犬の「ごめんなさい」という表情は、ごめんなさいではない?
2018/03/21 15:00BUSINESS INSIDER JAPAN
Ben Gilbert
犬を飼っているなら、やってはいけないことをやってしまった時の犬の表情を知っているはず。
床にウンチをしたり、大切にしていたクッションや階段のカーペットを噛みちぎったり。やってはいけないことをやってしまったことを、
Ben Gilbert
犬を飼っているなら、やってはいけないことをやってしまった時の犬の表情を知っているはず。
床にウンチをしたり、大切にしていたクッションや階段のカーペットを噛みちぎったり。やってはいけないことをやってしまったことを、
まるで犬も理解しているように思える。我々はその表情を「罪悪感」と捉える。
つまりこういうことだ —— 犬が誰もいない時に、やってはいけないことをやる。そして飼い主に呼ばれた時、犬の顔は全てを物語っている。
すでに飼い主は「ダメ! 悪い犬!」などと言っているかもしれないが。
実はあなたの考えとは違って、犬は罪悪感を感じていない。そのかわりに、犬はもっと当たり前で、単純な感情を示している。恐怖だ。
嘘ではない。これは、犬の認知科学者アレクサンドラ・ホロウィッツ教授(Alexandra Horowitz)の2009年の研究にもとづいている。
同教授は2009年に発行された『Inside of a Dog: What Dogs See, Smell, and Know』、および2016年に発行された『Being a Dog: Following the Dog Into a World of Smell』の著者。
2009年のホロウィッツ教授の研究「Disambiguating the 'guilty look': salient prompts to a familiar dog behavior」は、我々が犬の感情をどのように解釈するかに焦点を当てたもの。
簡単に言うと、人間は人間の感情に当てはめて、犬の感情を間違って捉える傾向がある。「罪悪感」の表情がその代表例。
「罪悪感の表情をした犬を見ると、私も犬が罪悪感を示していると思ってしまう。
我々は、そう思ってしまうようになっているらしく、誰が悪いわけでもない」とホロウィッツ教授はBusiness Insiderに語った。
犬の表情はこんな風だ。小さく縮こまって、あなたを見上げながら目の白い部分を見せる。耳はたぶん、頭の後ろにくっついているはず。
そしてあくびをしたりする。これらは全て、犬が恐怖を感じている時のサイン。そして、罪悪感を感じていると我々が間違って解釈しがちなサインでもある。
ホロウィッツ教授の2009年の研究は、なぜ人間は犬を擬人化してしまう傾向があるのかを解明した。研究がどのように行われ、何が分かったのか、要約しよう。
ホロウィッツ教授の2009年の研究は、なぜ人間は犬を擬人化してしまう傾向があるのかを解明した。研究がどのように行われ、何が分かったのか、要約しよう。
実験は、飼い主が部屋にいない時に、犬が「おやつを食べてはいけない」という飼い主の命令に従うかどうか。
そして飼い主がいない時の犬の行動を飼い主に知らせたり、知らせなかったりと条件を変えて行われた。
結果は、犬の罪悪感の表情には何の違いも見られなかった。逆に、飼い主が犬を叱った時に、そうした表情がより多く見られた。
犬が従順だと、叱った時の効果はより顕著だった。命令に背いた時ではなく。
これらの結果は、罪悪感の表情は、悪いことをしたという認識を表しているのではなく、飼い主の合図に対する反応であることを示している。
より簡潔に言うと、研究で分かったことは、犬が「罪悪感」の表情をするのは、罪悪感(悪いことをしたという認識)のためではなく、飼い主の叱責(飼い主の合図)への恐怖ということだ。
犬は罪悪感を感じているか? そうかもしれないが、たぶん違う。
© DogShaming.com 犬が謝っている写真を掲載しているウェブサイト「Dog Shaming」。
「脳が全く違うため、犬の思考方法は人間と違っているはず。だが、多くの点で犬の脳は人間の脳と似ている」とホロウィッツ教授は語った。
「実行機能(executive function)」とも呼ばれる、「思考についての思考」のコンセプトが特に重要。
なぜなら、犬は過去の行動を振り返ったり、何か間違ったことをしたと考えたりしないから。
「動物が未来の計画を立てたり、過去の特定のエピソードを覚えていることを示す研究はいくつかある。だが犬については、まだ証拠が少ない。
犬は違うと言っているわけではない。だがそうした実験を行うことはとても難しい」
もちろん犬は記憶力を備えている。だが犬の記憶が人間の記憶と同じように働くと考えることは間違っているだろう。
「犬は言語で記憶していない」とホロウィッツ教授。
「犬は記憶について話さない。ソファーの上であなたの帰りを待っている時、犬はあなたが帰ってくることを考えているだろうか? 我々には分からない。
ぜひとも知りたいのだが、分からない」
犬の感情や記憶についての科学的研究は不足しているため、我々は擬人化して考えてしまう。
犬の感情や記憶についての科学的研究は不足しているため、我々は擬人化して考えてしまう。
「犬を引き取り、一緒に暮らし始めると、1週間も経たないうちに、犬の性格や犬が何が好きか、何を考えているかについて自分なりの意見を持つ。
それが、完全に理解していない生き物が次に何をするかを予測する方法だから」とホロウィッツ教授は語った。
「我々は人間を説明することに言葉を使っている。それを犬に当てはめているだけ」
[原文:That 'guilty' look that your dog is giving you isn't actually guilt — it's fear]
(翻訳:Setsuko Frey、編集:増田隆幸)