が動力のスマートウォッチ

ペドロ・ロペス助教らがたどり着いた答えは、
もっと愛着のわくデバイスを開発することだ。

 無機質な機械であっても、人間とペットの絆のような
結びつきを育むことができれば、
そう簡単には捨てられないはずだ。

 「関係を変えることで、これまでとは違う関係を作る方法を模索してきました。ユーザーがデバイスとより責任あるつながりを持てれば、デバイスの寿命を延ばせるのではないでしょうか」
 
 

Integrating Living Organisms in Devices to Implement Care-based Interactions 

 

 

ロペス助教らが開発した粘菌スマートウォッチは、

バンドの根元あたりに透明なケースが取り付けられている。

 このケースの中は細いトンネルのような構造になっており、その両端に小さな部屋が1つずつある。

 

この部屋の片方に「モジホコリ」という粘菌を入れるのだ。

 

自分の命で動く「たまごっち」のようなもの

 スマートウォッチを機能させるには、
まずは粘菌に水とオート麦を与えて育てる。

 栄養をもらった粘菌は、スクスクと育ち、部屋からトンネルに伸びて、もう1つの部屋にまでたどり着く。

 すると粘菌の体内を電気が流れる。
つまり粘菌が生きた電子回路として機能するのだ。
 
スマートウォッチに内蔵された心拍モニターは、
この生きた電子回路があってはじめて機能する。

生きた粘菌を使ったスマートウォッチ

 
生きた粘菌回路によって、あなたの生きている証がモニターされるということだ。
 
命が伝えてくれるあなたの命の証を目にした瞬間の喜びは、
きっと大きなものだろう。

 もちろん粘菌は生き物なのだから、これで終わりではない。

 ペットのように定期的にお世話をしてやらねばならない。
 
長いことエサや水を忘れてしまうと、粘菌はカラカラに
干上がって、休眠状態になる。
 
すると心拍モニターは消えてしまう。

 電池のいらない、粘菌の命で動かす「たまごっち」のようなものだ。
 

2

ペットと同じような絆が芽生えたことが判明

 ユニークなアイデアだが、
生きたスマートウォッチは本当に意味があるのだろうか?

 それを調べるために興味深い実験が行われている。

 被験者5人に2週間ほど粘菌スマートウォッチのお世話をしてもらい、それで彼らの行動が変わるかどうか確かめてみたのだ。

 この実験にはハートフルな映画のような別れが待っている。
 
被験者は最初の1週間はきちんとエサを与え、
粘菌の世話をするよう指示される。

 だが次の2週目になると、世話を止めるよう言われるのだ。

 すると参加者の多くが、心の苦しさを感じることがわかったという。
 
相手は粘菌だが、それでも絆が芽生えたことを
みんなが認めたのだ。
 

4

 

この実験のことをロペス助教は、

プレリリースで次のように語っている。

 「みんなショックを受けていました。ほとんど全員が、『本当にやめなくちゃいけない?』と、

とても人間的な反応を示しました。悲しむ人もいれば、

絆が切られたように感じる人もいました」

 被験者の回答によれば、その絆はデジタルペットよりも

ずっと強く、むしろ普通のペットと人間の関係に近いもの

だったそうだ。

 普通、人がデバイスを使うのは、何か明確な目的があるからだろう。だが、粘菌スマートウォッチの場合、

 

きちんと世話をしなければならないので、

より双方向の関係を感じられる。

 「生きているので愛着もわいて、捨てたり、押し入れにしまっておくのは無理とも感じていました」

とロペス助教は言う。

 

 

 

UChicago's Human Computer Integration Lab at UIST2022 (Introduction by Pedro Lopes) 
 
こんな風に、命という要素が加わると、
人間のテクノロジーとの関わり方も変わってくるようだ。

 研究チームは、この粘菌スマートウォッチが、
使い捨ての機械ではなく、思いやりを育むデバイス開発を
うながすことになればと期待している。

 この研究は『ACM Symposium 2022』で発表された。