備忘録
2014年以降、ウクライナ国内のロシア人1万数千人を無差別に虐殺したウクライナも悪いが、ウクライナも含めた周辺国のロシアへの恐怖を解消しなかったロシアも悪い。しかし、最も悪いのは2014年に「クーデター」でロシア人大統領を失脚させた米国のネオコンと軍産複合体。即時停戦を!!
神ならぬ人間の言説は全て暫定的なもの従って、随時更新しなければならないので永遠に工事中!
(2023年11月17日) 

 

 

★★インターナショナル

 

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【中国語】インターナショナル (国际歌) (日本語字幕)  上海東方衛星テレビの歌番組『中国之星』

 

 

★★イスラエルに正義はあるか【田岡俊次の徹底解説】20231108

2023/11/08
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イスラエルに正義はあるか【田岡俊次の徹底解説】20231108


軍事ジャーナリスト田岡俊次の徹底解説。ハマスのテロ行為への自衛権の行使の名目でガザでの1万人を超える民間人の死亡が正当化されるのか。イスラエルの現在のパレスチナ地域の支配が、実は国連決議に違反する占領であり、しかし、そのことを問題視しない欧米によって明白な不条理が50年以上放置されてきたことに目を向ける必要があります。豊富な知識に裏打ちされた、田岡さんの目からうろこの解説をどうぞ。 2023年11月8日 収録

 

★:シオニストには、元社会主義者がいたのは事実で、中には、初期のマルクスやエンゲルスにも影響を与えた「モーゼス・ヘス」(Moses Hess:1812年~1875年)のような有名な社会主義派の理論家もいた。彼らの弟子たちは後に、イスラエルに共生的な社会主義的キブツ村を建設した。

 

しかし、残念なことに、キブツ村はイスラエルが独立し、第一次中東戦争が起こった1948年まではパレスチナ人の村だった。つまり、キブツは血に染まった大地の上に造られた「天国」だった。パレスチナ人の元村民は今まで、ガザや西岸地区の壁に取り囲まれた難民村で囚人のような生活を強いられてきた。そして今、ガザでは爆撃で殺され、生存者は、その難民村からも追い出されてガザ南部に避難したが、南部でも容赦の無い爆撃で根絶されようとしている。

 

また、西岸地区では、ハマスが武装蜂起する以前の今年の1月から6月までだけでも、子どもも含めて126人ものパレスチナ人がイスラエルの軍や警察などに虐殺されていた。テレビはハマスが突然、武装蜂起したと言っているが、これも真っ赤なウソだ。

 

★シオニスト左派(労働シオニズム)は、自民族優先の典型的な民族主義的社会主義者と言う他ない。「万国の労働者団結せよ」と呼びかけたマルクス派は、他民族の基本的人権も自民族と同等に守るインターナショナリズムが原理・原則なので、民族主義的社会主義派はマルクス派ではない。

 

ナショナリズムは14世紀頃から徐々に姿を現し、19世紀後半以降の世界は、ナショナリズム全盛時代に突入したので、ほとんどの国の政治勢力は、程度の差はあるがナショナリズムの波に飲み込まれた。ソ連(ロシア)や中国の共産党は、インターナショナリズムのマルクス派を名乗りながらも、実際には、半ば自民族優先の民族主義的社会主義的勢力になってしまった。

 

★ナショナリズムの起源についての定説はないが、大きく分けると古代からあったという原初主義と、近代に成立したという近代主義の2つがある。ナショナリズムの克服は困難ではあるが、ナポレオン戦争後のヨーロッパの体制を決めた1814年のウイーン会議では、ナショナリズムは全く問題にはならなかった。しかし、レーニンとトロツキーによるロシア革命で民族自決論が掲げられた後の1919年のパリ講和会議では、ナショナリズムが噴出して、多民族のドイツ帝国、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国などは消滅した。

 

この間の100年間に、民族自決が大きな政治的理念となって広範囲に共有され、第二次世界大戦後には、植民地解放の巨大な運動が起きるなど、近現代では、民族自決が政治問題の中心になったのは確か。しかし、核戦争を引き起こしかねないウクライナ戦争やパレスチナ問題の背景にもナショナリズムがあるので、人類は偏狭なナショナリズムを克服し、地球市民にならなければならない。

 

 

★★ウクライナで「徴兵逃れ」が横行 約2万人が国外に脱出 危機感強めるゼレンスキー政権

 

産経新聞:2023/11/17
ウクライナで「徴兵逃れ」が横行 約2万人が国外に脱出 危機感強めるゼレンスキー政権
https://www.sankei.com/article/20231117-37RJTDIZAFJH3DRUZB64UM2P4I/
黒瀬 悦成

 

●ロシアでも反戦派や親欧米派のロシア人が大勢出国したが、ウクライナでも、約2万人が国外脱出し、違法な国外脱出罪で逮捕された者が約2万人いるが、これは当然だ。ウクライナはロシア人だけでも人口の2割弱・800万人以上もいる多民族国家だからだ。

 

ロシア人は、キエフ政府の支配地域にも大勢住んでいるし、ロシアに親戚がいる人、ロシア人と結婚した人も多い。また、公的な民族分類上ではウクライナ人でも、ロシア語が母語のために、心はロシア人化しているウクライナ人も多いからだ。逆に、反プーチン派のロシア人もいる。


ロシア側でも、戦争が長引けば犠牲者が益々増えて厭戦気分が広がるため、ロシアでは核兵器の使用による早期終結が提案されているので、一日でも早く停戦すべきだ。ロシアは今回の戦争を、ウクライナのロシア民族を守るためだけでなく、ロシアの主権が守れるかどうか、つまり、「生きるか死ぬか」の戦争と捉えている。

 

プーチンらが度々核兵器に言及しているのは張ったりではなく、警告だ。万一、核戦争になれば、世界一の規模のアメリカ軍基地があり、最前線国家である日本はアジアのウクライナなので、間違いなく核攻撃される。三番目の原爆も日本に落ちるかもしれないからだ。

 

 

★★紛争直前まで病院で活動 国境なき医師団・白根さん「全く別の場所のよう」

 

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イスラエル軍がガザの病院突入「司令部あった」、紛争直前まで病院で活動 国境なき医師団・白根さん「全く別の場所のよう」【Nスタ解説】|TBS NEWS DIG  2023.11.16

●白根麻衣子さんは、紛争直前の10月5日まで、ガザ最大の「シファ病院」で『国境なき医師団』の一員として活動していた。その白根麻衣子さんはTBS側の「病院に入る際、ここには入らないで欲しいとか、この先には地下トンネルがあるとか、そういった説明はあるのでしょうか。」という質問に、「全くありません。私が病院に訪れたとき、トンネルや武器があるというのは、聞いたことも見たこともありません」と返答している。

