備忘録
2014年以降、ウクライナ国内のロシア人1万数千人を無差別に虐殺したウクライナも悪いが、ウクライナも含めた周辺国のロシアへの恐怖を解消しなかったロシアも悪い。しかし、最も悪いのは2014年に「クーデター」でロシア人大統領を失脚させた米国のネオコンと軍産複合体。即時停戦を!!
神ならぬ人間の言説は全て暫定的なもの従って、随時更新しなければならないので永遠に工事中!
(2023年11月14日) 

 

 

★★「だから私は沈黙を破った」パレスチナを占領するイスラエル兵が告白した“非人間的行為”と苦悩…「人を支配することがいかに不可能で、ひどいやり方になってしまうか」

 

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「だから私は沈黙を破った」パレスチナを占領するイスラエル兵が告白した“非人間的行為”と苦悩…「人を支配することがいかに不可能で、ひどいやり方になってしまうか」【DIGドキュメント×TBS】 2023/11/11

キリスト教、イスラム教、ユダヤ教…3つの宗教の聖地・エルサレム。ユダヤ国家イスラエルが占領後、首都としての既成事実化を進めてきた。エルサレムに限らず、パレスチナ人が暮らす「ヨルダン川西岸地区」の街々を占領し続けるには、大きな兵力を必要とする。

徴兵制のもと、占領軍の兵士となったイスラエルの若者たちは、パレスチナ人を力で押さえつけなければならないストレスにさらされ、人間性を失ってしまうという。

兵役を終えた若者たちが、パレスチナで行った非人間的ともいえる行為を告白し、自国の占領政策そのものに異議を唱え始めた。(2009年9月放送)

 

★:これまで、アメリカが行ってきた数々の戦争について、アメリカを擁護するウソ報道を繰り返し、2001年以降だけでも、数百万人以上の殺害に加担してきたTBSだが、珍しく真実を報道!

 

 

★★元イスラエル軍兵士の苦悩


🔻2015年、イスラエルの法廷で、パレスチナ人40人以上を殺害した元イスラエル軍兵士による苦悩の証言


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ISRAELI SOLDIER SAYS "I PEE AT NIGHT FOR WHAT I DID TO PALESTINIANS"
 

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Kumi@🇮💟🇨🇺☭@Kumi_japonesa

 

【元シオニスト兵士の苦悩】
https://twitter.com/Kumi_japonesa/status/1722444113721872712

 

1/3
イド・ガルラゾン氏:あなた方のために、この手で殺した!「手を血に染めたテロリストがいる」と言われたからだ。あなた方のために、この手で40人以上、殺した。私が殺した!それで、あなたはここで何をしているんだ?

2/3
私は9年前に戦争で負った傷の補償を何ひとつ受け取っていない。数万、数十万シュケルもの金を母が私のために全部支払わなければならないのか?どう思う?物事とはそういうものか?私がガザで負った傷のために、治療費を母が払ってる。誰も責任を取らない。誰も私にセラピーを受けさせてくれない。

3/3
だから、私は不満をぶちまけ、叫ぶのだ。PTSDで、夜になるとおしっこを漏らす。犠牲者たちが夢に現れ、私に向かって「なぜ殺した?」と言うんだ。「なぜ殺した?」と。こんなことを言われて、正気でいられるか?人生で成功を得られるか?

 

<コメント>

 

●支配者の常套手段は、「夷を以て夷を制す」と、「分割して統治せよ」。「夷を以て夷を制す」は、かつて、弥生人系のヤマト王権が、東北地方に住んでいた縄文人系の精強な「麁蝦夷」の征服に手を焼くと、先にヤマト王権に征服された関東地方の「熟蝦夷」を使って、同じ蝦夷の「麁蝦夷」を制定させたように自らは血を流さず、同じ蝦夷同士を戦わせて敵に勝つ方法のこと。

 

イスラエルのユダヤ人は、ロシア軍との戦いで破滅しそうなウクライナ人と同じ。アメリカの支配層WASPはウクライナで、同じスラブ人同士のロシア人とウクライナ人、そして、イスラエルではユダヤ人とアラブ人を戦わせ、ロシアと中東の産油国を制しようとしている。

 

●ユーチューブには、イド・ガルラゾン氏と同じことを訴える元イスラエル人テロリストの動画もある。彼は、1948年4月9日、エルサレム近郊のデイル・ヤシーン村で、子どもや女性107人~254人が惨殺された「デイル・ヤシーン事件」の犯人。70年以上過ぎた今でも惨状を思い出して苦しみ、後悔していると訴えていた。

「1948年4月、ユダヤ人武装組織イルグンレヒの部隊が、エルサレム西部のアラブ人村落のデイル・ヤシーン村を包囲し、村を占拠したのち、老人、女性、子供も含む非武装の村民たちを虐殺した。」(ウイキペディア)

 

●イスラエルを建国するには、単に戦争に勝つだけでなく、何十万人ものパレスチナ人から領土となる土地を奪わなければならない。そのため、当時、ユダヤ人側の軍事部門を指揮していた初代首相ベン=グリオンの命令で、効率的にパレスチナ人を追い払う秘密の策が練られた。

 

イスラエル軍が強制的に、何十万人ものパレスチナ人を国外に輸送する手間を省くには、パレスチナ人自身が逃げ出すようにすれば良いので、テロ組織のイングルとレヒ、そして、準国軍のハガナーにも命令し、デイル・ヤシーン村を襲撃させて村民を皆殺しにし、周囲のパレスチナ人に意図的に広めた。

 

すると現在、パレスチナ人が、ガザの北部から南部に逃げているように、大半のパレスチナ人はパニックに陥って故郷を捨てて、隣国のヨルダン、エジプト、西岸地区やガザ市近郊などの砂漠地帯に逃げ込み、今の難民村ができた。

 

ベン=グリオンは、この事件を部下の責任に転化して、アラブ側に謝罪したが、パレスチナの砂漠に設置した難民村からの故郷への帰還は許さなかった。そして今はガザ北部から、パレスチナ人を南部へと追いやり、無人となった北部をイスラエルの新たな領土にしようとしている。次は、ハマスが南部にもいるとして南部を爆撃し、エジプト側に追い出すつもりなのだろう。

 

この3つのテロ組織が合同して、残忍なイスラエル軍が造られた。1920年代から始まったユダヤ人移民の急増で、人口の3割まで増えたユダヤ人側が第一次中東戦争に勝ったために、多くのパレスチナ人は砂漠に追放され、人口の約8割がユダヤ人のイスラエルが誕生した。
 

