わあい、今回は私にしては早くに更新出来ました。

やっぱり意欲というか、勢いは大事ですわ。

あれだけ書けなくてグダグダしてたのは何だったのかと思うほど、進めることが出来ましたもの。

まあ書けなかったってのは、体調の悪さが理由の大半なんですけどね。

それでもこうして1つ仕上げることが出来たのですから、よしなのでしょう。

ではどうぞ。

あ、そうそう。魔人様、今回の一応原作沿い蓮キョ話がご予約いただいてた分なので、どうぞお持ち帰りくださいませね。

 

 

 

失恋した子にはヤケ酒を

 

 

 

寒暖差もやっと落ち着き始めたこの頃。

それでもまだ肌寒い夜に某人気俳優は、カラオケ店の1室で頬を盛大に引き攣らせていた。

 

「・・・これはどういうことなのかな?」

 

彼がそう問いかけるのは当然だろう。

想い人が大変だと彼女の親友の女性に呼び出され慌てて来た先では、酒盛りなんてものが繰り広げられていたのだから。

これで苛立つなというのが無理な話だ。

しかし常日頃から肝の据わった人間を動じさせるには役不足だったようで、相手は平然とした様子で返してきた。

 

「あら、おかしなことを聞かれますね敦賀さん。

見てお分かりのように女同士で飲んでるんですけど。

そうよねぇ、キョーコ?」

 

「そうで~す。私とモー子さん2人での飲み会ですよ~。

殿方は~入っちゃダメなんです~。」

 

何という仕打ちだろうか。

駆けつけてきた人間に対しての親友の女性・奏江の返しも大概だが、相づちをうつキョーコの酔っ払い具合がそれに輪をかけて酷い。

だから思わず額に手をやった蓮は、ため息とともに声を発した。

 

「君たちはまだ20歳になったばかりだから、自分の限界を知る前に飲みすぎるなと言われてなかったかな。」

 

「言われましたよ。だからそれを知るために、こうして一緒に飲んでるんじゃないですか。」

 

「最上さんはもう既にグデングデンになってるようだけど。」

 

「この子はあまり強くないようですね。それが分かって何よりです。

敦賀さんもそう思われません?」

 

「そうだね。でもいくら調べるためとはいえ素人だけで、それも女性2人でこんなになるまで飲むのは感心しないな。」

 

「まあ。気のしれた者だけだからいいんじゃないですか。

ヘタに男性や同性の先輩が混ざってしまっては、お酒を控えてしまって限界値が分からず終わってしまいますもの。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

ダメだ。

何を言っても柳に風、暖簾に腕押しで躱されてしまう。

このまま言葉遊びに興じる気がない蓮は早々に反撃を諦め、核心を突くことにした。

 

「・・・君が言う最上さんのピンチとは、酔っぱらってという意味でだったのかい?」

 

「いいえ。それもまあ入ってますけど、でも違います。」

 

「じゃあ何「ねえ敦賀さん、人がお酒を飲みたくなるのってどんな時だと思われます?」」

 

「?それは・・・気分が高揚した時とか、ムシャクシャしてる時、じゃないかな。」

 

自身の言葉を遮られ若干眉根を寄せつつも律儀に答えた蓮に、奏江は笑みを強め会話を続けていく。

 

「実は私この子に会うの久々だったんですけど、見るからに空元気でビックリしたんですよ。

そんな風に空元気を振りまかなきゃならなくなった原因が何か、分かりますか?」

 

「さあ・・・分からないな。」

 

「それが何と、1つの熱愛の噂を聞いたからなんですって。

スクープ知らずのある先輩俳優に恋人がいたらしいと、それを知ったことがショックだったそうなんです。」

 

「・・・・・・熱愛の、噂・・・?」

 

「あ、少し言い間違えました。

それにもショックを受けたようですが1番めり込んだのは、来ないでほしいと願ってた日がやって来たことらしいんですよ。

自分の想いを封印する覚悟は出来てたけど、笑顔で祝福する覚悟の方はまだ出来てなかったのにって。」

 

「ちょっと待って・・・想いって・・・それに覚悟って何・・・。」

 

「本当におかしな話ですよね。

私から見ればキョーコと貴方は両想い以外の何物でもないってのに、片やわけ分からない女優との熱愛の噂が流れ、もう一方は自分が口説かれてたことは頑なに認めなかったくせしてあっさりその噂を信じた挙句失恋した気でいるんですから。

たく、馬鹿らしくて素面でなんてやってられませんよ。

だから酒盛りしてたんです・・・まあ失恋にはヤケ酒って言いますしね。

というわけなんですけど、これってこの子のピンチにはなりませんか?」

 

いつの間にそうなったのやら、気持ちよさげにソファにもたれ寝息を立ててる親友の姿を見て呆れたように笑いながらの奏江の問いに、蓮は肩の力を抜き頷いてみせる。

 

「ああ、うん。確かに大ピンチだ。・・・ありがとう、知らせてくれて。

このお礼は後日するとして、今日はもう失礼するよ。

これから最上さんと話さなきゃならないことが出来たからね。」

 

「ええ、しっかり話し合ってください。

ただ想いが通じ合ったからって、早速手を出すとかはなしですよ。」

 

言うや否やキョーコを抱き上げ出口へ歩いてく蓮に向かい、釘さしを忘れなかった奏江。

これに手を上げ応えてみせた後ろ姿を見送った後彼女は、1人残された室内でポツリと独りごちる。

 

「やれやれ、世話が焼けるったら・・・。

まあこれで1人減って、ラブミー部員は残り2人か。」

 

そんな呆れ混じりの口調ながらも、どこか安堵を滲ませた言葉は誰にも聞かれることなく、消えていったのだった。

まず聞けはしないだろう鼻歌と一緒に・・・。

 

 

 

おわり

 

 

 

web拍手 by FC2