 

また、病院の地下にハマスの司令部などがあると主張して、「シファ病院」に突入したイスラエル軍は、病院には武器があるとか、MRI室には作戦司令部があり、多くの武器が見つかったと発表した。しかし、須賀川拓記者は、MRI室に「銃器・弾倉など常備すれば強力な磁場により発熱・爆発の可能性がある」とし、イスラエル軍が銃器・弾倉など置いた可能性もあると指摘した。また、この番組の井上キャスターも、「制圧したのであれば、その映像を証拠として公開するはずですが、それを公開していない」と、イスラエルの主張に疑問を呈した。

●10月15日、国連の安全保障理事会ではアメリカが棄権したので、「人道的停戦などを求める決議案」が採択された。しかし、これまでも、国連決議を無視してきたイスラエルは、停戦には応じない可能性が高い。また、イスラエルの西岸地区での入植活動を認めたアメリカは今後も、イスラエルへの軍事援助を続けるのでパレスチナ人の苦悩は続く。

 

そもそも、1947年の「パレスチナ分割」決議は、国連憲章の基本的人権の理念に反する国連憲章違反であり、無効。パレスチナ人の祖先が3000年以上も前から住み続け、あの十字軍と何度も戦って守り抜いたパレスチナ人の郷土を、たった1回の決議で奪ったからだ。

 

家に突然侵入してきた強盗集団が、何日も家に居座り続けたので、家人側が強盗を追い出そうとしたら、「暴力を振るうなんて酷い、テロリストだ!」と言っているのが、ハマスを「テロ組織」としているイスラエルや欧米諸国、そして日本だ。

 

国連の決議よりも、国連憲章の方が上位にある。強盗集団であるイスラエルには、イランが主張しているように自衛権など無い。さしあたり、イスラエル人はパレスチナ人から奪った土地を全て返し、パレスチナ人側はイスラエル人を許して、パレスチナの砂漠地帯に移住するのは認め、両者を中立の国連が管理するしか、当面の解決策は無いだろう。

 

日本も、敵対していた弥生人系(ヤマト王権)と縄文人系(蝦夷や隼人、熊襲、アイヌ、琉球人)とが和解した国とも言える。パレスチナ人とイスラエル人のように、殺し合ってきた集団が融和して一つの国を形成し、多民族国家となった例はアメリカや中国、ロシアなど、世界中に沢山あるので、将来的には両者で一つの国を造ることも可能かもしれない。

 

●更に言えば、そもそもユダヤ人やウクライナ人、クルド人などが、自分たちだけの国家を造ろうとするのは、現に民族国家があるからだ。GDP1位の中国や2位のアメリカ、3位のインドのような大国が主導して世界政府が樹立され、現在の国家が非武装の県のような共同体に改組されれば、世界中の分離独立運動は必然的に消滅する。

 

★:アメリカやインドが、中国と社会主義陣営を形成して世界をリードする可能性はある。アメリカでは18歳から29歳の若者たちの5割以上が社会主義支持に変わったからだ。また、インドの国民議会派は中道左派政党。他にも人口9000万人以上と、人口が3000万人以上の2つの州で政権を担当するほど有力な社会主義政党が複数あり、東部インドの森林地帯には日本と同じ面積を支配する毛沢東派のゲリラ組織ナクサライトも健在だからだ。

 

なぜなら、世界政府が樹立されているに独立するということは、世界から孤立することになってしまうからだ。戦争を防止して日本人が生き残るためにも人類は世界政府の樹立を目指すべきだ。更に、世界政府の管理下で各民族間の融和が進み、戦争が何百年も起きなければ、武装した中央集権的な世界政府自体の非武装化が可能となる。

 

これが、マルクス派の一切の権力を無くそうとする「国家の死滅」の理念だが、既に、この理念の実現はマルクス派だけでなく、中央集権的な組織を嫌い、分散型自律組織のDAOを実現しようとしている渡辺創太氏のグループが、ブロックチェーン技術を活用して試み始めている。

 

●欧米諸国やソ連が、ホロコーストとは関係が無いパレスチナ人を犠牲にしてイスラエルを建国し、自国のユダヤ人を移住させて、国内の厄介なユダヤ人の人口を減らそうとしたから、この戦争は起きた。また、長年、この歴史的な不正義を見て見ぬ振りをしてアメリカに従属し、世界から見捨てられたパレスチナ人を絶望させてきた日本にも責任がある。

 

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備忘録(2023年11月17日)

 

★★伊藤貫の真剣な雑談】第16回「プーチンの知恵袋、セルゲイ・カラガノフ!!」[桜R5/9/30] 4

 

ロシア随一の軍事戦略家カルガノフ教授と伊藤貫氏の団塊の世代論

 

★当ブログは、「新日本文化チャンネル桜」や伊藤貫氏の改憲論や核武装論は支持しない。しかし、在米30年で、アメリカの政治家や官僚と人脈がある伊藤貫氏は、反中国の保守派でありながら、アメリカと日本の政界の真の姿を暴いている点は高く評価する。

 

「新日本文化チャンネル桜」は、登録者数 14.4万人のチャンネル

伊藤貫の真剣な雑談】第16回「プーチンの知恵袋、セルゲイ・カラガノフ!!」[桜R5/9/30]

 

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切り抜き 真剣な雑談】第16回「プーチンの知恵袋、セルゲイ・カラガノフ!!」[桜R5/9/30]

出演:伊藤貫(国際政治アナリスト)

 

<以下略>


<要約とコメント緑>

 

①ロシア文明は、欧米の自己中心主義的文化とは真逆の、自己が帰属する共同体への貢献を生き甲斐としている集団主義的な文化なので、ロシア人は、戦前の日本人と良く似ている

 

●ロシアの歴代大統領の政治顧問で、プーチンの懐刀セルゲイ・カルガノフ氏は、ロシアで一番影響力のある政治経済学者兼、軍事学者だが、文明論に関しても論文を書いている。と言うのは、彼に言わせると、国際政治経済学と文明のあり方は切り離せないからだ。それで、彼はロシアが目指している国家の理想はどういうものかとか、ロシア人とは一体どういう人たちなのかを解明することが重要だと言う。

なぜ、彼がこのように考えるようになったかと言うと、1990年代のエリツィン政権の時代の酷い経験があるからだ。ソ連の崩壊後、アメリカはロシアの経済エリートと組んで、ジャーナリストのナオミ・クラインが著書で『ショック・ドクトリン』と呼んだ急激な経済改革をさせて、ロシアを崩壊寸前にしたからだ。