●この「パレスチナ分割」決議は、ホロコーストの根源にある欧米人が冒したユダヤ人差別という問題の解決のために、ユダヤの差別などしていなかったパレスチナ人が住んでいた大地、それも彼らの祖先が3000年も前から住み続けてきた大地を、何の補償も無しに国連の「決議」一つで奪い、シオニストに無償で与えるという国連憲章の基本的人権の理念に反するとんでもない決議だったので国連憲章違反であり、この決議は無効である。イランが主張しているようにイスラエルには自衛権など無い。イスラエル人はパレスチナ人から奪った土地を返し、彼らこそがパレスチナの砂漠地帯に移住するしか解決策は無いだろう。

 

欧米は、このような不当な、もう一つの「パレスチナ人差別」を産み出すことにより、自国のユダヤ人を減らして、ユダヤ人差別問題を解決しようとしたから起きたし、この不正を見て見ぬふりをしてきた日本にも責任がある。


●また、この「パレスチナ分割」決議とは、パレスチナ人版の「ホロコースト」であり、ジェノサイト。なぜなら、この決議を実現するには、パレスチナ人をジェノサイドするしかないからだ。パレスチナ人は、彼らの祖先が3000年も前から住み続けてきた土地を、簡単には諦めずに抵抗し続けるから、ナチ化したシオニストは、パレスチナ人を絶滅させるか、国外に追い出して、かつてのユダヤ人のように、各地を流浪する民にするしか解決の方法が無いからだ。

 

ジェノサイドとは、「国民的、人種的、民族的または宗教的集団を全部または一部破壊する事」(ウイキペディア)。「パレスチナ分割」決議とは、ナチスがユダヤ人にしたこと、つまり、ユダヤ人を殺害し、その財産を奪うことと同じなので、この「パレスチナ分割」決議を大喜びで受け入れ、イスラエルを建国したシオニストは現代のナチスである。現代のユダヤ人差別の背景には、ユダヤ資本に金融の制御をさせている資本主義の経済システムの問題もあるが、より、弱いパレスチナ人から、土地を奪ったシオニスト自身にも責任がある。

 

●この問題の最大の責任は、連合国が主導した国連自身にある。日本とドイツがアメリカ軍に占領されていた1947年、国連総会は人口が約60万人で、パレスチナ人120万人の半分だったユダヤ人に、面積の56%を与え、パレスチナ人には残りの43%しか与えずにユダヤ人とパレスチナ人の2つの国家を建設し、また、両者にとっての聖地エルサレムを「国際管理地区」にする「パレスチナ分割」を決議した。

 

そして、翌年の1948年5月14日、初代イスラエル首相たダヴィド・ベン=グリオンが、イスラエル建国を宣言したので、その直後に、この分割案に反対したアラブ連合とイスラエルの間で、第一次中東戦争が勃発した。以後1973年までに4度の中東戦争が起こり、欧米諸国、とりわけ、アメリカの支援でイスラエルが勝利し、1949年には欧米の支援でイスラエルは国連への加盟も認められた。

 

しかし、それ以後も戦争は続き、1975年から1990年まではレバノン内戦、2006年にはレバノン侵攻ガザ侵攻、2008年~2009年にはガザ紛争、2014年にもガザ侵攻、そして、今回のパレスチナ・イスラエル戦争と続いてきたが、今年も6月現在で、15,6歳の少年や少女も含めて126名ものパレスチナ人が西岸地区で、イスラエル軍やイスラエル警察、そして、シオニストの入植者に射殺されていた。

 

●紀元後1世紀から2世紀に2度起きたローマ軍との戦争でユダヤ人側が敗北して国家を喪失すると、パレスチナに住んでいた多くのユダヤ人は世界中に離散したとされ、以後、ヨーロッパでは何度も、ユダヤ人を大量に殺害する虐殺事件が起きてきた。

 

特に、酷い迫害は、先の大戦中に420万人~600万人のユダヤ人が、ヒットラーのナチス・ドイツに虐殺されたとされているホロコースト。また、ユダヤ人の差別や迫害は、ドイツ以外のヨーロッパ諸国でも起きていたので、戦後直後のヨーロッパ人には、ユダヤ人差別へ贖罪の意識もあった。

 

更に、19世紀末からユダヤ人国家の樹立を目指すシオニズム運動も起きていたことや、逆に、厄介者のユダヤ人を自国から減らせると考えて支持する人もいたはずだ。こうした要因から、戦後の欧米諸国ではユダヤ人国家の樹立を支持するようになり、欧米の主導で「パレスチナ分割」が決議された。

 

★この問題は、「パレスチナ分割」ではなく、「日本分割」決議だったと仮定して考えると問題の本質が簡単に理解できる。例えば1947年、国連がパレスチナではなく、日本の九州を分割して、九州の半分以上にユダヤ人国家を樹立すると決めた場合、日本人はどうするだろうか?

 

この場合、日本人は大反対し、ユダヤ人が武装して移住を強行すれば、日本人の多数派は仕方なく、武器を取って戦うだろう。ただし、何度戦っても勝てず、大量の日本人が死んだ場合、妥協して「日本分割案」を受け入れる意見(ファタハDFLP)も出て来る。

 

一方、分割案を受け入れず徹底抗戦する日本人(ハマスイスラム聖戦PFLPPFLP‐GCなど)もいるはずで、両者が、パレスチナのように別々の政治組織を造ることもあり得る。また、何度も負けた場合、その都度、武装解除されるので、徹底抗戦派はハマスのようなゲリラ組織となる可能性は高く、欧米はテロ組織と呼ぶだろうが、妥協派の日本人は徹底抗戦派も同じ日本人なので、パレスチナ解放機構(PLO)と同じように、欧米による徹底抗戦派のテロ組織呼ばわりは認めないだろう。

 

なぜなら、九州が1000年以上も日本人の領土であったことは疑いの余地が無いし、日本人もパレスチナ人のように、ホロコーストには全く関係が無いからだ。むしろ、イスラム教のオスマン帝国がユダヤ人を絶滅の危機から救ったように、日本も、戦前の外交官の杉原千畝氏や旧陸軍の樋口季一郎氏のようにユダヤ人を救った側だったからだ。★

 

ところが、このような事情は全く考慮されず、欧米は勝手に自らの責任で解決すべきユダヤ人差別問題を、これと無関係なパレスチナ人を犠牲にすることで解決しようとしたから、戦争が続いている。

 

