名古屋議定書を事前協議 COP10作業部会
「病原体提供」早くも対立
 動植物や微生物などを利用した製品開発で得た利益を配分する新たな国際ルールを話し合う生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の作業部会が13日、名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)で始まった。18日開幕のCOP10の事前交渉に当たる協議。ティモシー・ホッジス共同議長は「国益を超え、交渉をまとめよう」と呼びかけたが、先進国、途上国の対立は深く、難航は必至だ。

 この日はCOP10で協議される新ルール「名古屋議定書」のうち、ワクチンなどの原料となる「病原体」の扱いを集中討議した。

 鳥インフルエンザが流行した際、インドネシアが病原体の他国への提供を拒否したことを教訓に、先進国側は、感染症の流行時は議定書の手続きを簡略化し、原産国が病原体を素早く提供するよう要求。対する途上国側は「例外扱いの必要はない」(マレーシア代表)と反発、緊急時でも利益配分の契約を結ぶよう求め、溝は埋まらなかった。

 この後、生物資源の範囲をめぐる協議も行われたが、ここでも途上国側が、生物資源そのものだけでなく、これをヒントに合成した新たな物質も対象にすべきだと主張。これに反対する先進国との調整は進まなかった。

 作業部会は16日まで。

MOP5中間総括担当官「予定通り」

 COP10の関連会議で、遺伝子組み換え生物について話し合うカルタヘナ議定書第5回締約国会議(MOP5)は13日、折り返しの3日目を迎え、生物多様性条約事務局の上級環境問題担当官チャールズ・ベデマ氏が名古屋国際会議場で記者会見し、「会議は予定通りに進んでいる」と中間総括した。

 MOP5ではこれまで、遺伝子組み換え生物が生態系に悪影響を与えた場合の危機管理や一般の人への啓発、今後の計画について、各国が意見を交わしてきた。13日午前の全体会合後、ベデマ氏は「最終日の15日に加盟国の意見を含めた決議文書を採択できるだろう。議長国を務める日本の指導の下、決議内容を実施していきたい」と述べた。


(2010年10月14日 読売新聞)