この時、ロシアの資源は市価の2~3%の価格でアメリカのゴールドマン・サックスやジョージソロスなどの金融業者に売られ、彼らは40兆円~80兆円もの利益を得るという略奪を行った。また、これらの金融業者と組み、大儲けしたロシア人エリートの8割は、ロシアとイスラエルの二重国籍者のユダヤ系で、彼らの中には1人で数千億円から数兆円も稼いだ者もいたという。

 

★:ロシアもユダヤ人差別の国だったので、ロシアのユダヤ人には、ロシアを憎む者がいても不思議ではない。
 

その結果、ロシアのGDPや個人所得も5、6年で半分になり、最後には年金や福祉予算も廃止となって、何百万人ものロシア人が貧困やアルコール中毒で死亡した。その結果、男性の平均寿命は、ソ連崩壊後の10年間で67歳から57歳と10歳も短くなった。これは17世紀の「30年戦争」並みの歴史的大惨事だった。

 

★:この頃、プーチンも副業で夜にはタクシー運転手をしていたという。当時モスクワに赴任していたCIAや国務省の担当官が、このような犯罪行為をしたら、将来必ず正常な米露関係を破壊すると危惧して、ワシントンの上司に報告したが全て握り潰された。また、欧米のBBCやニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストのような一流マスメディアも、ロシアの惨状を報道せず、後に彼らも、この分け前を得て潤った。

マスメディアが真実を報道しないため、選挙や世論調査は、マスメディアによるウソ報道の効果を確かめるテストでしかなくなった。ジャニーズの件さえ報道しなかった日本のマスメディアはもちろんだが、欧米の民主主義は半身不随状態だ。


●ナショナリストのプーチンは、これらの腐敗したエリートを一掃したので、今でも絶大な人気がある。こうした事態が起きたので、カルガノフ教授はロシア人とはどうのような民族なのかと深く自省し、彼はロシア文明と欧米の文明の相違点について、以下のように説明している。

 

欧米の文明は、「今だけ、カネだけ、自分だけ」という自己中心主義の個人主義的文化と断定する。一方、ロシア文明は家族、社会、国家、神、つまり自己が帰属する共同体と神への貢献に意義・価値を見出す集団主義的な価値観の文明とし、カルガノフ教授は、欧米のような(極端な)個人主義文明は、やがて滅びると主張している。

 

★なぜ、滅びるかと言えば、そもそも、自分だけの利得に生きる欧米の資本主義文化では、社会を維持出来なくなるからだ。たとえば、株式市場では誰もが、自己の経済的利得を目指して活動している。しかし、スポーツ競技には審判が必要なように、株式市場にも、「インサイダー取引」などの不正を許さないという道徳重視の人たちが担うべき「証券取引等監視委員会」が必要だ。このような審判的な機関の統制無しには、株式市場は成り立たない。

 

ところが、資本主義社会は経済的利得を原理・原則とする社会。この社会では毎日、メディアで貨幣を万能の神とする「貨幣教」の「お得ですキャンペーン」が流される。つまり、資本主義社会では現実の社会も貨幣が神化しているから、誰もが、「経済的な損得を判断基準に生きよ、さもないと痛い目に遭う」と日々洗脳されている。すると、道徳的活動に意義を見出す人材で構成すべき「証券取引等監視委員会」の職員も、徐々に「貨幣教」に洗脳されてしまうので、やがて、まともには機能しなくなる。

 

これは、共同体への献身を生き甲斐とする人材が担うべき政治家や官僚などの公務員も同じなので、社会は徐々に腐敗・堕落し、今のアメリカのように崩壊寸前となる。学校で、いくら道徳を教えても、家に帰れば家計のやり繰りに日々悩む親を見るので、子どもは道徳規範を守るよりも、お金を稼ぐ方が大事だと確信する。

 

●伊藤貫氏によると、今のアメリカのワシントン・ポストや、ニューヨークタイムズなどの「一流紙」も、政府のウソを隠蔽して、1990年代にはロシアから搾取した莫大な利益の一部を受け取り、大儲けをしたという。

 

また、伊藤貫氏によると、アメリカではNPOを通して議員に政治献金した場合、一切公表されないため、超富裕層は自前のNPOを設立して巨額の献金をしている。何億円、何十億円もの巨額の資金を、NPOを通して特定の政治家に献金し、超富裕層が必要とする法案を成立させているから、アメリカ民主主義など既に崩壊している。民主主義の条件は選挙だけではない。

 

★資本主義国家では、経済的利得が価値基準となり、人は幼児期から凄まじい<競争>圧力に晒される。ストレス国家日本では、毎年、500人前後の未成年が自殺するほど「ウツ病」が国民病となって蔓延する。それで、やがて日本も内部から崩壊するかもしれない。

 

資本主義国家では、海外への工場移転や、富裕層の海外移住サービスでさえも、正当なビジネスとなるほど国家は軽視されるので、やがて、国民や民族の紐帯も弱体化して国民の世界市民化が進むという良い面もある。もちろん、それでも豊かな社会なら、直ぐには腐敗社会にはならないが、腐敗も間違いなく進む。

 

17世紀末に即位したピョートル大帝以降、ロシアは欧米の文化を取り入れて近代化してきたので、ロシアにも、欧化した人が大勢いる。しかし、確かに、ロシア文学には、これをテーマにしたと思われるドストエフスキー「白痴」、ノーベル文学賞を受賞したソルジェニーツィン「イワン・デニソビッチの一日」という作品がある。

 

「白痴」の主人公ムイシュキン侯爵は、ドストエフスキーが、この世で最も美しい人物を描こうとして造形した人物。結局、この世で最も美しい人物は称賛されるどころか、欧化した普通の人から見れば、世間知らずの「白痴」と見なされてしまうことで、当時の欧米の価値観・文化に汚染されたロシア社会を、ドストエフスキーは鋭く批判した。

 

当初、その余りに「無私」なムイシュキン侯爵を馬鹿だと罵っていた美人悪女ナスターシャも、最後にはムイシュキン侯爵が、この世で最も美しい人物だと認める感動的ストーリー。つまり、ナスターシャも、元々はムイシュキン侯爵と同じ価値観の持ち主だった。しかし、彼女の過酷な人生が、それを心の奥底に追いやっていた。

 

