次に、仮定法で条件節と帰結節が揃っている基本形の例文で、仮想をマトリクスに埋め込んでみましょう。例文は、「もし私が鳥だったら、あなたのところに飛んでいけるのに」にしてみます。
ご覧いただくと、これも現在の仮想は過去形、過去の仮想は過去完了形が使われていることがわかります。
さあ、ここまで準備すれば、Freedomのこの歌詞の仮定法過去は完全に理解できます。以下、図で説明してみます。
この歌詞は、ちょうど右上の、現在の仮想の世界のマトリクスに位置しています。これは、右下の、現在の事実の反対を指します。事実はどうかというと、彼女は自分のことが好きではないので、噂を否定しない、ということになります。
現実の厳しい状況は理解しつつ、仮定法を使って仮想空間の中に入り込み、望みが叶ってくれれば、という想いを伝えているのがこの部分の表現です。この想いを慮って、以下のように試訳してみました。
「もし僕のことを好きなら、そんなの噓だと言ってくれるよね」
1 But you laugh and tell me I should try it
(直訳)でも君(=彼女)は笑い、そして僕がそれを試してみるべきだと言う
Itは上の文と同じく、彼女に関する諸々の噂ばなしのことです。
Tryはここでは真偽を確かめるという意味です。
以下、試訳です。
でも君は笑ってこう言うんだ。「本当かどうか、自分で確かめてみれば?」
2 Tell me I'm a baby and I don't understand
(直訳)君は僕に、僕が子供だからわからないと言う
文頭のYou(=She)が省略されています。上の彼女のセリフの続きです。省略を補うと以下の通りです。
You tell me I'm a baby and I don't understand
Babyは、ここでは相手の未熟さを見下す、上から目線の言葉です。
Understandは通常他動詞ですが、ここでは自動詞として使われており、意味は「理解力がある」となります。
試訳は以下の通りです。
「あなたはまだ子供だからわからないのよ」