●実は、現在のパレスチナ人こそ離散せず、古代からパレスチナの地に住み続けていた人々(古代はユダヤ教徒で、キリスト教徒の東ローマ帝国時代はキリスト教徒→イスラム教徒のオスマン帝国時代はイスラム教徒)の子孫という説もある。また、十字軍との戦いでは、パレスチナのイスラム教徒とユダヤ人は共闘して、十字軍と戦った戦友同士なので約100年前、シオニストが大挙してパレスチナに移住してくるまでは、オスマン帝国のユダヤ人などの少数派保護政策もあり、イスラム教徒とユダヤ教徒は共存してきた。

 

つまり1947年、欧米の連合国が主導していた国連は、パレスチナ人(アラブ人)の合意を得ずに、勝手にパレスチナ人が何千年もの間、住み続けていたパレスチナの地を、何の補償もせずに武力で奪い、勝手にユダヤ人シオニストにプレゼントするという歴史的大罪を冒した。真の「悪者」は、欧米諸国(テレビや新聞の国際社会)が主導した国連そのものだ。イスラエルが建国されなければ、ハマスは誕生しなかったからだ。

 

●日本の公安調査庁は昨年、ウクライナのアゾフはウクライナのドンバスで、4000人前後のロシア人を虐殺して埋めたと国連も認定しているのに、わざわざテロ組織認定から外し、ハマスはテロ組織認定したままだ。

 

ということは、他人の家(パレスチナ)を乗っ取って居座った強盗(シオニスト)を、追い出そうとして反撃したパレスチナ人側を「暴力を振るうなんて酷い奴らだ」と言って、日本は75年間も居座り強盗側を支持してきたということで、これが世界に莞たる我らが「民主国家日本」の真の姿だ!!

 

また、アラブとユダヤ、フランスと相反する約束をした「三枚舌外交」のイギリスや、「パレスチナは神からユダヤ人に与えられた約束の地」などと寝言を言っているシオニストの責任も重い。イスラエルが親ソ国家になると期待して「分割案」に賛成したスターリン(ソ連)にも責任がある。

 

連合国が当時、最も弱い立場だったパレスチナ人(アラブ人)の反対の声を無視したから、何度も戦争が起きたし、ハマスやイスラム聖戦も誕生した。ハマスやイスラム聖戦を産み出したのはイスラエルであり、欧米諸国だ。「神が約束をした」などと寝言を言っているシオニスト国家を、75年も支持してきたアメリカに正当性があるのなら、アメリカ人は全国土をインデイアンたちに返して、アメリカから去らなければならない。

 

この戦争の本質は宗教対立ではなく、領土争いであることは、初代イスラエル首相で正真正銘のテロリストだったダヴィド・ベン=グリオン自身が、パレスチナ人側のリーダーに仮託して、「我々は彼らの国を奪った・・・、これまでに反セム主義、ナチス、ヒトラー、アウシュビッツがありました。しかし、それは彼らの過ちによるものでしょうか?彼らは一つの物事しか見ていません。我々はここへ来て、彼らの国を盗んだ。なぜそれを受け入れるべきなのでしょう?」と言っていることでも明らかだ。

 

ベン=グリオンはイスラエルの子孫たちが、パレスチナ人との長く続く戦争に疲れて和平を結ぶことを恐れた。3000年も前からパレスチナ人の祖先が住んでいた土地を奪われたので、パレスチナ人がイスラエルを許すことはあり得ないから、彼らが提案する和平はイスラエル側を油断させる謀略と確信していたからだ。


パレスチナ人とは戦術的にウソの和平をすることはあっても、本気では講和しないということは、事実上の戦争状態を続けるということ。ベン=グリオンの後継者ネタニヤフらの極右政権の真の狙いは、必然的にハマスの殲滅ではなく、全パレスチナ人のイスラエルからの追放か、あるいはパレスチナ人の絶滅、つまり、パレスチナ人のジェノサイドということになる。実際には、100年とか200年間も戦争状態を維持するのは不可能だからだ。


★:トルコ人イスラム教徒が支配層だったオスマン帝国は、15世紀スペインでレコンキスタが成就した時、スペインが最大の拠点だったユダヤ人に、オスマン帝国への移住を許してユダヤ人を絶滅の危機から救った。
 

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備忘録(2023年11月15日)


★★伊藤貫の真剣な雑談】第16回「プーチンの知恵袋、セルゲイ・カラガノフ!!」[桜R5/9/30] 3 

ポーランドへの先制核攻撃論

 

★当ブログは、「新日本文化チャンネル桜」や伊藤貫氏の改憲論や核武装論は支持しない。しかし、在米30年で、アメリカの政治家や官僚と人脈がある伊藤貫氏は、反中国の保守派でありながら、アメリカと日本の政界の真の姿を暴いている点は高く評価する。

 

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伊藤貫の真剣な雑談】第16回「プーチンの知恵袋、セルゲイ・カラガノフ!!」[桜R5/9/30]

 

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切り抜き 真剣な雑談】第16回「プーチンの知恵袋、セルゲイ・カラガノフ!!」[桜R5/9/30]

出演:伊藤貫(国際政治アナリスト)

 

<以下略>


<要約とコメント緑>

 

①ロシア文明は、欧米の自己中心主義的文化とは真逆の、自己が帰属する共同体への貢献を生き甲斐としている集団主義的な文化なので、ロシア人は、戦前の日本人と良く似ている

 

●ロシアの歴代大統領の政治顧問で、プーチンの懐刀セルゲイ・カルガノフ氏は、ロシアで一番影響力のある政治経済学者兼、軍事学者だが、文明論に関しても論文を書いている。と言うのは、彼に言わせると、国際政治経済学と文明のあり方は切り離せないからだ。それで、彼はロシアが目指している国家の理想はどういうものかとか、ロシア人とは一体どういう人たちなのかを解明することが重要だと言う。

なぜ、彼がこのように考えるようになったかと言うと、1990年代のエリツィン政権の時代の酷い経験があるからだ。ソ連の崩壊後、アメリカはロシアの経済エリートと組んで、ジャーナリストのナオミ・クラインが著書で『ショック・ドクトリン』と呼んだ急激な経済改革をさせて、ロシアを崩壊寸前にしたからだ。


この時、ロシアの資源は市価の2~3%の価格でアメリカのゴールドマン・サックスやジョージソロスなどの金融業者に売られ、彼らは40兆円~80兆円もの利益を得るという略奪を行った。また、これらの金融業者と組み、大儲けしたロシア人エリートの8割は、ロシアとイスラエルの二重国籍者のユダヤ系で、彼らの中には1人で数千億円から数兆円も稼いだ者もいたという。

 