ところが、ムイシュキン侯爵の登場がナスターシャに、「赤いキリスト」ゲバラやアフガン人に献身した中村哲氏のような人こそが、真に美しい人というロシアの伝統的価値観を蘇らせた。ドストエフスキーは「カラマーゾフの兄弟」にも、ムイシュキン侯爵のような人物アリョーシャを登場させているし、「罪と罰」のソーニャ、「地下生活者」のリーザなどもロシアの民族文化の神髄を体現した人物ではないか。

 

★ソルジェニーツィンの「イワン・デニソビッチの一日」の主人公イワンは、無実の罪で「ラーゲリ」に入れられたロシアの民衆の代表のような人物で、「ラーゲリ」での強制労働にも、生き甲斐を見出すような人物。要するに、ロシアの欧米化したインテリであれば、「ラーゲリ」での強制労働では、自分が働けば働くほど自分を有罪にしたスターリン主義体制を強化してしまうカラクリに気付く。それで、「ラーゲリ」での労働は、いわゆるマルクスの「疎外された労働」そのもののような労働であり、心が欧米化したインテリなら、そのような労働を呪詛しても、意義や生き甲斐を見出すことはあり得ない。

 

しかし、イワンの捉え方はインテリたちとは違う。イワンの強制労働の捉え方は、次のように例えられるのではないか。たとえば、イワンが「ラーゲリ」の所長から、病院の建設を命じられた場合である。この場合、イワンが病院を建設すれば、さしあたりスターリン主義体制への民衆の不満が減少し、自分を「ラーゲリ」に閉じ込めた不公正な体制は強化されてしまう、つまり、「ラーゲリ」での労働は「敵に塩を送る」行為だ。

 

しかし、病院は体制の如何を問わず、民衆には意義がある。病院の建設労働はロシア社会への貢献労働でもあるから、イワンのようなロシアの民衆は素直に、この意義を重視して強制された仕事でも、一生懸命働き、仕事の遣り甲斐も感じられる。ロシアの民衆の共生的精神が、支配者に悪用されてしまうわけだが、これはソ連以前のロシア帝国時代の「神自身の良心の命ずるところに従って統治する」皇帝(事実上の神)に奉仕していた農奴も同じ。カルガノフ教授に言わせれば、この共同体や神への貢献がロシア文明の特徴的精神性ということになるのだろう。

 

★われわれ近代人の見地からは、封建時代の農奴たちは、皇帝や法王に騙されて搾取されていた憐れむべき人々だが、実は貧しくとも、われわれ現代人よりも幸福だったかもしれない。なぜなら、キリスト教徒の彼らは日々、イワンのように労働で神への奉仕という最高の仕事をして生きていたからだ。彼らにとっては、神への奉仕ほど普遍的で、意義や価値がある仕事は他には無い。

 

一方、日本への奉仕を生き甲斐とする伊藤貫氏のような真性ナショナリストの場合は別だが、資本主義下で生きる大半の日本人の場合、せいぜい家族や地域共同体への奉仕止まりで、こじんまりとした小市民的幸福となる。それで、貧しくとも、「農民は労働で、貴族は剣で、聖職者は祈りで神に奉仕している」と思い込んでいた封建時代の農奴の主観では、日々、神という普遍的絶対者に奉仕することが可能だったからだ。もちろん、それでも飢饉や戦争で生活が破壊されれば、彼らにも「見えない関係」が見えるようになり、エネルギッシュなイワンたちは、腐敗した皇帝や聖職者を倒すロシア革命を起こした。

 

★日本人ほど、ロシア文学を好んで読む国民はいないという。やはり、両者は似ているから、日本人はロシア文学の登場人物に自己と同じ人物を見出せるからだろう。実は明治維新まで、日本の文化も集団主義のロシア文明に似ていた。しかし、明治維新後の資本主義の導入や敗戦での自信喪失と欧米文化の全面的な移入で、この精神や文化は衰弱したが、それでも1960~1970年代までは生き延びていたので、ベトナム戦争反対運動が誘発させた「世界革命」の波に、日本の学生や青年層も呼応できた。

 

しかし、この時の敗北が日本人の思想を大きく変え、それ以来、共同体への貢献に意義を見出すロシア的な文化は廃れ始め、代りに自分のためだけに生きる欧米の資本主義的文化が社会の隅々に浸透した。その結果、戦後の欧米式教育で育った村上ファンドの元代表・村上世彰氏は、「お金儲けは悪いことですか?」(つまり、金儲けは良いことだ)という衝撃的発言で日本社会を凍らせた。

 

子ども殺しは、ほぼ普遍的な「悪」だが、それ以外の善悪は「社会環境」が決定する。日本兵が毎日、大量に死んでいた先の大戦中、村上世彰氏のように「金儲けは良いことだ」(人はパンだけで生きるもの)と公言したら、守銭奴として袋叩きにされただろう。

 

しかし、戦後に平和な時代が到来して「復興」がスローガンとなると、当初は誰も口には出さなかったが、「復興」の裏側にあった、今やアメリカ人自身も信じなくなった「アメリカン・ドリーム」の「金儲けは良いこと」という文化が日本に浸透し、日本にも多数の村上世彰氏が現れた。

 

個人投資ブームの現在では、誰もが悪びれもせずに「金儲けは良いこと」と口にするし、村上世彰氏は、公然と税金が安いからシンガポールに移住すると言って日本を捨てたが、ナショナリストたちは批判しなかった。

 

1980年代以降の日本では、「万国の労働者よ、団結せよ!」という「国際主義」(インターナショナリズム:自国民だけでなく、全人類に基本的人権を認める思想)の理念で、全世界の労働者階級、つまり人類への貢献に意義を見出すマルクス派だけでなく、天皇を生き神とする真正右翼や保守派も壊滅した。

 

そのため、元首相の安倍晋三のような「売国右翼」や、著書を売って儲けることが目的の「商売右翼」の全盛時代が始まり、伊藤貫氏のような日本への献身に意義を見出す真正の保守派も極少数派となった。

 

(ただし、意外だが村上世彰氏本人はボランティア活動にも熱心だそうなので、単なる守銭奴ではないかもしれない)

②ロシアのトップ・エリート層のカルガノフ教授は、同じエリート層の裏切りを研究し、その成果から、伊藤氏は日本とロシアのエリートの共通点を見出す

 

●伊藤氏によると、一見すると、粗暴のように見えるロシア人だが、決して「狡猾な悪人」ではなく、大半のロシア人は、びっくりするほど正直な人や気取らない人も多いと言う。弱点は自発性が無い点。それで、政府が方向性を打ち出すと、素直に従う人たちが多いと言う。

 

