2024年度上半期に予定される新紙幣の発行は、現金自動預払機(ATM)や自動販売機の改修・更新などを通じて関連業界に1.6兆円の特需をもたらす見通しだ。
【写真】新500円硬貨のイメージ
一方、低金利の長期化で国内の収益力低下に苦しむ金融機関には、改修は負担となる可能性がある。
第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストの試算によると、新しい1万円札、5千円札、千円札と、500円硬貨の発行に伴う原材料やインクなどの需要で6114億円、機械の改修と買い替えでATMメーカーに3724億円、自販機メーカーに6064億円と、計約1.6兆円の特需が発生する。
ただ、名目GDP(国内総生産)の押し上げ効果に換算すると、2年間で計0.2%増程度。「景気に大きな影響は与えない」(永浜氏)ようだ。
一方、金融機関にとって、ATMや両替機などを新紙幣に対応させることは「コストになる」(大手銀行)。「紙幣を識別するソフトウエアの更新で済む」(別の大手銀行)のか、ATMの入れ替えが必要になるのか、当面は静観の構えだ。
忘れないで2千円札 刷新見送られた理由、財務省に聞いた【WEB限定記事】
政府は9日、1万円、5千円、千円札の紙幣を刷新することを発表した。しかし、1枚、刷新されないお札がある。沖縄の守礼門が描かれた2千円札だ。なぜ、このタイミングで刷新されないのか。
【写真】2千円札の裏には、紫式部の顔が
■発行したものの、流通拡大しない2千円札
2千円札は沖縄サミット開催を記念して、今から19年前の2000年7月19日に発行された。
同日の沖縄タイムスの記事には
「42年ぶりの新札となる2千円券を発行した。国内で1億余枚が、県内では190万枚が発行された。日銀によると、本年度内に全国で10億枚を流通させる予定。5千円札の2倍の発行数」
とある。
しかしながら、財務省理財局によると、2019年現在の流通枚数は、1万円札が約99.7億枚、5千円札が約6.6億枚、千円札が約42億枚。それに対し、2千円札は約1億枚で、発行当時、目標としていた10億枚の10分の1にとどまっている。
流通しなかった理由について、同局の担当者は「はっきりとしたことについては調査されていませんが、発行当時、自動販売機で使うことができなかったからではないかとよく言われています」。
そしてこの流通の少なさが、刷新の対象にならなかった直接の原因だという。
「いま、日銀に備蓄が貯まっている状況です。他の紙幣は毎年作り続けているのに対して、2千円札は現在、新しく印刷していません。新しいデザインにすると、備蓄のお金が無駄になってしまうため、刷新は見送ることになりました」
■沖縄のATMでよく出る2千円札
日本銀行那覇支店によると、2千円札の発行は2000年以降、全国では増え続け、2004年8月には5億1300万枚とピークを迎える。その後、年々減少し、2014年以降は9800~9900万枚を推移している。
一方で、沖縄の発行高(ネット支払高累計)は、2002年以降はほぼ上昇。2019年3月には、全国の発行枚数の6.5%にあたる637万枚が流通している。
沖縄では、ローソンや琉球銀行のATMなどでお金を引き出す時、2千円札を選べる仕組みになっているため、流通が他県よりも多い要因にもなっている。
財務省理財局は「たくさん使ってほしい。2千円札の普及に向けてパンフレットも作成し、空港や銀行窓口などに置いている。外国の方にも興味を持ってもらいたい」とPRした。
與那覇 里子
財務省によると、新しい500円硬貨は、21年度上期の発行を目途にしている。



