★:ロシアもユダヤ人差別の国だったので、ロシアのユダヤ人には、ロシアを憎む者がいても不思議ではない。
 

その結果、ロシアのGDPや個人所得も5、6年で半分になり、最後には年金や福祉予算も廃止となって、何百万人ものロシア人が貧困やアルコール中毒で死亡した。その結果、男性の平均寿命は、ソ連崩壊後の10年間で67歳から57歳と10歳も短くなった。これは17世紀の「30年戦争」並みの歴史的大惨事だった。

 

★:この頃、プーチンも副業で夜にはタクシー運転手をしていたという。当時モスクワに赴任していたCIAや国務省の担当官が、このような犯罪行為をしたら、将来必ず正常な米露関係を破壊すると危惧して、ワシントンの上司に報告したが全て握り潰された。また、欧米のBBCやニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストのような一流マスメディアも、ロシアの惨状を報道せず、後に彼らも、この分け前を得て潤った。

マスメディアが真実を報道しないため、選挙や世論調査は、マスメディアによるウソ報道の効果を確かめるテストでしかなくなった。ジャニーズの件さえ報道しなかった日本のマスメディアはもちろんだが、欧米の民主主義は半身不随状態だ。


●ナショナリストのプーチンは、これらの腐敗したエリートを一掃したので、今でも絶大な人気がある。こうした事態が起きたので、カルガノフ教授はロシア人とはどうのような民族なのかと深く自省し、彼はロシア文明と欧米の文明の相違点について、以下のように説明している。

 

欧米の文明は、「今だけ、カネだけ、自分だけ」という自己中心主義の個人主義的文化と断定する。一方、ロシア文明は家族、社会、国家、神、つまり自己が帰属する共同体と神への貢献に意義・価値を見出す集団主義的な価値観の文明とし、カルガノフ教授は、欧米のような(極端な)個人主義文明は、やがて滅びると主張している。

 

★なぜ、滅びるかと言えば、そもそも、自分だけの利得に生きる欧米の資本主義文化では、社会を維持出来なくなるからだ。たとえば、株式市場では誰もが、自己の経済的利得を目指して活動している。しかし、スポーツ競技には審判が必要なように、株式市場にも、「インサイダー取引」などの不正を許さないという道徳重視の人たちが担うべき「証券取引等監視委員会」が必要だ。このような審判的な機関の統制無しには、株式市場は成り立たない。

 

ところが、資本主義社会は経済的利得を原理・原則とする社会。この社会では毎日、メディアで貨幣を万能の神とする「貨幣教」の「お得ですキャンペーン」が流される。つまり、資本主義社会では現実の社会も貨幣が神化しているから、誰もが、「経済的な損得を判断基準に生きよ、さもないと痛い目に遭う」と日々洗脳されている。すると、道徳的活動に意義を見出す人材で構成すべき「証券取引等監視委員会」の職員も、徐々に「貨幣教」に洗脳されてしまうので、やがて、まともには機能しなくなる。

 

これは、共同体への献身を生き甲斐とする人材が担うべき政治家や官僚などの公務員も同じなので、社会は徐々に腐敗・堕落し、今のアメリカのように崩壊寸前となる。学校で、いくら道徳を教えても、家に帰れば家計のやり繰りに日々悩む親を見るので、子どもは道徳規範を守るよりも、お金を稼ぐ方が大事だと確信する。

 

●伊藤貫氏によると、今のアメリカのワシントン・ポストや、ニューヨークタイムズなどの「一流紙」も、政府のウソを隠蔽して、1990年代にはロシアから搾取した莫大な利益の一部を受け取り、大儲けをしたという。

 

また、伊藤貫氏によると、アメリカではNPOを通して議員に政治献金した場合、一切公表されないため、超富裕層は自前のNPOを設立して巨額の献金をしている。何億円、何十億円もの巨額の資金を、NPOを通して特定の政治家に献金し、超富裕層が必要とする法案を成立させているから、アメリカ民主主義など既に崩壊している。民主主義の条件は選挙だけではない。

 

★資本主義国家では、経済的利得が価値基準となり、人は幼児期から凄まじい<競争>圧力に晒される。ストレス国家日本では、毎年、500人前後の未成年が自殺するほど「ウツ病」が国民病となって蔓延する。それで、やがて日本も内部から崩壊するかもしれない。

 

資本主義国家では、海外への工場移転や、富裕層の海外移住サービスでさえも、正当なビジネスとなるほど国家は軽視されるので、やがて、国民や民族の紐帯も弱体化して国民の世界市民化が進むという良い面もある。もちろん、それでも豊かな社会なら、直ぐには腐敗社会にはならないが、腐敗も間違いなく進む。

 

17世紀末に即位したピョートル大帝以降、ロシアは欧米の文化を取り入れて近代化してきたので、ロシアにも、欧化した人が大勢いる。しかし、確かに、ロシア文学には、これをテーマにしたと思われるドストエフスキー「白痴」、ノーベル文学賞を受賞したソルジェニーツィン「イワン・デニソビッチの一日」という作品がある。

 

「白痴」の主人公ムイシュキン侯爵は、ドストエフスキーが、この世で最も美しい人物を描こうとして造形した人物。結局、この世で最も美しい人物は称賛されるどころか、欧化した普通の人から見れば、世間知らずの「白痴」と見なされてしまうことで、当時の欧米の価値観・文化に汚染されたロシア社会を、ドストエフスキーは鋭く批判した。

 

当初、その余りに「無私」なムイシュキン侯爵を馬鹿だと罵っていた美人悪女ナスターシャも、最後にはムイシュキン侯爵が、この世で最も美しい人物だと認める感動的ストーリー。つまり、ナスターシャも、元々はムイシュキン侯爵と同じ価値観の持ち主だった。しかし、彼女の過酷な人生が、それを心の奥底に追いやっていた。

 

ところが、ムイシュキン侯爵の登場がナスターシャに、「赤いキリスト」ゲバラやアフガン人に献身した中村哲氏のような人こそが、真に美しい人というロシアの伝統的価値観を蘇らせた。ドストエフスキーは「カラマーゾフの兄弟」にも、ムイシュキン侯爵のような人物アリョーシャを登場させているし、「罪と罰」のソーニャ、「地下生活者」のリーザなどもロシアの民族文化の神髄を体現した人物ではないか。

 