1988年から1991年にかけてソ連が崩壊した直後、ロシア人は欧米流の自由主義や民主主義、資本主義に期待して信じた。しかし、これらが導入された1990年代のエリツィン政権時代、ロシアは大混乱に陥り、欧米の金融業者に最大で80兆円もの国富を奪われ、数百万人が貧困で死亡した。欧米の民主主義に期待したロシア人は、クリントン政権の略奪政策で酷い目にあった。

 

ところが、奇跡が起きた。1980年代初頭には、ロシア正教の信者は3割前後だったが、その20年後の1990年代末期には、何と国民の7割がロシア正教の熱心な信者になり、国民の9割が西側の資本主義や民主主義、自由主義を信用しなくなった。

 

ロシア人は、その「魂」による動機づけがないと動かない民族なので、キリスト教信仰が劇的に復活した。これは、最近の10年間で教会が3万も建てられたことからも事実。ロシア人の多くが「魂」の存在を本気で信じ、精神的な拠り所を求めてる。


●ソ連崩壊後、西側で対ロシア政策を指揮していたのはクリントン政権のゴールドマンサックス前会長でユダヤ人のロバート・ルービン。そのため、騙され易い人が多いロシア人の多くはユダヤ系の金融業者に酷い目に遭わされたと思っている。ロシア人は、「共産主義」(スターリン主義)を信じて失敗し、エリツィン時代は民主派を信じて失敗した。

 

★伊藤氏の共産主義、つまり、ソ連型社会主義とは、「国家社会主義」なので、これは誤解だ。しかし、ソ連の「国家社会主義」で、ロシア人が酷い目にあったのは事実。ソ連崩壊後、欧米やIMF、資本主義と民主主義を吹き込まれると、また信じてしまい、1990年代のロシアは惨憺たる状況になった。

 

ところが、この1990年代のロシアの惨状を、アメリカの一流紙とされているニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、イギリスのBBCなどのマスメディアも隠蔽したのでロシア国民は欧米諸国を憎悪し、信用しなくなった。
 

●カルガノフ教授は過去1000年の歴史から考察し、集団主義のロシア人は何らかの集団に帰属し、その集団の中で頑張れと命令されるともの凄く頑張るので、個人主義的な民主主義や自由主義は適さないと確信した。また、同教授は欧米の経済学と政治思想史、国際政治学などを深く研究した後、ロシアに、欧米の拝金主義的経済学は通用しないと気付き、過去20年間、ロシア人は欧米の真似はするなと何度も説いてきた。

 

規制緩和の新自由主義派であるシカゴ学派は、人間を金儲けする生物と規定する拝金主義の経済学。ところが、ロシア人には欧米人のような物質的な繁栄を求める「パンのみに生きる」人は非常に少ない、ロシア人は金儲けでは動かないとカルガノフ教授は言う。

 

そのため、ロシア人には欧米の経済モデルは無効だし、(生産力を向上させて、豊かな生活を実現しようとする)コミニズムも、ロシア人には向いてないとカルガノフ教授は言う。

 

★保守主義の伊藤氏やカルガノフ教授は、左派が自由を掲げながら、現実のソ連や中国が不自由な社会となったことに反発しているだけではない。そもそも自由とは、現実には継承されてきた様々な「伝統的制度」からの自由でしかないために、自由理念、そのものに反発している。

なぜなら、人間の理性・知性の限界を認めるのが保守主義のパラダイムだからだ。そのため、保守主義は不合理な伝統であれ、これまでは何とか人類社会を破綻させることなく、維持してきた面もあることを重視して、改革を慎重に考える立場だからだ。

保守主義が、人間の理性・知性に限界を認める点は、決して間違いでは無い。しかし、改革だけが「試行錯誤」というわけではなく、人間の活動は何でも「試行錯誤」。それでプラン通りに実現するプロジェクトは少ない。伝統を守ることも「試行錯誤」であり、われわれの祖先たちは、「試行錯誤」しながら伝統を守ってきたとも言えるから、伝統を守るために伝統も変化させてきたのが人類。

 

要するに、改革と保守は相対的な差異でしかないから現代では思想的な焦点ではない。保守主義者は保守という点よりも、人間の理性・知性に限界があるという思想的立場に拘り、近現代人の理性・知性を過度に高く評価する科学主義=人間主義に反対すべきだ。

また、保守主義=ナショナリズムは他民族の基本的人権を軽視する傾向がある。しかし、近代に成立した基本的人権思想は、他民族の基本的人権も認める点が、その神髄である普遍的な政治理念だ。それで、自民族優先の保守主義者=ナショナリストは、近代の基本的人権思想を理解していない。

 

●欧米の個人主義的文化では、個々人が全て自己決定することが大事とされている。この自己決定で、自分の夢を実現する「自己実現」や、自分の能力や性格を完全に発達させて幸福を得る「自己充足」 、自分を価値あるものと感じる「自己肯定感」を得ることが、人生の目標とされている。


一方、カルガノフ教授によると、ロシア人は自尊心を向上させるために頑張れ、競争しろと言われるのが嫌いで、特定の集団に属して友人関係を大切する民族。ロシア人が一番、モチベーションを感じるのが家族と祖国、それから神への奉仕であり、そのために生きてる民族というのがカルガノフ教授のロシア人観。それで、ロシア人は集団主義的な戦前の日本人に良く似ている。

 

★この個人主義が誕生した背景の一つが、産業革命が起きた19世紀にほぼ完成した機械論的自然観。これは14世紀頃から、多くの部品から成る機械式置時計の普及がもたらした自然観。この自然を置時計のようにルーティンワークをする一種の機械と見なす自然観では、(自然や機械の)全体ではなく、(部品)部分を真に実在している実体と考える。これが社会観にも影響を与え、社会や国家よりも、個人を重視するリベラル派を産み出した。

 

機械論的自然観では、「その部分の決定論的な因果関係のみ、特に古典力学的な因果連鎖のみで、解釈が可能であり、全体の振る舞いの予測も可能、とする立場」(ウイキペディア)で、広い意味では自然科学的唯物論であり、全体を実体と考え、ファシズムの哲学的根拠となる実体主義の全体主義的有機体論よりもマシではある。

 

多くの現代人のように、全体ではなく、部分こそが実体とする実体主義的な機械論的自然観・世界観を真理と確信すると、空気や水の説明では、それらを構成する1つ下のレベルの酸素(分子)や水素(分子)で説明し、水素(分子)も1つ下のレベルの原子、原子も1つ下のレベルの陽子や電子の組み合わせとして説明されると現代人は、空気や水というものが理解できたような気がしてしまう。

 

