『FIREPOWER』(2018)
Judas Priest
ヘヴィ・メタル・レジェンド、ジューダス・プリースト通算18枚目のアルバム『FIREPOWER』を購入した。こちらの期待通り、否、期待以上の完成度を誇る素晴らしい作品だ。3月7日に入手して以来、繰り返し聴いているけれど、決して飽きることがない。
バンド結成まもなく50周年(!)を迎える長いキャリアを持つ彼らゆえ、今作も過去の作品と並べて語られることは避けられない運命にあると思う。
例えば、①《Firepower》から②《Lightning Strike》へなだれ込む展開に《Rapid Fire》~《Metal Gods》(『BRITISH STEEL』)を見ることは可能だし、③《Evil Never Dies》、⑤《Necromancer》といった邪悪さを感じさせる曲には『PAINKILLER』のフィールを、④《Never The Heroes》の冷やりとした質感には『TURBO』を、⑥《Children Of The Sun》には70年代プリーストの世界観を感じる…と、挙げていけばきりがない。
僕としては、そうした過去作との“繋がり”を楽しみつつも、今作をあくまで一個の独立した作品として捉えている。何よりその生命力、瑞々しさに魅かれる。
その魅力の要因はいろいろあると思う。
前作『Redeemer Of Souls』にあった「メタル・ゴッドかくあるべし」的な力みが消え、自然体で曲作りができているように思う。表現が抜けきっている。
トム・アロムとアンディ・スニープのプロデュースも成功している。どのような役割分担がなされていたか知る由もないけれど、個々の楽曲が十分に呼吸することができ、適度に華やかで、まろやかな全体の音像はトムの、ヴォーカルと各楽器の豊かな鳴りはアンディのもたらした成果だ、などと勝手に解釈している。アンディの関与する作品ではいつものことだが(Accept、Arch Enemy、Exodus、Nevermore、Overkill etc.)、とりわけドラムの鳴りが見事だ。『Redeemer~』における貧弱なバス・ドラム音とは比較にならない。
メンバーの貢献で言えば、僕は、プリースト復帰後のロブ・ハルフォードの、「残された力を大切に使う」かのような、丁寧なヴォーカルが大好きで、それは今作を遥かな高みに引き上げている。
シンプルだが深みのあるリフ、厳かに立ち昇ってくるツイン・リード、ブルージーでウェットなソロの数々。グレン・ティンプトンとリッチー・フォークナーのギター・コンビも絶妙なコンビネーションで楽曲を構築している。グレンは病に負けるような男ではない。
スコット・トラヴィスが傑出したドラマーであることは、『PAINKILLER』冒頭の数秒を聴いただけで分かろうというものだ。今作では《Rising From Ruins》でのプレイを挙げたい。サビのメロディとユニゾンで歌っているかのようなバス・ドラム・ワークは見事だ。
全曲万遍なく好きな今作の中で、僕が特に溺愛しているのが⑫《No Surrender》だ。3分に満たない曲だが、性急なロブのヴォーカル、キャッチーなコーラス、簡潔なギター・リフ、無駄を排したソロ、力強いベース・ライン、タメ気味のドラム。「何が何でも立ち上がらなければならぬ」と思わせる曲調。
プリーストのキャリアここに至って、これほどの名曲を産み出せるとは正直思ってもみなかった。
嬉しい驚きである。僕はどの曲にもまして、《No Surrender》に『復讐の叫び』『背徳の掟』のエコーが聴こえる。
ロブ復帰後の作品は、アルバム末尾を飾る、バラード(的)な曲がどれも素晴らしいのだけど(《Lochness》(Angel Of Retribution)、《Future Of Mankind》(Nostradamus)、《Beggining Of The End》(Redeemer~)、今作のラスト⑭《Sea Of Red》も、その期待を裏切らない、見事な出来栄え。哀愁ここに極まれり。
最後に、『FIREPOWER』極私的グッとくる瞬間をご紹介。
アルバムをリピート・モードで流しているときに聴くことができる。
ラスト《Sea Of Red》が終焉まで登り詰めたのちおとずれる静寂を、タイトル・トラックのリフがズタズタに切り裂く瞬間が、それだ。