★ソルジェニーツィンの「イワン・デニソビッチの一日」の主人公イワンは、無実の罪で「ラーゲリ」に入れられたロシアの民衆の代表のような人物で、「ラーゲリ」での強制労働にも、生き甲斐を見出すような人物。要するに、ロシアの欧米化したインテリであれば、「ラーゲリ」での強制労働では、自分が働けば働くほど自分を有罪にしたスターリン主義体制を強化してしまうカラクリに気付く。それで、「ラーゲリ」での労働は、いわゆるマルクスの「疎外された労働」そのもののような労働であり、心が欧米化したインテリなら、そのような労働を呪詛しても、意義や生き甲斐を見出すことはあり得ない。

 

しかし、イワンの捉え方はインテリたちとは違う。イワンの強制労働の捉え方は、次のように例えられるのではないか。たとえば、イワンが「ラーゲリ」の所長から、病院の建設を命じられた場合である。この場合、イワンが病院を建設すれば、さしあたりスターリン主義体制への民衆の不満が減少し、自分を「ラーゲリ」に閉じ込めた不公正な体制は強化されてしまう、つまり、「ラーゲリ」での労働は「敵に塩を送る」行為だ。

 

しかし、病院は体制の如何を問わず、民衆には意義がある。病院の建設労働はロシア社会への貢献労働でもあるから、イワンのようなロシアの民衆は素直に、この意義を重視して強制された仕事でも、一生懸命働き、仕事の遣り甲斐も感じられる。ロシアの民衆の共生的精神が、支配者に悪用されてしまうわけだが、これはソ連以前のロシア帝国時代の「神自身の良心の命ずるところに従って統治する」皇帝(事実上の神)に奉仕していた農奴も同じ。カルガノフ教授に言わせれば、この共同体や神への貢献がロシア文明の特徴的精神性ということになるのだろう。

 

★われわれ近代人の見地からは、封建時代の農奴たちは、皇帝や法王に騙されて搾取されていた憐れむべき人々だが、実は貧しくとも、われわれ現代人よりも幸福だったかもしれない。なぜなら、キリスト教徒の彼らは日々、イワンのように労働で神への奉仕という最高の仕事をして生きていたからだ。彼らにとっては、神への奉仕ほど普遍的で、意義や価値がある仕事は他には無い。

 

一方、日本への奉仕を生き甲斐とする伊藤貫氏のような真性ナショナリストの場合は別だが、資本主義下で生きる大半の日本人の場合、せいぜい家族や地域共同体への奉仕止まりで、こじんまりとした小市民的幸福となる。それで、貧しくとも、「農民は労働で、貴族は剣で、聖職者は祈りで神に奉仕している」と思い込んでいた封建時代の農奴の主観では、日々、神という普遍的絶対者に奉仕することが可能だったからだ。もちろん、それでも飢饉や戦争で生活が破壊されれば、彼らにも「見えない関係」が見えるようになり、エネルギッシュなイワンたちは、腐敗した皇帝や聖職者を倒すロシア革命を起こした。

 

★日本人ほど、ロシア文学を好んで読む国民はいないという。やはり、両者は似ているから、日本人はロシア文学の登場人物に自己と同じ人物を見出せるからだろう。実は明治維新まで、日本の文化も集団主義のロシア文明に似ていた。しかし、明治維新後の資本主義の導入や敗戦での自信喪失と欧米文化の全面的な移入で、この精神や文化は衰弱したが、それでも1960~1970年代までは生き延びていたので、ベトナム戦争反対運動が誘発させた「世界革命」の波に、日本の学生や青年層も呼応できた。

 

しかし、この時の敗北が日本人の思想を大きく変え、それ以来、共同体への貢献に意義を見出すロシア的な文化は廃れ始め、代りに自分のためだけに生きる欧米の資本主義的文化が社会の隅々に浸透した。その結果、戦後の欧米式教育で育った村上ファンドの元代表・村上世彰氏は、「お金儲けは悪いことですか?」(つまり、金儲けは良いことだ)という衝撃的発言で日本社会を凍らせた。

 

子ども殺しは、ほぼ普遍的な「悪」だが、それ以外の善悪は「社会環境」が決定する。日本兵が毎日、大量に死んでいた先の大戦中、村上世彰氏のように「金儲けは良いことだ」(人はパンだけで生きるもの)と公言したら、守銭奴として袋叩きにされただろう。

 

しかし、戦後に平和な時代が到来して「復興」がスローガンとなると、当初は誰も口には出さなかったが、「復興」の裏側にあった、今やアメリカ人自身も信じなくなった「アメリカン・ドリーム」の「金儲けは良いこと」という文化が日本に浸透し、日本にも多数の村上世彰氏が現れた。

 

個人投資ブームの現在では、誰もが悪びれもせずに「金儲けは良いこと」と口にするし、村上世彰氏は、公然と税金が安いからシンガポールに移住すると言って日本を捨てたが、ナショナリストたちは批判しなかった。

 

1980年代以降の日本では、「万国の労働者よ、団結せよ!」という「国際主義」(インターナショナリズム:自国民だけでなく、全人類に基本的人権を認める思想)の理念で、全世界の労働者階級、つまり人類への貢献に意義を見出すマルクス派だけでなく、天皇を生き神とする真正右翼や保守派も壊滅した。

 

そのため、元首相の安倍晋三のような「売国右翼」や、著書を売って儲けることが目的の「商売右翼」の全盛時代が始まり、伊藤貫氏のような日本への献身に意義を見出す真正の保守派も極少数派となった。

 

(ただし、意外だが村上世彰氏本人はボランティア活動にも熱心だそうなので、単なる守銭奴ではないかもしれない)

②ロシアのトップ・エリート層のカルガノフ教授は、同じエリート層の裏切りを研究し、その成果から、伊藤氏は日本とロシアのエリートの共通点を見出す

 

●伊藤氏によると、一見すると、粗暴のように見えるロシア人だが、決して「狡猾な悪人」ではなく、大半のロシア人は、びっくりするほど正直な人や気取らない人も多いと言う。弱点は自発性が無い点。それで、政府が方向性を打ち出すと、素直に従う人たちが多いと言う。

 

1988年から1991年にかけてソ連が崩壊した直後、ロシア人は欧米流の自由主義や民主主義、資本主義に期待して信じた。しかし、これらが導入された1990年代のエリツィン政権時代、ロシアは大混乱に陥り、欧米の金融業者に最大で80兆円もの国富を奪われ、数百万人が貧困で死亡した。欧米の民主主義に期待したロシア人は、クリントン政権の略奪政策で酷い目にあった。

 

ところが、奇跡が起きた。1980年代初頭には、ロシア正教の信者は3割前後だったが、その20年後の1990年代末期には、何と国民の7割がロシア正教の熱心な信者になり、国民の9割が西側の資本主義や民主主義、自由主義を信用しなくなった。