しかし、部分重視も、全体重視も両方共に実体主義的な間違いであり、実は関係こそが実体的なものと考える仏教などの関係主義の東洋的世界観の方が優れた世界観だ。この世界観が、今から2500年も前に孔子の「罪を憎んで人を憎まず」=「古之聴訟者、悪其意、不悪其人(昔の裁判所では訴訟を取り裁くとき、罪人の心情は憎んだが人そのものは憎まなかった)」という関係主義的な人道主義的人間観さえも産み出した。仏教の関係主義は、「自分は凡人だとか悪人」と思い込んで悩んでいるヨーロッパ人も救う力がある普遍的世界観なので、欧米人も仏教の「空」の思想を歓迎するだろう。

 

●ロシアで最高のエリート層に所属してるカルガノフ教授は、自分と同じロシアのエリート層が、ロシア人を裏切ってきたことに関心を持ち、多くの論文で原因を究明してきた。彼は、ロシアのエリート層が最近30年間、いかにロシア国民を裏切ってきたかということを多くの論文で書いてる。

 

ワシントンに30数年間住んで、欧米の政治経済学を学んできた伊藤氏も、カルガノフ教授と同様に、今の欧米の学問には、民族の文化、気質、価値観には多様性があるという視点、人間は合理性だけでなく、民族特有のソウル、スピリットによって動かされるという視点が全く欠けていると批判する。

 

伊藤氏も日本人はロシア人に似ていると言い、欧米の学者が言ってる社会科学や人文科学のモデルを日本に適用する団塊の世代の学者や官僚の欧米至上主義を、極めて軽率な判断と批判する。と言うのは、欧米の文化のパラダイムは、自己実現を目指す個人主義。一方、日本人はロシアに良く似た集団主義文化だからだと言う。

 

★カルガノフ教授や伊藤氏の人間観は、マルクスの「上部構造と下部構造」論に似ている。廣松渉氏によれば、上部構造とは人間の意識界(法や道徳、宗教的教義、科学理論などの様々な信念体系)なので、人類の集団毎に同一性もあれば差異性もあるのは当然。

 

また、下部構造とは、人間の自然界や人間界での全関係のことなので、下部構造を経済的諸関係に限定する経済決定論的なマルクス解釈は誤解。人間の全関係(下部構造)は、上部構造の諸イデオロギーを通して解釈されるという現在では常識化している人間観がマルクスの根本思想である「唯物史観」の神髄。

 

唯物史観(史的唯物論)の神髄を、「人間社会にも自然と同様に客観的な法則が存在しており、無階級社会から階級社会へ、階級社会から無階級社会へと、生産力の発展に照応して生産関係が移行していく」(ウイキペディア)とする経済決定論的な歴史の発展史観、歴史法則と解釈するのも誤解。

 

歴史には自然科学的法則性、決定論的な法則性は無く、歴史は蓋然的にしか予測できない。有名なマルクスの段階論的歴史発展論は、マルクス自身が「おおよそ・・・」と言いながら述べたものに過ぎない。

 

③ポーランドへの先制核攻撃論を提案するロシアのトップクラスの国際政治学者たち


●カルガノフ教授が去年6月、少なくとも欧米諸国の国際政治学界や軍部、情報機関にとって、非常にショッキングな「困難だが必要」というタイトルの論文を発表した。この論文の影響で、アメリカ政府の対ロシア政策も変わったと伊藤氏は言う。

 

この2つの非常にショッキングな点を指摘している論文が世界中に広まると、アメリカの覇権が決定的に弱体化するので、日本や欧米のマスコミは、この論文をほとんど報道しなかった。一つは、核兵器は実際に使える兵器で、ロシアは今回の戦争で核兵器を使う可能性があること。ロシアには核ミサイルをNATO諸国に打ち込む覚悟がある、つまり、プーチンの核発言は単なる張ったりではなく、警告と言っている。

 

★ロシアは、19世紀初頭のナポレオン軍、そして、2つの世界大戦でドイツ軍に国土を蹂躙されて酷い目にあった。ウクライナがNATOに加盟したら、ウクライナにアメリカ軍の基地が造られる可能性が高く、ウクライナ北部からモスクワの間には機甲部隊の進撃を阻む自然障害が無いこともあり、ロシアには非常に大きな脅威となる。

 

更に、決定的なことは、アメリカの核ミサイルは、バレンツ海の戦略ミサイル原子力潜水艦からモスクワには10分、ルーマニアの米軍基地からだと12分掛かるが、ウクライナ北部からだとたったの約5分で届くことだ。そのため、ロシアが核ミサイルで奇襲攻撃された場合、プーチンが報復核攻撃の命令を出す前に、本物の核攻撃か確かめる時間や、国防大臣か総参謀長の了解を得る時間が必要なので、報復核攻撃命令が出せずに死ぬ可能性がある。つまり、ロシアは、「相互確証破壊」能力を失う可能性がある。

 

★反ロシアの強力な勢力があるウクライナのNATO加盟は、アメリカなら、カナダやメキシコに反米派の強力な政権が誕生するのと同じ。ウクライナがNATOに加盟すると、ロシアはアメリカに不満があっても、簡単には批判できなくなる。そのため、ロシアの政治的エリート層はウクライナのNATO加盟は、事実上のロシアの主権喪失、アメリカの属国化と見なしている。

 

つまり、今回の戦争は、ウクライナに住む800万人以上のロシア人保護もあるが、ロシアが自国の主権を維持できるかどうか、つまり、「生きるか死ぬかの戦争」でもあるので、核兵器の使用もあり得る。


ロシアとの戦争は核戦争になるので、アメリカはロシアを戦争で直接撃破することは出来ない。アメリカがロシアを制するには、ウクライナのような強烈な反ロシア派が存在する国の軍を、アメリカ軍の代理で戦わせるしか、他に方法が無い。

 

アメリカの政治的エリート層は、ウクライナをNATOに加盟させれば、ロシアはアメリカに不満があっても、我慢するしか無くなるからこそ、アメリカはウクライナの独立以降、6000億円前後も投入して反ロシア派の政治勢力を育成し、反ロシア政権の樹立を狙ってきた。


もう一つは、ロシアがNATO加盟国に、核ミサイルを1、2発打ち込んでも、アメリカは絶対にロシアと核戦争はしない点だ。つまり、アメリカの「核の傘」は偽物ということ。カルガノフ教授は一時期、ロシア政府の核戦略の専門家だったので、アメリカの核戦略は全部知り尽くしてる。アメリカは、1960年代からNATO諸国や日本に「核の傘」を提供すると言ってはいたが、当時からソ連はウソと見抜いていた。

 

