ある日マスターと奥さんと息子さんと僕とイギリスからの留学生のジェミーと5人で朝ご飯を食べに行っていたときの話です。
ちなみにBOKATOR ACADEMYは外国からの留学生が多く、道場に住み込みで留学しているのは、僕とイタリア人2人とカナダ人1人の計4人で、今日は新たにイギリス人のジェミーが昼から練習に参加するということでした。
ジェミーはタイにムエタイ留学や色々な国で格闘技をしているらしく、
『BOKATORのトレーニングは他の国やムエタイに比べて、かなり安い』という話になりました。
(BOKATORは毎日練習にきても一ヶ月100$、カンボジア人はもっと安いです)
するとマスターが『他の国はお金を高く取り過ぎだ、BOKATORはなるべく安くしようとしている』と。
少しでも安くすることで、一人でも多くの人がBOKATORを習いに来てくれて、『BOKATOR FAMILY』が増えることの方が嬉しい。
『お金を取るか?』『Familyを取るか?』と聞かれたら、
私は迷わず『BOKATOR FAMILY』を選ぶ。

私はふんぞり返って偉そうぶっている人間にはなりたくない。
(ここで椅子にふんぞり返って腕を組み、偉そうなジェスチャーまでしちゃうお茶目なマスター。笑)
自分のことは何も誇りに思っていない。
ただ自分のしていることは誇りに思っている。
2000年以上前から続きながら、ポルポトの内戦で一度は絶滅したBOKATORを世界に広げることが私の夢で、それに一生を捧げるつもりだ。
こんなことを朝ご飯食べながら、言っちゃうマスターかっこよすぎです。
ただいつもこうなんでしょうね。ちょっとマスター話が長くて、隣で奥さんはアクビしながら、笑っていました。笑
アロハシャツのポケットにボールペンやらメガネやら詰め込んで
乗り古したお世辞にもきれいといえない車で
朝ご飯から道場に連れていってくれる彼の背中を見ながら、暖かい気持ちになりました。
ただ今までの道のりは本当に大変だったようで、ポル・ポトの内戦によって亡命する時には自分の友達や周りの人が目の前で殺されるのを何度も経験したそうです。
内戦中は私有財産の没収などはザラにあったそうで、マスターもその一人で全てのお金を失ったそうです。
それでも前を向いて、自分の使命を熱く語るマスターを見ながら、
『自分もこの人の夢のために力になりたいな』としみじみ思いました。

そして彼はお絵描きが上手です。
今まで体系化されずひっそりと継承されてきたBOKATORの技(北斗神拳みたい。笑)を後世に残すため、1000以上の技を手書きでお絵描きしています。
暇を見付けては、鞄からスケッチブックを取り出してノートを広げて鉛筆を握ります。
多くの技と一緒にBOKATOR世界大会を始め、マスターの壮大な夢物語がこの白いスケッチブックに描かれています。
一人でこの使命に立ち上がり、BOKATORを復活させたのが2005年。
今やBOKATORはカンボジアのTVCMにもなっています。
齢65を超えても無邪気な笑顔でスケッチブックに描いた夢を一つずつ実現させていくマスター。
この国に来て、この人と一緒に夢を見れることに心から感謝します。
写真はTV撮影のインタビューに応えるマスター。
ゼロから始めたBokatorのここまでの道のりを語っているのでしょうか。