 

ロシア人は、その「魂」による動機づけがないと動かない民族なので、キリスト教信仰が劇的に復活した。これは、最近の10年間で教会が3万も建てられたことからも事実。ロシア人の多くが「魂」の存在を本気で信じ、精神的な拠り所を求めてる。


●ソ連崩壊後、西側で対ロシア政策を指揮していたのはクリントン政権のゴールドマンサックス前会長でユダヤ人のロバート・ルービン。そのため、騙され易い人が多いロシア人の多くはユダヤ系の金融業者に酷い目に遭わされたと思っている。ロシア人は、「共産主義」(スターリン主義)を信じて失敗し、エリツィン時代は民主派を信じて失敗した。

 

★伊藤氏の共産主義、つまり、ソ連型社会主義とは、「国家社会主義」なので、これは誤解だ。しかし、ソ連の「国家社会主義」で、ロシア人が酷い目にあったのは事実。ソ連崩壊後、欧米やIMF、資本主義と民主主義を吹き込まれると、また信じてしまい、1990年代のロシアは惨憺たる状況になった。

 

ところが、この1990年代のロシアの惨状を、アメリカの一流紙とされているニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、イギリスのBBCなどのマスメディアも隠蔽したのでロシア国民は欧米諸国を憎悪し、信用しなくなった。
 

●カルガノフ教授は過去1000年の歴史から考察し、集団主義のロシア人は何らかの集団に帰属し、その集団の中で頑張れと命令されるともの凄く頑張るので、個人主義的な民主主義や自由主義は適さないと確信した。また、同教授は欧米の経済学と政治思想史、国際政治学などを深く研究した後、ロシアに、欧米の拝金主義的経済学は通用しないと気付き、過去20年間、ロシア人は欧米の真似はするなと何度も説いてきた。

 

規制緩和の新自由主義派であるシカゴ学派は、人間を金儲けする生物と規定する拝金主義の経済学。ところが、ロシア人には欧米人のような物質的な繁栄を求める「パンのみに生きる」人は非常に少ない、ロシア人は金儲けでは動かないとカルガノフ教授は言う。

 

そのため、ロシア人には欧米の経済モデルは無効だし、(生産力を向上させて、豊かな生活を実現しようとする)コミニズムも、ロシア人には向いてないとカルガノフ教授は言う。

 

★保守主義の伊藤氏やカルガノフ教授は、左派が自由を掲げながら、現実のソ連や中国が不自由な社会となったことに反発しているだけではない。そもそも自由とは、現実には継承されてきた様々な「伝統的制度」からの自由でしかないために、自由理念、そのものに反発している。

なぜなら、人間の理性・知性の限界を認めるのが保守主義のパラダイムだからだ。そのため、保守主義は不合理な伝統であれ、これまでは何とか人類社会を破綻させることなく、維持してきた面もあることを重視して、改革を慎重に考える立場だからだ。

保守主義が、人間の理性・知性に限界を認める点は、決して間違いでは無い。しかし、改革だけが「試行錯誤」というわけではなく、人間の活動は何でも「試行錯誤」。それでプラン通りに実現するプロジェクトは少ない。伝統を守ることも「試行錯誤」であり、われわれの祖先たちは、「試行錯誤」しながら伝統を守ってきたとも言えるから、伝統を守るために伝統も変化させてきたのが人類。

 

要するに、改革と保守は相対的な差異でしかないから現代では思想的な焦点ではない。保守主義者は保守という点よりも、人間の理性・知性に限界があるという思想的立場に拘り、近現代人の理性・知性を過度に高く評価する科学主義=人間主義に反対すべきだ。

また、保守主義=ナショナリズムは他民族の基本的人権を軽視する傾向がある。しかし、近代に成立した基本的人権思想は、他民族の基本的人権も認める点が、その神髄である普遍的な政治理念だ。それで、自民族優先の保守主義者=ナショナリストは、近代の基本的人権思想を理解していない。

 

●欧米の個人主義的文化では、個々人が全て自己決定することが大事とされている。この自己決定で、自分の夢を実現する「自己実現」や、自分の能力や性格を完全に発達させて幸福を得る「自己充足」 、自分を価値あるものと感じる「自己肯定感」を得ることが、人生の目標とされている。


一方、カルガノフ教授によると、ロシア人は自尊心を向上させるために頑張れ、競争しろと言われるのが嫌いで、特定の集団に属して友人関係を大切する民族。ロシア人が一番、モチベーションを感じるのが家族と祖国、それから神への奉仕であり、そのために生きてる民族というのがカルガノフ教授のロシア人観。それで、ロシア人は集団主義的な戦前の日本人に良く似ている。

 

★この個人主義が誕生した背景の一つが、産業革命が起きた19世紀にほぼ完成した機械論的自然観。これは14世紀頃から、多くの部品から成る機械式置時計の普及がもたらした自然観。この自然を置時計のようにルーティンワークをする一種の機械と見なす自然観では、(自然や機械の)全体ではなく、(部品)部分を真に実在している実体と考える。これが社会観にも影響を与え、社会や国家よりも、個人を重視するリベラル派を産み出した。

 

機械論的自然観では、「その部分の決定論的な因果関係のみ、特に古典力学的な因果連鎖のみで、解釈が可能であり、全体の振る舞いの予測も可能、とする立場」(ウイキペディア)で、広い意味では自然科学的唯物論であり、全体を実体と考え、ファシズムの哲学的根拠となる実体主義の全体主義的有機体論よりもマシではある。

 

多くの現代人のように、全体ではなく、部分こそが実体とする実体主義的な機械論的自然観・世界観を真理と確信すると、空気や水の説明では、それらを構成する1つ下のレベルの酸素(分子)や水素(分子)で説明し、水素(分子)も1つ下のレベルの原子、原子も1つ下のレベルの陽子や電子の組み合わせとして説明されると現代人は、空気や水というものが理解できたような気がしてしまう。

 

しかし、部分重視も、全体重視も両方共に実体主義的な間違いであり、実は関係こそが実体的なものと考える仏教などの関係主義の東洋的世界観の方が優れた世界観だ。この世界観が、今から2500年も前に孔子の「罪を憎んで人を憎まず」=「古之聴訟者、悪其意、不悪其人(昔の裁判所では訴訟を取り裁くとき、罪人の心情は憎んだが人そのものは憎まなかった)」という関係主義的な人道主義的人間観さえも産み出した。仏教の関係主義は、「自分は凡人だとか悪人」と思い込んで悩んでいるヨーロッパ人も救う力がある普遍的世界観なので、欧米人も仏教の「空」の思想を歓迎するだろう。