●現在のヨーロッパ方面の安全保障体制は、①通常兵器での軍事均衡と、②NATOとロシアの核兵器の「相互確証破壊」能力の保持による平和という2本柱。ところが、②は、実際には機能しないというのが真実。

 

これが破壊的なのは、②が幻想であれ、これまでは、この幻想がヨーロッパの安全保障体制を支えてきたからだ。アメリカの「核の傘」が幻想なら、ヨーロッパ諸国は核武装するしかなく、核保有国が一気に増えかねない発言だからで、これは、核を他の4ヶ国と独占したいアメリカにとって、ものすごく都合が悪い発言だ。

 

核兵器を保有する英仏を除くヨーロッパ諸国と日本は、アメリカ側から、「君の国はフリーライドしてきた」と言われれば、その通りのように思えるからだ。この「負い目」のせいで、これまでは、アメリカ側の要求を最大限、受け入れてきた。ところが、この「核の傘」がウソと知れば「負い目」は消滅し、アメリカに従う義理は無いことになるから、アメリカには都合が悪い発言だ。


★:これまで、英仏以外のヨーロッパ諸国と日本や韓国が、自主的な核抑止力を持とうとすれば、アメリカは同盟国なのに、アメリカを信頼していないということになって波風がたつ。場合により、アメリカのリーダーシップに対する「謀反」と決めつけて、これらの国々の核武装を阻止できるからだ。

 

要するに、アメリカにとっては西側陣営で、核を事実上独占することが一番重要。アメリカの軍事同盟政策は同盟諸国に核兵器を持たせないことが第一の目的で、「核独占政策」ということだ。アメリカの「核の傘」は無いと気付けば、NATO諸国、特にドイツは不安になり、独自に核武装を始め、事実上、NATOは崩壊し、ヨーロッパを支配できなくなる。

 

★:日本人も不安になり、独自に核武装するべきという意見が有力となって、核武装を許さないアメリカと対立し、日米安保体制は崩壊するかもしれない。

 

●このウソで、アメリカは「我々の命令を聞け」、「アメリカに協力しろ」と言え、アメリカは軍事同盟諸国を属国にしてきた。ところが、このカルガノフ教授の論文が事実ならば、ヨーロッパや日本にとっても、アメリカのとの同盟関係の意義は減少する。もしくは、同盟関係があるがゆえに自主防衛能力、自主的な核抑止力を持てなくなるから、むしろ、同盟関係はマイナスに作用することもあり得る。


カルガノフ教授の「困難だが必要」という論文は真実だから、日本も自主的防衛能力、核抑止力を持つべきと伊藤氏は言う。カルガノフ教授は、現在の国際的安全保障体制=『NATOとロシア、中国とアメリカの「相互確証破壊」能力の保持による軍事力の均衡による平和』という根幹を破壊する事実を暴露した。

●カルガノフ教授がこの論文を書いた1、2週間後、ロシアで有力な国際政治学者トップ5人に入る高等経済大学教授ドミトリー・トレーニング氏が、外交専門誌に論文を掲載し、カルガノフ教授の『アメリカの「核の傘」は嘘』は真実と追認した。

 

トレーニング教授に言わせれば、NATOが今後もウクライナに対して軍事援助を続け、戦争を長期化させるなら、ロシアは多数の死傷者を出し、国力も疲弊させられる。それなら、アメリカの同盟国に核攻撃を加えざるを得ない。核攻撃しても、反撃しなければアメリカの信頼性は地に落ち、NATOは即座に崩壊するからだ。


ロシアで、一番影響力を持つカルガノフ教授とトレーニング教授の2人が、この戦争を長引かさせるのであれば、ロシアはポーランドに対して核攻撃を加え、この戦争を終わらせるとした。それで、ペンタゴンとCIAは大ショックを受けたが、口先だけでは「頑張れ」と言い、これからもウクライナ支援を続けると言ってるが、アメリカ政府は及び腰になった。

 

周知のようにアメリカ国民の半分以上55%とか58%が、もうこれ以上、ウクライナに援助をするなと言い出した。共和党だけなら75%から78%の共和党員が、これ以上の援助に反対と言い出した。それで、アメリカの軍事援助派の立場がどんどん悪くなっているのは事実だ。
 

●カルガノフ教授は、この論文でアメリカがウクライナ戦争を続けたいと思う限り、アメリカは軍事援助を継続するから、ロシアは戦争を終わらせられない。アメリカは延々と戦争を続けさせ、ロシアを経済的に疲弊させるつもりという真実を書いている。

 

つまり、アメリカは軍事的には勝てなくても、延々と戦争を続けさせると推認している。だから、単にウクライナ軍を軍事的手段によって叩きのめすだけではこの戦争は終わらないので、ロシアのトップクラスの国際政治学者たちが、ポーランドへの核攻撃が必要と提起した。

 

④ロシア随一の軍事戦略家カルガノフ教授と伊藤貫氏の団塊の世代論

 

●次にカルガノフ教授が書いているのは、今の西側諸国のリーダーたちは1970年代や80年代の西側諸国のリーダーたちと異なり、核戦争に対して非常に鈍感なことだ。少なくとも1980年代末までのレーガンやミッテラン、コールなどの時代は、核戦争をもの凄く心配していた。核戦争を避けることが西側諸国のリーダーの最優先の課題だった。


ところが、長い間、欧米に住んでいた伊藤氏は、1990年以降の団塊の世代は日本人に限らず、ヨーロッパ人やアメリカ人、そして世界中のこの世代は考えが浅薄で信用できないと言う。この世代がリーダーとなった1990年代から、西側の判断力は幼稚になった。単純な理屈を振りかざして相手を責め立てればそれで良いと思っていると伊藤氏は批判する。

 

NATOを拡大しないと約束しながら、その舌の根も乾かぬうちに、次のクリントン政権はNATOを拡大を決定し、ソ連崩壊後の経済改革でロシアを騙し、米英の金融業者は40兆円から80兆円もロシアから搾取した。


●次のブッシュ政権は、大量破壊兵器の証拠は無いのを承知でウソをつき、イラク戦争を始めた。特に、クリントン政権は非常に酷いイラク制裁を実行した。例えば、1996年のCBSの「60ミニッツ」というニュース番組では、クリントン政権で国連大使と国務長官を務めたオルブライトは、イラクに対する軍事制裁と医療品の輸出禁止で、50万人(60万人)ものイラクの子供を殺した。


それで、記者が「オルブライトさん、あなたこのことをどう思いますか?」と聞いたら、ネオコンのオロブライトは、「ああ、それがどうしたの?」と答えたのだ。次のブッシュ政権は嘘ついてイラク戦争を実行した。クリントン政権からオバマ政権にかけてイラクの民間人は、少なくとも160万人も死んだ。