 

●ロシアで最高のエリート層に所属してるカルガノフ教授は、自分と同じロシアのエリート層が、ロシア人を裏切ってきたことに関心を持ち、多くの論文で原因を究明してきた。彼は、ロシアのエリート層が最近30年間、いかにロシア国民を裏切ってきたかということを多くの論文で書いてる。

 

ワシントンに30数年間住んで、欧米の政治経済学を学んできた伊藤氏も、カルガノフ教授と同様に、今の欧米の学問には、民族の文化、気質、価値観には多様性があるという視点、人間は合理性だけでなく、民族特有のソウル、スピリットによって動かされるという視点が全く欠けていると批判する。

 

伊藤氏も日本人はロシア人に似ていると言い、欧米の学者が言ってる社会科学や人文科学のモデルを日本に適用する団塊の世代の学者や官僚の欧米至上主義を、極めて軽率な判断と批判する。と言うのは、欧米の文化のパラダイムは、自己実現を目指す個人主義。一方、日本人はロシアに良く似た集団主義文化だからだと言う。

 

★カルガノフ教授や伊藤氏の人間観は、マルクスの「上部構造と下部構造」論に似ている。廣松渉氏によれば、上部構造とは人間の意識界(法や道徳、宗教的教義、科学理論などの様々な信念体系)なので、人類の集団毎に同一性もあれば差異性もあるのは当然。

 

また、下部構造とは、人間の自然界や人間界での全関係のことなので、下部構造を経済的諸関係に限定する経済決定論的なマルクス解釈は誤解。人間の全関係(下部構造)は、上部構造の諸イデオロギーを通して解釈されるという現在では常識化している人間観がマルクスの根本思想である「唯物史観」の神髄。

 

唯物史観(史的唯物論)の神髄を、「人間社会にも自然と同様に客観的な法則が存在しており、無階級社会から階級社会へ、階級社会から無階級社会へと、生産力の発展に照応して生産関係が移行していく」(ウイキペディア)とする経済決定論的な歴史の発展史観、歴史法則と解釈するのも誤解。

 

歴史には自然科学的法則性、決定論的な法則性は無く、歴史は蓋然的にしか予測できない。有名なマルクスの段階論的歴史発展論は、マルクス自身が「おおよそ・・・」と言いながら述べたものに過ぎない。

 

③ポーランドへの先制核攻撃論を提案するロシアのトップクラスの国際政治学者たち


●カルガノフ教授が去年6月、少なくとも欧米諸国の国際政治学界や軍部、情報機関にとって、非常にショッキングな「困難だが必要」というタイトルの論文を発表した。この論文の影響で、アメリカ政府の対ロシア政策も変わったと伊藤氏は言う。

 

この2つの非常にショッキングな点を指摘している論文が世界中に広まると、アメリカの覇権が決定的に弱体化するので、日本や欧米のマスコミは、この論文をほとんど報道しなかった。一つは、核兵器は実際に使える兵器で、ロシアは今回の戦争で核兵器を使う可能性があること。ロシアには核ミサイルをNATO諸国に打ち込む覚悟がある、つまり、プーチンの核発言は単なる張ったりではなく、警告と言っている。

 

★ロシアは、19世紀初頭のナポレオン軍、そして、2つの世界大戦でドイツ軍に国土を蹂躙されて酷い目にあった。ウクライナがNATOに加盟したら、ウクライナにアメリカ軍の基地が造られる可能性が高く、ウクライナ北部からモスクワの間には機甲部隊の進撃を阻む自然障害が無いこともあり、ロシアには非常に大きな脅威となる。

 

更に、決定的なことは、アメリカの核ミサイルは、バレンツ海の戦略ミサイル原子力潜水艦からモスクワには10分、ルーマニアの米軍基地からだと12分掛かるが、ウクライナ北部からだとたったの約5分で届くことだ。そのため、ロシアが核ミサイルで奇襲攻撃された場合、プーチンが報復核攻撃の命令を出す前に、本物の核攻撃か確かめる時間や、国防大臣か総参謀長の了解を得る時間が必要なので、報復核攻撃命令が出せずに死ぬ可能性がある。つまり、ロシアは、「相互確証破壊」能力を失う可能性がある。

 

★反ロシアの強力な勢力があるウクライナのNATO加盟は、アメリカなら、カナダやメキシコに反米派の強力な政権が誕生するのと同じ。ウクライナがNATOに加盟すると、ロシアはアメリカに不満があっても、簡単には批判できなくなる。そのため、ロシアの政治的エリート層はウクライナのNATO加盟は、事実上のロシアの主権喪失、アメリカの属国化と見なしている。

 

つまり、今回の戦争は、ウクライナに住む800万人以上のロシア人保護もあるが、ロシアが自国の主権を維持できるかどうか、つまり、「生きるか死ぬかの戦争」でもあるので、核兵器の使用もあり得る。


ロシアとの戦争は核戦争になるので、アメリカはロシアを戦争で直接撃破することは出来ない。アメリカがロシアを制するには、ウクライナのような強烈な反ロシア派が存在する国の軍を、アメリカ軍の代理で戦わせるしか、他に方法が無い。

 

アメリカの政治的エリート層は、ウクライナをNATOに加盟させれば、ロシアはアメリカに不満があっても、我慢するしか無くなるからこそ、アメリカはウクライナの独立以降、6000億円前後も投入して反ロシア派の政治勢力を育成し、反ロシア政権の樹立を狙ってきた。


もう一つは、ロシアがNATO加盟国に、核ミサイルを1、2発打ち込んでも、アメリカは絶対にロシアと核戦争はしない点だ。つまり、アメリカの「核の傘」は偽物ということ。カルガノフ教授は一時期、ロシア政府の核戦略の専門家だったので、アメリカの核戦略は全部知り尽くしてる。アメリカは、1960年代からNATO諸国や日本に「核の傘」を提供すると言ってはいたが、当時からソ連はウソと見抜いていた。

 

●現在のヨーロッパ方面の安全保障体制は、①通常兵器での軍事均衡と、②NATOとロシアの核兵器の「相互確証破壊」能力の保持による平和という2本柱。ところが、②は、実際には機能しないというのが真実。

 

これが破壊的なのは、②が幻想であれ、これまでは、この幻想がヨーロッパの安全保障体制を支えてきたからだ。アメリカの「核の傘」が幻想なら、ヨーロッパ諸国は核武装するしかなく、核保有国が一気に増えかねない発言だからで、これは、核を他の4ヶ国と独占したいアメリカにとって、ものすごく都合が悪い発言だ。

 

核兵器を保有する英仏を除くヨーロッパ諸国と日本は、アメリカ側から、「君の国はフリーライドしてきた」と言われれば、その通りのように思えるからだ。この「負い目」のせいで、これまでは、アメリカ側の要求を最大限、受け入れてきた。ところが、この「核の傘」がウソと知れば「負い目」は消滅し、アメリカに従う義理は無いことになるから、アメリカには都合が悪い発言だ。


★:これまで、英仏以外のヨーロッパ諸国と日本や韓国が、自主的な核抑止力を持とうとすれば、アメリカは同盟国なのに、アメリカを信頼していないということになって波風がたつ。場合により、アメリカのリーダーシップに対する「謀反」と決めつけて、これらの国々の核武装を阻止できるからだ。

 

要するに、アメリカにとっては西側陣営で、核を事実上独占することが一番重要。アメリカの軍事同盟政策は同盟諸国に核兵器を持たせないことが第一の目的で、「核独占政策」ということだ。アメリカの「核の傘」は無いと気付けば、NATO諸国、特にドイツは不安になり、独自に核武装を始め、事実上、NATOは崩壊し、ヨーロッパを支配できなくなる。

 

★:日本人も不安になり、独自に核武装するべきという意見が有力となって、核武装を許さないアメリカと対立し、日米安保体制は崩壊するかもしれない。

 

●このウソで、アメリカは「我々の命令を聞け」、「アメリカに協力しろ」と言え、アメリカは軍事同盟諸国を属国にしてきた。ところが、このカルガノフ教授の論文が事実ならば、ヨーロッパや日本にとっても、アメリカのとの同盟関係の意義は減少する。もしくは、同盟関係があるがゆえに自主防衛能力、自主的な核抑止力を持てなくなるから、むしろ、同盟関係はマイナスに作用することもあり得る。


カルガノフ教授の「困難だが必要」という論文は真実だから、日本も自主的防衛能力、核抑止力を持つべきと伊藤氏は言う。カルガノフ教授は、現在の国際的安全保障体制=『NATOとロシア、中国とアメリカの「相互確証破壊」能力の保持による軍事力の均衡による平和』という根幹を破壊する事実を暴露した。

●カルガノフ教授がこの論文を書いた1、2週間後、ロシアで有力な国際政治学者トップ5人に入る高等経済大学教授ドミトリー・トレーニング氏が、外交専門誌に論文を掲載し、カルガノフ教授の『アメリカの「核の傘」は嘘』は真実と追認した。

 

トレーニング教授に言わせれば、NATOが今後もウクライナに対して軍事援助を続け、戦争を長期化させるなら、ロシアは多数の死傷者を出し、国力も疲弊させられる。それなら、アメリカの同盟国に核攻撃を加えざるを得ない。核攻撃しても、反撃しなければアメリカの信頼性は地に落ち、NATOは即座に崩壊するからだ。


●ロシアで、一番影響力を持つカルガノフ教授とトレーニング教授の2人が、この戦争を長引かさせるのであれば、ロシアはポーランドに対して核攻撃を加え、この戦争を終わらせるとした。それで、ペンタゴンとCIAは大ショックを受けたが、口先だけでは「頑張れ」と言い、これからもウクライナ支援を続けると言ってるが、アメリカ政府は及び腰になった。

 

周知のようにアメリカ国民の半分以上55%とか58%が、もうこれ以上、ウクライナに援助をするなと言い出した。共和党だけなら75%から78%の共和党員が、これ以上の援助に反対と言い出した。それで、アメリカの軍事援助派の立場がどんどん悪くなっているのは事実だ。
 

●カルガノフ教授は、この論文でアメリカがウクライナ戦争を続けたいと思う限り、アメリカは軍事援助を継続するから、ロシアは戦争を終わらせられない。アメリカは延々と戦争を続けさせ、ロシアを経済的に疲弊させるつもりという真実を書いている。

 

つまり、アメリカは軍事的には勝てなくても、延々と戦争を続けさせると推認している。だから、単にウクライナ軍を軍事的手段によって叩きのめすだけではこの戦争は終わらないので、ロシアのトップクラスの国際政治学者たちが、ポーランドへの核攻撃が必要と提起した

 

続く


<参考資料>

 

ウクライナ動乱 ――ソ連解体から露ウ戦争まで (ちくま新書 1739) 新書 – 2023/7/6 松里 公孝 (著)
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A6%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8A%E5%8B%95%E4%B9%B1-%E2%80%95%E2%80%95%E3%82%BD%E9%80%A3%E8%A7%A3%E4%BD%93%E3%81%8B%E3%82%89%E9%9C%B2%E3%82%A6%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%BE%E3%81%A7-%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%EF%BC%91%EF%BC%97%EF%BC%93%EF%BC%99-%E6%9D%BE%E9%87%8C-%E5%85%AC%E5%AD%9D/dp/4480075704


isfweb:2023.06.25
ロシアによる核兵器使用はありうるのか:「カラガノフ論文」の重要性
https://isfweb.org/post-22974/
塩原俊彦


日本経済新聞:会員限定記事:2022年11月16日
米ロ対立、妥協望めず長期化必至 ドミトリー・トレーニン氏ロシア国立高等経済学院教授
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD106AJ0Q2A111C2000000/

 

isfweb:2022.04.04
第1回 ウクライナ戦争報道の犯罪
https://isfweb.org/post-902/
浅野健一

 

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<休憩>

 

King Crimson - 21st Century Schizoid Man (Including "Mirrors")

 

<再録>

 

★★「れいわ新選組」の支持率が約2倍の2.3%となり、国民民主の1.4%を抜いて公明(2.5%)、共産(2.9%)に肉薄!!

 

「れいわ新選組 公式チャンネル」は、登録者数 27.3万人のチャンネル

【LIVE】増税?ダメ♡絶対!デモ in 横浜 山本太郎代表 2023年11月2日
 

「れいわ新選組」支持率倍増のナゼ 山本代表国会質疑のインパクト、週末の“減税デモ”も浸透
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/331712

11月4、5日に実施したJNN(TBS系)の世論調査で、れいわ新選組の支持率は前回から2倍近く跳ね上がり、国民民主の1.4%を抜いて公明(2.5%)、共産(2.9%)に肉薄した。同時期の共同通信の世論調査でも、れいわの支持率は3.5%で国民民主(3.6%)、共産(4.0%)、公明(4.7%)に迫る勢いなので、れいわの支持率が倍増したことは間違いない。