 

ところが、クリントンやブッシュ、オバマ政権も全然気にしない。その次のブッシュが嘘ついて、イラク戦争を始めたし、オバマ政権はウクライナでクーデターを実行した。シリアとリビアでは内戦も起こした。

 

●オバマ政権は、シリアの内戦に介入してアルカイダや「イスラム国」(IS)に所属するスンニ派の過激派組織を応援して、シリアのアサド政権と戦争をさせてシリア人を70万人も殺した。同時に、オバマ政権はリビアに空爆を行い、カダフィを殺した結果、リビア人は内戦突入で80万人も死んだ。

 

オバマは、シリアとリビアで民間人150万人を殺し、ブッシュ・Jが始め、クリントン政権が継承したイラクでも、150万人か160万人も殺し、この3つの戦争の合計で300万以上もの民間人を殺した。ところが、団塊の世代のアメリカの政治家たちは、「300万人が死んだて?」、「それがどうしたの?」と言って済ませてしまう。

 

そういう連中が2014年にウクライナで、国務省のビクトリア・ヌーランドが謀略的クーデターを起こさせてプーチンを挑発し、今回の戦争を引き起こして、ロシアを破壊しようとしていると伊藤氏は指摘する。それで、ついに、ロシアのトップクラスの学者が長期消耗戦でロシアを破壊しようとするなら、ロシアはポーランドなどの軍事基地に核ミサイルを打ち込むべきだと提案をした。


●1990年代以降の欧米の指導者は質が酷く、西側の団塊の世代とは関係が無い東ドイツに住んでいたメルケル以外のクリントン夫妻やブッシュ・J、トニー・ブレア、ボリス・ジョンソン、オバマ、バイデンらには、核戦争だけは起こしてはいけないという強い責任感が無いだけでなく、核戦争を真面目に受け止めていない。


要するに、カルガノフ教授は、最近30年間の欧米の指導者層の質がもの凄く下がったと言っている。一方、40年前の欧米の指導者なら、ロシアを追い詰めたら核兵器で反撃してくることぐらいは考えていた。

 

●1980年代の後半に核戦略の一番質の高い専門書十数冊を読んで核戦略に関して一応は専門知識がある伊藤氏は、核戦略勉強したことが無い現在の団塊の世代の70歳よりも若い人達は、核戦略理論の知識がほとんど無い。そのため、ロシアが核兵器に言及しても、張ったりに決まってると無視してしまう。だから、北朝鮮が何十発、何百発の水爆を保有しようが恐れる必要は無いと思っている。

これは、核戦略の専門書を読んだことない日本のマスコミ人にしても政治家にしても同じで、全然気にしないが、核戦略勉強した伊藤氏は、33年前から日本の核武装を主張してきた。それから、日本の外交評論家とか軍事評論家が書いてる核戦略本は水準が低過ぎ、読む必要がないと言う。

例外は、防衛研究所にいた平松氏や陸上自衛隊の矢野氏の2人。一番、質の高い定評のある核戦略理論を原書、オリジナルで読むのが一番良い。とにかく日本は人材不足で、現在の日本がどれほど苦しい状態に追い込まれているか、ということを議論できる人がほとんどいないと伊藤氏は嘆く。

 

驚いたことに、欧米も人材不足で日本と同じ。カルガノフ教授は、30数年前から核戦略の議論ができる人が欧米には、ほとんどいなくなってしまったと指摘している。

 

★確かに日本でも、自民党の前の世代が引退し、代りに安倍元首相のような団塊の世代が政治リーダーとなってからは、政策の質がガタ落ちになった。その原因の一つはおそらく、自民党の前の世代は若い頃、マルクスボーイだった人や、そうではなくとも、マルクスに関する本を一冊ぐらいは読んでいたが、その後の世代は、全く読まなくなったからではないだろうか?

 

マルクス思想、あるいはマルクス派が良く使って広まった「資本主義」や「帝国主義」、「止揚」、「疎外」、「共生」などの言葉や、経済重視のパラダイムは、既に常識化している。そのために日本では、マルクス派の言説とは知らずにマルクスの言葉を根拠にして、マルクスを批判したつもりになるという笑えない事態も起きている。

 

マルクスも神ではないから、時代的な制約もあるのは事実。しかし、既に当時から、世界規模の革命、「世界同時革命」を志向していたマルクスは、ロシアの女性革命家からの質問に答えて、ロシアのような農業国での「一国社会主義」(スターリン主義:国家社会主義)は失敗すると予言していた。ソ連の崩壊は社会主義の破綻ではないし、逆に、マルクスの予想が実証された事態だった。

 

続く


<参考資料>

 

ウクライナ動乱 ――ソ連解体から露ウ戦争まで (ちくま新書 1739) 新書 – 2023/7/6 松里 公孝 (著)

 

isfweb:2023.06.25
ロシアによる核兵器使用はありうるのか:「カラガノフ論文」の重要性
https://isfweb.org/post-22974/
塩原俊彦


日本経済新聞:会員限定記事:2022年11月16日
米ロ対立、妥協望めず長期化必至 ドミトリー・トレーニン氏ロシア国立高等経済学院教授
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD106AJ0Q2A111C2000000/

 

isfweb:2022.04.04
第1回 ウクライナ戦争報道の犯罪
https://isfweb.org/post-902/
浅野健一

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

<休憩>

 

King Crimson - Starless

 

<再録>

 

★★元イスラエル軍兵士の苦悩


🔻2015年、イスラエルの法廷で、パレスチナ人40人以上を殺害した元イスラエル軍兵士による苦悩の証言。

 

PTSDで、夜になるとおしっこを漏らす。犠牲者たちが夢に現れ、私に向かって「なぜ殺した?」と言うんだ。「なぜ殺した?」と。こんなことを言われて、正気でいられるか?

 

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ISRAELI SOLDIER SAYS "I PEE AT NIGHT FOR WHAT I DID TO PALESTINIANS"
 

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【元シオニスト兵士の苦悩】
https://twitter.com/Kumi_japonesa/status/1722444113721872712

 

 

★★「だから私は沈黙を破った」パレスチナを占領するイスラエル兵が告白した“非人間的行為”と苦悩…「人を支配することがいかに不可能で、ひどいやり方になってしまうか」

 

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「だから私は沈黙を破った」パレスチナを占領するイスラエル兵が告白した“非人間的行為”と苦悩…「人を支配することがいかに不可能で、ひどいやり方になってしまうか」【DIGドキュメント×TBS】 2023/11/11